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1/1+1/2-2/3+...=log3 の解法[2通り]

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始める前に

この問題は前にX(旧Twitter)で、ら(@karenonahara)さんがポストしていた問題の解答を記事にしたものです。解法1については味覚クリティカル(@1806_04679)さんの考えたものと同一になっています。
[ら@karenonahara: いい証明が思いつかん。 ]

問題

1+1223+14+1526+=log3

解法1: 正負の項を分ける方法

多分一番手っ取り早い解法です。

簡単な形に変形する

nを自然数とする。
S=1+1223+14+1526++13n2+13n123n
調和数 Hnは次のように定義される。
Hn:=k=1n1k

SHnを用いて表すと
S=1+1223+14+1526++13n2+13n123n
S=(1+12+13++13n)3(13+16++13n)
=(1+12+13++13n)(1+12++1n)

=H3nHn

Hnの評価

Hnの漸近展開

Hn=logn+γ+12n1112n2+O(n4)

この形をうまく使います。

面積比較より
0ndxx+1<Hn<1+1ndxx
log(n+1)<Hn<1+logn
0<log(1+1n)<Hnlogn<1 (1n)

この極限の値は0.57721くらいの大きさの定数として知られています。

オイラー・マスケローニ定数( wikipedia )

limnHnlogn=γ

limnIn=0
を満たすnについての関数Inを用いてHnを次のように表す。
Hn=logn+γ+In

S=H3nHnより
limnS=limn(log3+I3nIn)=log3

解法2: 一般項を求めて和を取る方法

ω=e2iπ3とし、ωn+ω2n+ω3n=1+ωn+ω2nの値について調べると
ωn+ω2n+ω3n=1+ωn+ω2n={0 (n±1mod3)3 (n0mod3)
となります。これを用いると
1+1223+14+1526+=k=11(1+ωk+ω2k)k
=k=1ωk+ω2kk

ここで
fn(x):=k=1nωk+ω2kkxk
とする。
各項を微分して
ddxfn(x)=k=1n(ωk+ω2k)xk1
ddxfn(x)=k=1nω(ωx)k1ω2(ω2x)k1
公比ωx, ω2xの等比数列の和を取って
ddxfn(x)=ω1(ωx)n1ωxω21(ω2x)n1ω2x


ここで|ω|=1, |1ωx|=|1ω2x|=x2+x+1よりx[0,1)のとき
|1(ωx)n1ωx11ωx|=|xn1ωx||xn|n0
|1(ω2x)n1ω2x11ω2x|=|xn1ω2x||xn|n0
すなわち
limnsupx(0, 1)|1(ωx)n1ωx11ωx|=0
limnsupx(0, 1)|1(ω2x)n1ω2x11ω2x|=0
一様収束より
k=1ωk+ω2kk=limnfn(1)fn(0)
=limn01ddxfn(x) dx
=limn01ω1(ωx)n1ωxω21(ω2x)n1ω2x dx
=01limn(ω1(ωx)n1ωxω21(ω2x)n1ω2x) dx
=01ω1ωxω21ω2x dx
=[log(1ωx)+log(1ω2x)]01
=log(1ωω2+ω3)
=log{2+ω3(1+ω+ω2)}
=log3


あとがき:解法2のテクニックについて、ωn+ω2n+ω3nの式を3Blue1BrownJapanさんの動画で知りました。
その動画では、「{1, 2, 3,,2000}の部分和のうち、5で割り切れる数の和を求めよ」という問題を解説しており、その問題を解くための重要なテクニックとして紹介されていました。良ければ見てください。
ちなみに整数aと素数pが互いに素なとき,a, 2a, 3a, , (p1)apで割った余りはすべて異なるという有名な定理の形が見えてめっちゃ好きです。
3Blue1BrownJapan: [ 激ムズ数え上げパズルと驚きの解法 ]

投稿日:2024413
更新日:2024427
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