以前の記事の続きになります。
Legendre多項式はStrum=Liouville理論や超幾何関数の1本の枝葉として理解することができます。
一般論を展開する準備として、まずは具体について把握しておくと、抽象化の過程を10倍楽しむことができます。
Legendre多項式はRodorigue型多項式の1種です。
Hermiete多項式、Laguerre多項式、Gegenbauer多項式、Sonin多項式などもその一種です。
$$P_n(z)=\frac{1}{2^nn!}\frac{d^n}{dz^n}(z^2-1)^n$$
モニックな2n次式をn階微分しているので、$P_n(z)$は$n$次多項式を定義します。
Rodorigueの公式の右辺をマクローリン展開の展開係数とみなせば母関数表示ができます。閉じた形を作ろうと思った際には、複素関数の金字塔であるコーシーの積分定理を使うと感動します。
$$G(t,z)=\frac{1}{\sqrt{1-2tz+t^2}}=\sum_{n=0}^{\infty}{P_n(z)t^n}$$
コーシーの積分定理より、正則関数$f(z)$に対して、
$$\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(s)}{s-z}ds=f(z)$$
より、$$\frac{1}{2\pi i}\oint_{C}\frac{(s^2-1)^n}{s-z}ds=(z^2-1)^n$$
両辺$z$で$n$回微分すると、
$$P_n(z)=\frac{1}{2^nn!}\frac{d^n}{dz^n}(z^2-1)^n=\frac{1}{2^nn!}\frac{1}{2\pi i}\oint_{C}\frac{d^n}{dz^n}\left[\frac{(s^2-1)^n}{s-z}\right]ds$$
$$=\frac{1}{2\pi i}\oint_{C}\left[\frac{(s^2-1)^n}{2^{n}(s-z)^{n+1}}\right]ds$$
積分経路は$z$中心の円です。母関数$G(t,z)$は、
$$G(t,z)=\sum_{n=0}^{\infty}t^nP_n(z)=\frac{1}{2\pi i}\sum_{n=0}^{\infty}t^n\oint_{C}\left[\frac{(s^2-1)^n}{2^{n+1}(s-z)^{n}}\right]ds$$
$$=\frac{1}{2\pi i}\oint_{C}\sum_{n=0}^{\infty}\left[\frac{t^n(s^2-1)^n}{2^{n}(s-z)^{n+1}}\right]ds$$
$|t|<\left|\frac{2(s-z)}{(s^2-1)}\right|$ となれば被積分関数は一様収束し、収束円内で正則関数を定義します。故に上記の無限和と積分の交換を実行可能になります。
$$G(t,z)=\frac{1}{2\pi i}\oint_{C}\sum_{n=0}^{\infty}\left[\frac{t^n(s^2-1)^n}{2^{n}(s-z)^{n+1}}\right]ds$$
$$=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{1}{s-z}\cdot\frac{1}{1-\frac{t(s^2-1)}{2(s-z)}}dz=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{2}{t-2z-2s-ts^2}ds$$
$s$に関する二次方程式$t-2z-2s-ts^2=0$の解$s_{\pm}=\frac{1}{t}(1\pm \sqrt{1-2zt+t^2} )$は、$t\rightarrow0$の極限で$s_+ \rightarrow \infty$, $s_-\rightarrow 0$となります。$t$が十分小さい時には$s_-$のみが積分経路の内部に入るため、$s_-$の留数のみを計算すれば良いことがわかります。
$$G(t,z)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{-2}{t(s-s_+)(s-s_-)}ds=\frac{-2}{t(s_--s_+)}=\frac{1}{\sqrt{1-2zt+t^2}}$$
正則関数列、一様収束性は非常に相性が良いです。正則関数列が(広義)一様収束すれば、積分と和を入れ替えられるのみならず、収束した関数まで正則関数になることがMoreraの定理より証明できます。
べき関数は収束円内で一様収束する正則関数列を定義することがM判定法からわかるので、収束円内で正則関数に収束することが自動的に理解できます。
母関数は係数数列から新しい情報をもたらしてくれます。それが以下に紹介する漸化式です。
$$(1):(2n+1)zP_n(z)=(n+1)P_{n+1}(z)+nP_{n-1}(z)$$
$$(2):\frac{d}{dz}P_{n+1}(z)+\frac{d}{dz}P_{n-1}(z)=2z\frac{d}{dz}P_{n}(z)+P_{n}(z)$$
(1)$P_n(z)$の微分を作りたくないので、zではなくtで微分します。
$$\frac{d}{dt}G(t,z)=\frac{z-t}{(1-2tz+t^2)^{\frac{3}{2}}}=\frac{z-t}{1-2tz+t^2}G(t,z)=\sum_{n=1}^{\infty}{nP_n(z)t^{n-1}}$$
$$(1-2tz+t^2)\sum_{n=1}^{\infty}{nP_n(z)t^{n-1}}=(z-t)G(t,z)=(z-t)\sum_{n=0}^{\infty}P_n(z)t^n$$
展開して整理すると、
$$\sum_{n=1}^{\infty}\left[(2n+1)zP_n(z)-(n+1)P_{n+1}(z)+nP_{n-1}(z)\right]t^n+P_1(z)-zP_0(z)=0$$
係数が恒等的に0になる条件は
$$(2n+1)zP_n(z)=(n+1)P_{n+1}(z)+nP_{n-1}(z)$$
(2)$P_n(z)$の微分を作るため、zで微分します。
$$\frac{d}{dz}G(t,z)=\frac{t}{(1-2tz+t^2)^{\frac{3}{2}}}=\frac{t}{1-2tz+t^2}G(t,z)=\sum_{n=0}^{\infty}{P'_n(z)t^{n}}$$
両辺分母を払って同様に計算する。0次多項式$P'_0(z)=0$に注意すると、
$$P'_1(z)t+\sum_{n=2}^{\infty}\left[P'_n(z)-2zP'_{n-1}(z)+P'_{n-2}(z)-P_{n-1}(z)\right]t^2=0$$
係数ゼロの条件から添字をずらしてあげると、
$$\frac{d}{dz}P_{n+1}(z)+\frac{d}{dz}P_{n-1}(z)=2z\frac{d}{dz}P_{n}(z)+P_{n}(z)$$
$$\int_{-1}^{1}P_m(z)P_n(z)dz=\frac{2}{2n+1}\delta_{mn}$$
$m\neq n$の場合を考える。被積分関数は$m,n$に関して対称なので、$m>n$としても一般性を失わない。
$$\int_{-1}^{1}P_m(z)P_n(z)dz=\frac{1}{2^mm!}\int_{-1}^{1}\frac{d^m}{dz^m}(z^2-1)^mP_n(z)dz$$
$m$回部分積分を施すと、表面項には$(z^2-1)^k$がかかるので、表面項は全て消える。
$$=\frac{(-1)^m}{2^mm!}\int_{-1}^{1}(z^2-1)^m\frac{d^m}{dz^m}(P_n(z))dz$$
$P_n(z)$は$n$次多項式なので$m$回微分すると消える。故に積分値はゼロになるため、
$$\int_{-1}^{1}P_m(z)P_n(z)dz=0$$
$m=n$の場合、$P_n(z)$の$n$次の係数は$(2n)!/2^nn!^2$なので、
$$\int_{-1}^{1}P_n(z)P_n(z)dz=\frac{(-1)^n}{2^nn!}\int_{-1}^{1}(z^2-1)^n\frac{d^n}{dz^n}(P_n(z))dz$$
$$=\frac{1}{2^nn!}\int_{-1}^{1}(1-z)^n(z+1)^n \frac{(2n)!}{2^nn!^2}\cdot n!dz$$
ベータ関数の積分公式より、
$$\int_{-1}^{1}(1-z)^n(z+1)^ndz=2^{2n+1}\int_{0}^{1}u^n(1-u)^ndu$$
$$=2^{2n+1}B(n+1,n+1)=2^{2n+1}\frac{n!n!}{(2n+1)!}$$
$$\int_{-1}^{1}P_n(z)P_n(z)dz=\frac{1}{2^nn!}\frac{(2n)!}{2^nn!}\cdot 2^{2n+1}\frac{n!n!}{(2n+1)!}$$
$$=\frac{2}{2n+1}$$
従って、直交性が示された。
母関数から逆に、$P_{n}(z)$の満たす微分方程式を導出することもできます。
Legendre多項式$P_{n}(z)$は以下の微分方程式を満たす。
$$ (1-z^2)\frac{d^2P_{n}}{dz^2} - 2z \frac{dP_{n}}{dz} + n(n+1)P_{n} = 0$$
計算は煩雑だが、$G(t,z)$に微分作用素$(1-z^2)\frac{d}{dz} -2z \frac{d}{dz}$ を施すと、
$$(1-z^2)\frac{dG}{dz} -2z \frac{dG}{dz} = \frac{t(3t(1-z^2) - 2z(z^2 - 2tz + 1))}{(z^2 - 2tz + 1)^{\frac{5}{2}}}$$
$n(n+1)$を出すために、$G(t,z)$に$t$をかけてから2回微分すると、
$$
\frac{d^2}{dt^2}(tG(t,z)) = -\frac{t(3t(1-z^2) - 2z(z^2 - 2tz + 1))}{(z^2 - 2tz + 1)^{\frac{5}{2}}}
$$
となる。従って
$$
(1-z^2)\frac{dG}{dz} -2z \frac{dG}{dz} + \frac{d^2}{dt^2}(tG(t,z)) = 0
$$
級数で表示して、
$$
\sum_{n=0}^{\infty} \left[(1-z^2)\frac{d^2P_{n}}{dz^2} - 2z \frac{dP_{n}}{dz} + n(n+1)P_{n} \right]t^n = 0
$$
係数がゼロになる条件から、微分方程式が導かれた。