以下、を環とする。
射影加群
は射影加群であるとは、任意の加群の完全列
について、
が完全列であるということである。
は左完全なので右側のが重要である。
射影加群の特徴づけ
加群について次の2条件は同値である。
①は射影加群である。
②は自由加群の直和因子になる。すなわち、ある加群が存在して、となる。
平坦加群
右加群は平坦加群であるとは、任意の加群の完全列
について、
が完全列であるということである。
は右完全なので左側のが重要である
平坦加群の特徴づけ
右加群について次の2条件は同値である。
①は平坦加群である。
②の任意の左idealについて、は同型である。
②の写像は全射準同型なので単射であることが重要である。
実は非常に重要なことが知られている。
自由加群は射影加群であり、射影加群は平坦加群である。
自由加群が射影加群であることは命題1よりわかる。射影加群が平坦加群であることを示すのは少し手間がかかったりするので省略する。(命題2を示す過程で射影加群が平坦加群でもある事実が導かれる。)
平坦加群だが射影加群ではない例
は加群として平坦加群ではある。しかし、射影加群ではない。
の任意の左idealはある整数を用いてとかける。が単射であることを示せばよい。
(ただし、上の表示においてはとは互いに素でである。)
とするととなる。やがであればとなる。よってであるとしてよい。
とと互いに素であるからとなるようなが存在する。
となり単射性が分かる。
よって、は平坦加群である。が射影加群であると仮定する。
ある加群が存在してとなる。
となる。任意のでない整数
についてとなる。つまりは任意のでない整数で割り切れることになりとなる。これは明らかに矛盾である。
参考
『環と加群のホモロジー代数的理論』(岩永,佐藤)(日本評論社)