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eの定義

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はじめに

ネイピア数$e$の同値な定義について語っていこうと思う。

定義

ネイピア数の主な同値な定義として、以下の形が知られている。

$n$を自然数、$x$を実数とする。
$$ 1:e:=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac1n\right)^n \\ 2:e:=\lim_{x\to\pm\infty}\left(1+\frac1x\right)^x \\ 3:e:=\lim_{x\to 0}(1+x)^\frac1x \\ 4:e:=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{n!} \\ 5:\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{x}=1 \text{を満たすような定数}e\\ 6:\frac{dy}{dx}=y y(0)=1 \text{を満たす指数関数の底} $$

また、他にも様々な同値な定義が知られているが、長くなるのでまた今度別で書こうと思う。なお、収束性については最後に書こうと思う。

それでは、これらの定義が同値であることを示そう。以下では、$n$は自然数、$x$は実数であると約束する。

$1\Leftrightarrow2$

まず、$1$$2$の同値性を示そう。$2\Rightarrow1$は明らかなので、$1\Rightarrow2$を示す。
正の実数$x$に対し、以下の不等式が成り立つ。
$$ \left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor}\right)^{\lfloor x \rfloor+1}<\left(1+\frac1x\right)^x<\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor +1}\right)^{\lfloor x \rfloor} $$
ここで、左辺について$x\to\infty$の極限をとると、
\begin{eqnarray*} \lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor}\right)^{\lfloor x \rfloor+1} &=&\lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor}\right)^{\lfloor x \rfloor}\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor}\right) \\ &=&\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac1n\right)^n\left(1+\frac1n\right) \\ &=&e\cdot1 \\ &=&e \end{eqnarray*}
また、右辺について、同様に極限をとると、
\begin{eqnarray*} \lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor +1}\right)^{\lfloor x \rfloor}&=&\lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor +1}\right)^{\lfloor x \rfloor+1}\frac{1}{\left(1+\frac{1}{\lfloor x \rfloor +1}\right)} \\ &=&\frac{e}{1} \\ &=&e \end{eqnarray*}
よって、$1\Leftrightarrow2$が示された。

また、$2$$3$は明らかに同値であるので、証明は省略する。

次に$4$を飛ばして$5$の定義の同値性を示していく。

$3\Leftrightarrow5$

まず、$3$を用いて$5$を示す。$5$において、$e^x-1=t$とおくと、
\begin{eqnarray*} \lim_{x\to0}\frac{e^x-1}{x}&=&\lim_{t\to 0}\frac{t}{\log_e(1+t)} \\ &=&\lim_{t\to0}\frac{1}{\log_e(1+t)^{\frac1t}} \\ &=&1 \end{eqnarray*}
また、逆の操作を行えば、$5\Rightarrow3$が示せる。よって、$3\Leftrightarrow5$が示された。

つぎに、$5\Leftrightarrow6$を示す。

$5\Leftrightarrow6$

まず、$5\Rightarrow6$を示す。微分係数の定義より、$e^x$を微分すると、
\begin{eqnarray*} \lim_{h\to0}\frac{e^{x+h}-e^x}{h}&=&e^x\lim_{h\to0}\frac{e^h-1}{h} \\ &=&e^x \end{eqnarray*}
これは指数関数であるので、$5\Rightarrow6$が示された。
次に、$6\Rightarrow5$を示す。
定義における微分方程式において、$1$でない正の定数$a$に対し、
$$ y=a^x $$
とおく。微分係数の定義に従ってこれを微分すると、
\begin{eqnarray*} y'&=&\lim_{h\to0}\frac{a^{x+h}-a^x}{h} \\ &=&a^x\lim_{h\to0}\frac{a^h-1}{h} \\ \end{eqnarray*}
これと定義から、
$$ y'=a^x\lim_{h\to0}\frac{a^h-1}{h}=a^x=y $$
なので、
$$ \lim_{h\to0}\frac{a^h-1}{h}=1 $$
であり、$6\Rightarrow5$が示された。よって、$5\Leftrightarrow6$

最後に、$6\Leftrightarrow4$を示そう。なお、以降の証明では、大学数学を用いる。具体的には、微分方程式、テイラー展開、一様収束性である。

$6\Leftrightarrow4$

まず、$6\Rightarrow4$を示す。先ほどの証明から、定義$6$を満たす指数関数の底を$e$とおくと、$y=e^x$は無限回微分可能であり、かつ区間$[-\infty,R]$上で有界である。ここで$R$は任意の実数である。原点周りでテイラー展開すると、
$$ e^x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!} $$
であり、$x=1$とすると、
$$ e=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{n!} $$
よって、$6\Rightarrow4$が示された。
次に、$4\Rightarrow6$を示す。まず、$4$における級数の母関数は、
$$ \sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!} $$
である。ダランベールの収束判定法からこの級数の収束半径は$\infty$であり、任意の正の実数$R$を与えたときに区間$[-R,R]$で一様収束するので、
$$ y=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!} $$
とおけば、
$$ y=y' \\ y(0)=1 $$
を満たす。よって$4\Rightarrow6$が示される。よって、$6\Leftrightarrow4$

これらの証明から、定義$1,2,3,4,5,6$がすべて同値であることがわかる。

収束性の証明

最後に、極限の収束性の証明をしたいと思う。これまでで、上で上げた定義のすべてが同値であることを示したので、$1$における定義の収束性のみを示せば十分である。

$$ a_n=\left(1+\frac1n\right)^n $$
とおき、この数列が単調増加かつ上に有界であることを示す。まず、単調増加であることを示す。
$n$個の$\frac{n+1}{n}$$1$個の$n$に相加相乗平均の不等式を用いると、

$$ \frac{\frac{n+1}{n}\cdot n+1}{n+1}>\sqrt[n+1]{\left(\frac{n+1}{n}\right)^n} $$
両辺$n+1$乗して整理すれば、
$$ a_{n+1}>a_n $$
が得られる。
次に、上に有界であることを示す。二項係数を
$$ \binom{n}{k}=\frac{n!}{k!(n-k)!} $$
と定め、二項定理を用いて$\{a_n\}$を展開すると、
\begin{eqnarray*} a_n&=&\left(1+\frac1n\right)^n \\ &=&\sum_{k=0}^{n}\binom{n}{k}\frac{1}{n^k} \\ &=&\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!}\frac{1}{n^k}n(n-1)(n-2)\cdots(n-k+1) \\ &=&\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!}\frac{n}{n}\frac{n-1}{n}\frac{n-2}{n}\cdots\frac{n-k+1}{n} \\ &=&\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!}1\cdot\left(1-\frac1n\right)\left(1-\frac2n\right) \cdots \left(1-\frac{k-1}{n}\right) \\ &\leq&\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!} \\ &\leq&1+\sum_{k=0}^{n-1}\frac{1}{2^k} \\ &\leq&1+\frac{1}{1-\frac12} \\ &=&3 \end{eqnarray*}
よって、$\{a_n\}$は上に有界である。
これらの議論から、数列$\{a_n\}$は収束する。

また、式変形の途中で不等式
$$ \frac{1}{k!}\leq\frac{1}{2^{k-1}} $$
が成り立つことを用いた。

おわりに

前回の双曲線関数の記事より長くなった気がする。でも、個人的に満足な内容が書けたからこれでいいかなと思ってたりする。何かご意見ご要望ありましたら教えてください。次回はテイラー展開の基本について書ければいいかな。

投稿日:20201116

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