この記事は作問時に使える手法を紹介したものになります。1人でも多くの人に作問をして欲しいと思い作ったので、この記事をきっかけに作問を始めていただけたらな、と思います。
恐らくですが、作問する際に最も使いやすい方法は既存の問題や式を別の形で解いてみる、というものだと思います。例えば、次の式を例にしましょう。
$$ \displaystyle \z(\overline{1} , \overline1) $$
これは$\d\sum_{0\f a\f b}\frac{(-1)^{a+b}}{ab} $を意味します。これを普通に解いてみます。
$ \begin{eqnarray*} &&\z(\overline{1} , \overline1)\\ &=&\frac12\sum_{\substack{0\f a\f b\\0\f b\f a\\0\f a=b}}\frac{(-1)^{a+b}}{ab}-\frac12\sum_{0\f a=b}\frac{(-1)^{a+b}}{ab}\\ &=&\frac12\sum_{a=1}^\infty \frac{(-1)^a}{a}\sum_{b=1}^\infty \frac{(-1)^b}{b}-\frac12\sum_{a=1}^\infty \frac1{a^2}\\ &=&\frac12\z(\overline1)^2-\frac12\z(2)\\ &=&\frac12\log^22-\frac{\pi^2}{12} \end{eqnarray*} $
これを別の形で式変形してみましょう。
$ \begin{eqnarray*} &&\z(\overline{1} , \overline1)\\ &=&\sum_{0\f a , b}\frac{(-1)^b}{a(a+b)}\\ &=&\sum_{0\f a,b}\frac{(-1)^b}a\int_0^1 x^{a+b-1}dx\\ &=&\int_0^1 \frac1x\sum_{0\f a,b}\frac{x^a(-x)^b}adx\\ &=&\int_0^1 \frac{\log(1-x)}{1+x}dx\\ \end{eqnarray*} $
この2つを結びつけてみると、
$\d\int_0^1 \frac{\log(1-x)}{1+x}dx=\frac12\log^22-\frac{\pi^2}{12} $
となります。問題が完成しましたね。あとは三角函数や双曲線函数などへの適当な置換でうまくカモフラージュしましょう。置換したら逆に形が汚くなる場合もあるので、そのような場合は自然なまま残しておきましょう。
ここで1つ注意すべきことがあります。それは、別解があるかどうかをチェックすることです。見た目と答えが綺麗で途中式が複雑、という問題には十中八九別解があります。別解を探すことでまた新たな問題が生まれることもあるので、別解があるかどうかを探すのは非常に大事です。例えばこの問題で言うと、
$ \begin{eqnarray*} &&\d\int_0^1 \frac{\log(1-x)}{1+x}dx\\ &=&\int_{\frac12}^{1}\frac{\log(2-2t)}{2t}2dt~~~~~~~~~~(x=2t-1)\\ &=&\int_{\frac12}^1\frac{\log2+\log(1-t)}tdt\\ &=&\left[\log2\log t-\text{Li}_2(t) \right]_{\frac12}^1\\ &=&\frac12\log^22-\frac{\pi^2}{12}\\ \end{eqnarray*} $
のように解けてしまいます。
これはあまり関係ないですが、ここでは$\d\text{Li}_2\left(\frac12\right)$を既知のものとして扱いましたがこの積分を考えることにより$\d\text{Li}_2\left(\frac12\right)$を求めることができることがわかりましたね。(作問においては横に逸れて探求することも大事だと考えています。)
今回はAMZVを例に挙げて考えてみましたが、この手法は少なくとも級数・積分の作問ではかなり有効な手段です。適当な三角函数への置換だけでもwolframalphaが答えを返さなくなったりします。積分や級数は問題を作りやすいので、簡単な問題からでも作問していただけると嬉しいです。