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大学数学基礎解説
文献あり

2つの積(MZV)

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2つの積

なるほど,MZVには

  • 調和積
  • シャッフル積

という2つの積があるようで,自分の理解のためにここに記しておこう.ただし,複雑だとわけわからん状態になるので,積には深さ1のみ使う.

調和積

これは,和の表示に対して,2つの束縛変数$m$$n$に対して,$m< n$$m=n$$m>n$の3つの順序で足し合わせたもののようだ.

具体的に,
$$\begin{align*}\\ \sum_{m>0}\sum_{n>0} &= \sum_{0< m< n}\\ &+ \sum_{0< m=n}\\ &+ \sum_{0< n< m}\\ \end{align*}$$
であるから,$\zeta(p)\zeta(q)=\zeta(p,q)+\zeta(q,p)+\zeta(p+q)$のようだ.

シャッフル積

こいつは,積分表示の束縛変数に順序をつけて総和をとる.

例えば,$\zeta(2)\zeta(3)$について考えると,
$$ \zeta(2)=\int_{0< t_1< t_2<1}\frac{dt_1}{1-t_1}\frac{dt_2}{t_2}\\ $$
$$ \zeta(3)=\int_{0< t_3< t_4< t_5<1}\frac{dt_3}{1-t_3}\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\ $$
であるから,以下の10の順列が考えられる.$t_1=t_3$などの場合は無視できる.


  • $0< t_1< t_2< t_3< t_4< t_5<1$
  • $0< t_1< t_3< t_2< t_4< t_5<1$
  • $0< t_1< t_3< t_4< t_2< t_5<1$
  • $0< t_1< t_3< t_4< t_5< t_2<1$
  • $0< t_3< t_1< t_2< t_4< t_5<1$
  • $0< t_3< t_1< t_4< t_2< t_5<1$
  • $0< t_3< t_1< t_4< t_5< t_2<1$
  • $0< t_3< t_4< t_1< t_2< t_5<1$
  • $0< t_3< t_4< t_1< t_5< t_2<1$
  • $0< t_3< t_4< t_5< t_1< t_2<1$

これらについて見やすくする為に,
$t_1$$t_3$を1,それ以外を0として並べてみると,
(参考までに,$\zeta(2)$は10,$\zeta(3)$は100である.)


  • 10100
  • 11000
  • 11000
  • 11000
  • 11000
  • 11000
  • 11000
  • 10100
  • 10100
  • 10010

さて,これらに対応するMZVを...

  • 11000は$\zeta(1,4)$
  • 10100は$\zeta(2,3)$
  • 10010は$\zeta(3,2)$

これをもって,
$\zeta(2)\zeta(3)=6\zeta(1,4)+3\zeta(2,3)+\zeta(3,2)$
となった.(間違ってるかも,)
では,すこし一般化をして,$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積を求めよう.

$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積

$t_1$を1,$t_2$を0,などと置き,1と0の羅列でMZVを表記した.これをより丁寧に表記すると,
$\zeta(p)=I(1,\{0\}^{p-1})$
となる.また,
$\zeta(p,q)=I(1,\{0\}^{p-1},1,\{0\}^{q-1})$
である.

順序

混合列

$s_1,s_2,\cdots,s_p$$t_1,t_2,\cdots,t_q$に対して,sとtそれぞれの順序を保ちながらsとtを混合した列を構成すると,それらの組み合わせは$_{p+q}C_p$通りとなる.

sとtのそれぞれの順序を考えない混合列は$(p+q)!$通り
s.tそれぞれの順序を考えれば$p!q!$の重複がある
よって$\frac{(p+q)!}{p!q!}={}_{p+q}C_p$通り

これが意味するのは,シャッフル積の係数の和が$_{p+q}C_p$であることだ.

深さ・重さ

上で$\zeta(2)\zeta(3)$を見てみた通り,シャッフル積の各項の深さは2,重さは5である.構成方法から容易にわかるように,$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフルの各項について深さは2,重さは$p+q$である.このことからわかるように,シャッフル積は$\zeta(1,p+q-1)$から$\zeta(p+q-2,2)$までの全てあるいは一部が使われる.

係数決定

$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積のうち
$\zeta(n,p+q-n)\quad(1 \leq n \leq p+q-2)$
の係数を求めてみる.
$$\zeta(n,p+q-n) = I(1,\{0\}^{n-1},1,\{0\}^{p+q-n-1})$$
であることから,
$$\zeta(p) = I(1,\{0\}^{p-1}) = I(s_1,\cdots,s_p)$$
$$\zeta(q) = I(1,\{0\}^{q-1}) = I(t_1,\cdots,t_q)$$
とすれば,次の2通りが考えられる.

  1. $I(s_1,\cdots,t_1,\cdots)$であるとき
    $s_1$$t_1$の間は$n-1$個あるので,そこには$s_n$までが入る.これにより,$n \leq p$でなくてはならないことがわかる.($n>p$ならば,係数は0)
    このとき,$t_1$以降では$s_n$以降のsとtで順序を保つ混合列ができる.よって$_{p+q-n-1}C_{q-1}$通りである.つまり$n \leq p$のときこれが係数.
  2. $I(t_1,\cdots,s_1,\cdots)$のとき
    同様にして考えれば,$_{p+q-n-1}C_{p-1}$となる.ただし,$n \leq q$

つまり,以下が成り立つ.

シャッフル積の係数

$\zeta(p)\zeta(q)$のシャッフル積で,
$\zeta(n,p+q-n)$の係数は,
$_{p+q-n-1}C_{q-1}+{}_{p+q-n-1}C_{p-1}$
ただし$n< r$のとき$_nC_r=0$

検算

確かに,$\zeta(2)\zeta(3)$ですると合ってそうだ.
では,係数の和
$$\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}+\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}$$
$$_{p+q}C_p$$に等しくなることを示そう.
まず補題.

$$ \sum_{k=0}^{n-1}{}_{k+m}C_m={}_{m+n}C_{m+1} $$

$$ \begin{align*} &\sum_{k=0}^{n-1}{}_{k+m}C_m\\ =&1+\sum_{k=1}^{n-1}\left({}_{k+m+1}C_{m+1}-{}_{k+m}C_{m+1}\right)\\ =&1+{}_{m+n}C_{m+1}-1\\ =&{}_{m+n}C_{m+1} \end{align*} $$

これを利用して以下を示す.

$$\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}+\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}={}_{p+q}C_p$$

$$ \sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1} $$
について考えると,これは
$$ \sum_{n=0}^{p-1}{}_{n+q-1}C_{q-1} $$
に等しいわけだから,補題より
$$ \sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}={}_{p+q-1}C_q $$
同様に,
$$ \sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}={}_{p+q-1}C_p $$
よって,
$$ \begin{align*} &\sum_{n=1}^p{}_{p+q-n-1}C_{q-1}+\sum_{n=1}^q{}_{p+q-n-1}C_{p-1}\\ =& {}_{p+q-1}C_q+ {}_{p+q-1}C_p\\ =&{}_{p+q-1}C_{p-1}+ {}_{p+q-1}C_p\\ =&{}_{p+q}C_p \end{align*} $$

係数の和の検算ができた.

感想

今回は深さ1どうしの積だったが,深さ2以上や,AMZVなどだとやばそう

参考文献

投稿日:20201116

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