なるほど,MZVには
という2つの積があるようで,自分の理解のためにここに記しておこう.ただし,複雑だとわけわからん状態になるので,積には深さ1のみ使う.
これは,和の表示に対して,2つの束縛変数$m$と$n$に対して,$m< n$と$m=n$と$m>n$の3つの順序で足し合わせたもののようだ.
具体的に,
$$\begin{align*}\\
\sum_{m>0}\sum_{n>0} &= \sum_{0< m< n}\\
&+ \sum_{0< m=n}\\
&+ \sum_{0< n< m}\\
\end{align*}$$
であるから,$\zeta(p)\zeta(q)=\zeta(p,q)+\zeta(q,p)+\zeta(p+q)$のようだ.
こいつは,積分表示の束縛変数に順序をつけて総和をとる.
例えば,$\zeta(2)\zeta(3)$について考えると,
$$
\zeta(2)=\int_{0< t_1< t_2<1}\frac{dt_1}{1-t_1}\frac{dt_2}{t_2}\\
$$
$$
\zeta(3)=\int_{0< t_3< t_4< t_5<1}\frac{dt_3}{1-t_3}\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\
$$
であるから,以下の10の順列が考えられる.$t_1=t_3$などの場合は無視できる.
これらについて見やすくする為に,
$t_1$と$t_3$を1,それ以外を0として並べてみると,
(参考までに,$\zeta(2)$は10,$\zeta(3)$は100である.)
これをもって,
$\zeta(2)\zeta(3)=6\zeta(1,4)+3\zeta(2,3)+\zeta(3,2)$
となった.(間違ってるかも,)
では,すこし一般化をして,$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積を求めよう.
$t_1$を1,$t_2$を0,などと置き,1と0の羅列でMZVを表記した.これをより丁寧に表記すると,
$\zeta(p)=I(1,\{0\}^{p-1})$
となる.また,
$\zeta(p,q)=I(1,\{0\}^{p-1},1,\{0\}^{q-1})$
である.
$s_1,s_2,\cdots,s_p$と$t_1,t_2,\cdots,t_q$に対して,sとtそれぞれの順序を保ちながらsとtを混合した列を構成すると,それらの組み合わせは$_{p+q}C_p$通りとなる.
sとtのそれぞれの順序を考えない混合列は$(p+q)!$通り
s.tそれぞれの順序を考えれば$p!q!$の重複がある
よって$\frac{(p+q)!}{p!q!}={}_{p+q}C_p$通り
これが意味するのは,シャッフル積の係数の和が$_{p+q}C_p$であることだ.
上で$\zeta(2)\zeta(3)$を見てみた通り,シャッフル積の各項の深さは2,重さは5である.構成方法から容易にわかるように,$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフルの各項について深さは2,重さは$p+q$である.このことからわかるように,シャッフル積は$\zeta(1,p+q-1)$から$\zeta(p+q-2,2)$までの全てあるいは一部が使われる.
$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積のうち
$\zeta(n,p+q-n)\quad(1 \leq n \leq p+q-2)$
の係数を求めてみる.
$$\zeta(n,p+q-n) = I(1,\{0\}^{n-1},1,\{0\}^{p+q-n-1})$$
であることから,
$$\zeta(p) = I(1,\{0\}^{p-1}) = I(s_1,\cdots,s_p)$$
$$\zeta(q) = I(1,\{0\}^{q-1}) = I(t_1,\cdots,t_q)$$
とすれば,次の2通りが考えられる.
つまり,以下が成り立つ.
$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積で,
$\zeta(n,p+q-n)$の係数は,
$_{p+q-n-1}C_{q-1}+{}_{p+q-n-1}C_{p-1}$
ただし$n< r$のとき$_nC_r=0$
確かに,$\zeta(2)\zeta(3)$ですると合ってそうだ.
では,係数の和
$$\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}+\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}$$
が$$_{p+q}C_p$$に等しくなることを示そう.
まず補題.
$$ \sum_{k=0}^{n-1}{}_{k+m}C_m={}_{m+n}C_{m+1} $$
$$ \begin{align*} &\sum_{k=0}^{n-1}{}_{k+m}C_m\\ =&1+\sum_{k=1}^{n-1}\left({}_{k+m+1}C_{m+1}-{}_{k+m}C_{m+1}\right)\\ =&1+{}_{m+n}C_{m+1}-1\\ =&{}_{m+n}C_{m+1} \end{align*} $$
これを利用して以下を示す.
$$\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}+\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}={}_{p+q}C_p$$
$$
\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}
$$
について考えると,これは
$$
\sum_{n=0}^{p-1}{}_{n+q-1}C_{q-1}
$$
に等しいわけだから,補題より
$$
\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}={}_{p+q-1}C_q
$$
同様に,
$$
\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}={}_{p+q-1}C_p
$$
よって,
$$
\begin{align*}
&\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}+\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}\\
=& {}_{p+q-1}C_q+ {}_{p+q-1}C_p\\
=&{}_{p+q-1}C_{p-1}+ {}_{p+q-1}C_p\\
=&{}_{p+q}C_p
\end{align*}
$$
係数の和の検算ができた.
今回は深さ1どうしの積だったが,深さ2以上や,AMZVなどだとやばそう