$D$を$\mathbb{C}$内の領域とし,$z_0 \in D$としたとき,$D$で連続かつ$D \setminus \{z_0\}$で正則な関数$g \colon D \to \mathbb{C}$は$D$で正則である。
$D$は$\mathbb{C}$の開集合なので,ある$R > 0$が存在して
$$ U = \{ z \in \mathbb{C} \mid |z - z_0| < R \} \subset D$$
となる。
$U$上の関数$G \colon U \to \mathbb{C}$を
$$ G(z) = \int_{\overline{z_0 z}} g(\zeta) d \zeta$$
により定める。
($\overline{z_0 z}$は$z_0$から$z$に至る線分を表す。この文脈では複素共役ではない。)
$U$上$G'(z) = g(z)$が成り立つことを示せば,$g(z)$が$z = z_0$で正則であることが言える。
$z \in U$とする。
絶対値が十分小さい複素数$h \neq 0$に対して,微分商
$$
\frac{G(z+h) - G(z)}{h} =
\frac{1}{h} \left(
\int_{\overline{z_0 (z+h)}} g(\zeta) d \zeta
- \int_{\overline{z_0 z}} g(\zeta) d \zeta
\right)
$$
を考える。
これを計算するために
$$ \int_{\triangle z_0 z (z+h)} g(\zeta) d \zeta = 0$$
が成り立つことを示す。
($\triangle z_0 z (z+h)$は線分$\overline{z_0 z}$, $\overline{z(z+h)}$, $\overline{(z+h)z_0}$をこの順に結んでできる三角形を表す。$3$点が一直線上に並んでしまってもよい。)
線分$\overline{z_0 z}$上に$w \neq z_0$を取り,線分$\overline{z_0 (z+h)}$上に$w' \neq z_0$を取る。
このとき,コーシーの積分定理より
\begin{align}
\int_{\triangle z_0 z (z+h)} g(\zeta) d \zeta
& =
\int_{\triangle z_0 w w'} g(\zeta) d \zeta +
\int_{\triangle w' w z} g(\zeta) d \zeta +
\int_{\triangle w' z (z+h)} g(\zeta) d \zeta \\
& =
\int_{\triangle z_0 w w'} g(\zeta) d \zeta
\end{align}
となる。
$w$, $w'$を$z_0$の十分近くに取ることで,この積分がいくらでも小さくなることを示す。
$\epsilon > 0$が任意に与えられたとする。
$g (z)$の$z = z_0$での連続性から,ある$\delta > 0$が存在し,$|\zeta - z_0| < \delta$を満たすような任意の$\zeta$に対して
$$ |g(\zeta) - g(z_0)| < \frac{1}{4}$$
が成り立つ。
$r = \min \{ \delta, \epsilon \}$と置き,$w$, $w'$を開円盤$\{ z \in \mathbb{C} \mid |z - z_0| < r \}$に含まれるように取ると,
$$ |w - z_0| < r \leq \epsilon$$
$$ |w' - w| < 2 r \leq 2 \epsilon$$
$$ |z_0 - w'| < r \leq \epsilon$$
となる。
よって,積分の値は
\begin{align}
\left| \int_{\triangle z_0 w w'} g(\zeta) d \zeta \right|
& =
\left| \int_{\triangle z_0 w w'} (g(\zeta) - g(z_0)) d \zeta \right| \\
& \leq
\frac{1}{4} (\epsilon + 2 \epsilon + \epsilon) \\
& = \epsilon
\end{align}
を満たす。
これで$\int_{\triangle z_0 z (z+h)} g(\zeta) d \zeta = 0$であることが分かった。
したがって,
$$
\frac{G(z+h) - G(z)}{h} = \frac{1}{h} \int_{\overline{z(z+h)}} g(\zeta) d \zeta
$$
である。
$h \to 0$のとき,微分商の極限が$g (z)$であることを示す。
$\epsilon > 0$が任意に与えられたとする。
$g$の連続性から,ある$\delta > 0$が存在し,$|\zeta - z| < \delta$を満たすような任意の$\zeta$に対して
$$ |g(\zeta) - g(z)| < \epsilon$$
が成り立つ。
このとき,$\zeta \in \overline{z(z+h)}$なら$|\zeta - z| \leq |h|$なので,$0 < |h| < \delta$を満たすような任意の$h$に対して
\begin{align}
\left| \frac{G(z+h) - G(z)}{h} - g(z) \right|
& =
\left|
\left( \frac{1}{h} \int_{\overline{z(z+h)}} g(\zeta) d \zeta \right) - g(z)
\right| \\
& =
\left| \frac{1}{h} \int_{\overline{z(z+h)}} (g(\zeta) - g(z)) d \zeta \right| \\
& \leq
\frac{1}{|h|} |h| \epsilon \\
& =
\epsilon
\end{align}
が成り立つ。
これは$G'(z) = g (z)$ということに他ならない。
$G (z)$が$U$上の正則関数であるとき,$G'(z)$もまた$U$上の正則関数である。
この場合,$g(z)$は$z = z_0$で正則である。
これが示すべきことであった。
リーマン面上の関数やリーマン面の間の写像についても上と同様のことが成り立つ。