36

フェルマー素数の原始根について

939
0

導入

よく知られているように、素数pがフェルマー素数の時、正p角形は作図可能です。

現在知られているフェルマー素数は3,5,17,257,655375個ですが、これらのpについて正p角形の作図をしようとすると、p=17くらいからFpの原始根を一つ固定して考えたくなる状況が発生します。

p=17の時には、原始根として3が取れます。実際、3n mod p

313,329,3310,3413,355,3615,3711,38161
より316で初めて1と合同となり、原始根であることが比較的簡単に確認できます。

実は現在知られているその他のフェルマー素数でも3が原始根であることが計算で確かめられます。それだけではなく、なんと次の事実が成り立ちます。

フェルマー素数の原始根

p5以上のフェルマー素数のとき、(Z/pZ)×の生成元(原始根)として常に3が取れる。

常に、と書きましたが、現在知られている5以上のフェルマー素数は5,17,257,65537のたった4個です。

もしフェルマー素数がこれ以降無いことが証明されてしまうと、この定理は威力を発揮しないまま終わってしまう悲しい状態になってしまうのですが、もしなんらかの方法で新たなフェルマー素数が発見された時、原始根として計算するまでもなく3が取れるのです!

(ただし後述するとおり、この逆に近い事実が成り立っており、これを用いてフェルマー数Fn=22n+1が素数かどうかの判定を行うこともあるようです(Pépin's test))

 

ということでこの定理の証明を以下に行います。

証明

一般に素数pについて、(Z/pZ)×の原始根が常に存在する。それを一つとってgとする。任意のa(Z/pZ)×に対してa=gν(a)なるν(a)がmod p1で一意に定まり、

(ap)=(1)ν(a)

と書ける。ここで (ap) は平方剰余記号。

 

さて、gは原始根だから、gp121 mod pが成り立ち、

(ap)=(1)ν(a)(gp12)ν(a)=(gν(a))p12=ap12 mod p

が成り立つ(いわゆるEulerの規準)。

 

さて、3が原始根であることを言うには、3p121 mod pを言えば良いが、上記により

(3p)=1

を言えば良いことになる。ここで平方剰余の相互法則が使えて

(3p)=(1)312p12(p3)=(1)p12(p3)

が成り立つが、今 p=22n+1(n1)よりp12=22n1は偶数だから

(3p)=(p3)

となる。また、p=22n+1(1)2n+1=2 mod 3だから結局

(3p)=(23)=1

となる。以上より

3p121 mod pが言えた。よって3は原始根である。

さて、以上が証明になりますが、もう少し調べると(といってもwikipediaに書いてる事実だったのですが)、この逆に近いことも言えることが分かりました。すなわち

n1に対し、FnFn=22n+1と定める。Fnが素数であることと、3Fn121 mod Fnが成り立つことは同値。

 

3はフェルマー素数ととても関係が深い数だったのですね!

 

と興奮気味に書きましたが、この証明は簡単です。必要性は上記の証明の中で示しています。十分性について書きます。

十分性の証明

3Fn121 mod Fnが成り立つならば、3Fn11 mod Fnだから3(Z/FnZ)×における位数はFn1=22nの約数であり、2kの形。しかし、k=2n1では32k=3(Fn1)/21 mod Fnだから、3の位数はちょうど22nになる。これは(Z/FnZ)×の位数が22nであることを言っているので、Fnは素数である。

なお、wikipediaを見るとこの事実を用いてFnn=7,8,10,13,14,20,22,24でフェルマー素数でないことの証明に用いられたことが書いてあります(Pépin's test - Wikipedia)。 
 
(この記事ははてなブログに筆者が書いた 記事 をmathlog用に書き直したものです)

 

 

投稿日:202096
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

triprod
triprod
55
2927

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 導入
  2. フェルマー素数の原始根
  3. 証明