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大学数学基礎解説
文献あり

3日前に群を知ったねこ①

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注意

  • こちらは、ねこがにゃーにゃー言ってる記事です。ねこアレルギーなどで苦手な方は引き返しましょう。
  • 結論は最後に書いてあります。
  • 前提知識は「高校の数学」と「群の定義」です。

登場人物(登場ねこ物)

  • ねこさん:すーぱーにゃいえんすはいすくーる卒業。ねこねこ大学1年生。数学を勉強中。ひなたぼっこが大好き。
  • ぶちねこ先生:ねこねこ大学の先生。ねこさんに数学を指導している。ねこさんによくお手紙を書く。モンプチが好き。
  • くろねこ郵便屋さん:ぶちねこ先生からのお手紙を届けてくれる。働きもの。

本編

ねこさん「群の定義を知ったけど、なんにゃこれは・・・と思いながらゴロゴロしてたら3日も経ってしまったにゃ」

群の定義

ある(空でない)集合$G$が一つの演算$\cdot$に関して群をなすというのは以下を満たすときである。
(1)$x,y \in G \ \Longrightarrow \ x\cdot y \in G$
(2)$x \cdot e = e \cdot x = x(\forall x \in G)$が成り立つ$e(\in G)$が存在する。
(3)各$x (\in G)$に対して$x\cdot y=y\cdot x=e$を満たす$y (\in G)$が存在する。
(4)結合法則 $x\cdot (y \cdot z)=(x\cdot y )\cdot z$が成り立つ。

※参考:足立恒雄「ガロア理論講義」(日本評論社)p.23

ねこさん「(2)の$e$は単位元って言うにゃね。あと、(3)の$y$$x$の逆元って言うにゃね。有理数の加法に関して言えば、単位元は$0$のことで、$2$の逆元は$-2$ってことにゃね。まあ、それはそうにゃって感じにゃね・・・」

ねこさんは、ゴロゴロし始めてしまいました。

ねこさん「群と遊んでみたいにゃ。でも、日なたが気持ちいいにゃあ・・・ゴロゴロゴロ」

くろねこ郵便屋さん「ねこさーん。お手紙でーす!」

ねこさん「くろねこさん!ありがとにゃ~。なんにゃ、なんにゃ。ぶちねこ先生からにゃ。読んでみるにゃ」

ねこさんへ。

ぶちねこ先生です。お元気ですか?
 群の定義を知ったと聞きました。がんばっていますね。
今日は一つ問題を出してみます。考えてみてください。

<問題>
単位円周上の点の集合$C$を群にしたいです。どんな演算$\cdot$を入れればいいでしょうか?
$C=\{(x,y)\ |\ x,y \in \mathbb{R},\ x^2+y^2=1\}$

$C$を群にするような演算$\cdot$を、一つ探しあててみてください。

ぶちねこ先生より。

ねこさん「にゃ。単位円周上?どうすればいいにゃ・・・?とりあえず、掛け算してみるにゃ!」


~ねこさんノート~
$$ C \ni (x_1,y_1),(x_2,y_2) $$
演算$\cdot$を以下のように定義する。
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(x_1x_2,y_1y_2) $$


ねこさん「それっぽいにゃ!これでどうにゃ?ちょっと計算してみるにゃ~」


~ねこさんノート~
$$ C \ni (1,0),(0,1) $$
$$ (1,0)\cdot(0,1)=(0,0) $$


ねこさん「・・・。$(0,0)$になったにゃね。これって、単位円周上にないにゃね・・・。(1)を満たしてないにゃ!これが噂に聞く『閉じてにゃい』ってやつにゃね!・・・しかし、困ったにゃ。足してみるにゃ」


~ねこさんノート~
$$ C \ni (x_1,y_1),(x_2,y_2) $$
演算$\cdot$を以下のように定義する。
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(x_1+x_2,y_1+y_2) $$

$$ C \ni (1,0),(1,0) $$
$$ (1,0)\cdot(1,0)=(2,0) $$


ねこさん「またしても閉じてにゃいにゃ。困ったにゃ。もう、ひなたぼっこするにゃ」

ねこさんは、またゴロゴロし始めてしまいました。

ねこさん「ゴロゴロ。単位円と言えば、三角関数にゃねえ。高校のときの教科書を見てみるにゃ」

ねこさんは本棚から数学Ⅱの教科書を引っ張り出してきました。

ねこさん「単位円周上に留まっていてほしいにゃねえ。つまり、$(\cos\theta,\sin\theta)$の形でいてほしいってことにゃ。・・・にゃにゃにゃ!!!?」

ねこさんは、教科書に書いてあった次の式を見て、なにかひらきました。

$$ \cos\frac{5}{12}\pi =\cos\left(\frac{\pi}{4}+\frac{\pi}{6}\right) $$

ねこさん「もしかして・・・」


~ねこさんノート~
$$ C \ni (x_1,y_1),(x_2,y_2) $$
$$ (x_1,y_1)=(\cos\theta_1,\sin\theta_1) $$
$$ (x_2,y_2)=(\cos\theta_2,\sin\theta_2) $$
とする。このとき、演算$\cdot$を以下のように定義する。
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) $$


ねこさん「こうすれば、閉じるにゃ!$(\cos\theta,\sin\theta)$の形でいてくれるにゃ!!・・・でも、待つにゃ」


~ねこさんノート~
$C \ni (x,y)=(\cos\theta,\sin\theta)$となる実数$\theta$はいっぱいある。
$\theta+2n\pi $$n$は整数)全部。無限にある。


ねこさん「いっぱいあるけど大丈夫かにゃ・・・」


~ねこさんノート~
$$ (\cos\theta_1,\sin\theta_1)=(\cos\tau_1,\sin\tau_1) $$
$$ (\cos\theta_2,\sin\theta_2)=(\cos\tau_2,\sin\tau_2) $$
となる$\tau_1,\tau_2$の候補は無限にあるけれど
$$ (\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2))=(\cos(\tau_1+\tau_2),\sin(\tau_1+\tau_2)) $$
は、いつでも成り立つのか?


ねこさん「不安にゃ!不安にゃー!!ちゃんと確認しておくにゃ。急がば回れにゃ」


~ねこさんノート~
$$ (\cos\theta_1,\sin\theta_1)=(\cos\tau_1,\sin\tau_1) $$
$$ (\cos\theta_2,\sin\theta_2)=(\cos\tau_2,\sin\tau_2) $$
とする。このとき、ある整数$m,n$が存在して
$$ \theta_1=\tau_1+2\pi m $$
$$ \theta_2=\tau_2 + 2\pi n $$
とかける。
$$ \begin{align} (\cos(\tau_1+\tau_2),\sin(\tau_1+\tau_2))&=(\cos(\theta_1+2\pi m +\theta_2+2\pi n),\sin(\theta_1+2\pi m +\theta_2+2\pi n))\\ &=(\cos(\theta_1+\theta_2+2\pi (n+m)),\sin(\theta_1+\theta_2+2\pi (n+m)))\\ &=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) \end{align} $$
よって
$$ (\cos(\tau_1+\tau_2),\sin(\tau_1+\tau_2))=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) $$


ねこさん「これで安心にゃ!!よくよく考えたら、$2\pi$の整数倍のズレだから当たり前にゃね・・・。でも、そのまま放置して、モヤモヤするよりマシにゃね。安心したからモンプチを食べるにゃ」

ねこさんはモンプチ休憩中です。

ねこさん「おなかいっぱいになったところで!群の定義を満たすか確認にゃー!!」


~ねこさんノート~
$C$の任意の元$(x_1,y_1),(x_2,y_2)$に対して、ある実数$\theta_1,\theta_2$が存在して
$$ (x_1,y_1)=(\cos\theta_1,\sin\theta_1) $$
$$ (x_2,y_2)=(\cos\theta_2,\sin\theta_2) $$
と表せる。
演算$\cdot$を以下のように定義する。
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) $$

(1)(閉じているか?)
$C$の任意の元$(x_1,y_1),(x_2,y_2)$に対して、ある実数$\theta_1,\theta_2$が存在して
$$ (x_1,y_1)=(\cos\theta_1,\sin\theta_1) $$
$$ (x_2,y_2)=(\cos\theta_2,\sin\theta_2) $$
と表せる。
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) \in C $$
となり、成り立つ。

(2)(単位元の存在)
$$ (e_1,e_2)=(\cos0,\sin0) \in C $$
とする。
$C$の任意の元$(x,y)$に対して、ある実数$\theta$が存在して
$$ (x,y)=(\cos\theta,\sin\theta) $$
と表せる。このとき
$$ \begin{align} (x,y)\cdot (e_1,e_2)&=(\cos\theta,\sin\theta)\cdot (\cos0,\sin0)\\ &=(\cos(\theta+0),\sin(\theta+0))\\ &=(\cos\theta,\sin\theta)\\ &=(x,y) \end{align} $$
$$ \begin{align} (e_1,e_2)\cdot(x,y)&=(\cos0,\sin0)\cdot (\cos\theta,\sin\theta)\\ &=(\cos(0+\theta),\sin(0+\theta))\\ &=(\cos\theta,\sin\theta)\\ &=(x,y) \end{align} $$
となるので、$(e_1,e_2)=(\cos0,\sin0)$が単位元である。

(3)(逆元の存在)
$C$の任意の元$(x,y)$に対して、ある実数$\theta$が存在して
$$ (x,y)=(\cos\theta,\sin\theta) $$
と表せる。このとき$(\cos(-\theta),\sin(-\theta)) \in C$であり、
$$ \begin{align} (x,y)\cdot(\cos(-\theta),\sin(-\theta))&=(\cos\theta,\sin\theta)\cdot (\cos(-\theta),\sin(-\theta))\\ &=(\cos(\theta+(-\theta)),\sin(\theta+(-\theta)))\\ &=(\cos0,\sin0)\\ &=(e_1,e_2) \end{align} $$

$$ \begin{align} (\cos(-\theta),\sin(-\theta))\cdot(x,y)&=(\cos(-\theta),\sin(-\theta))\cdot (\cos\theta,\sin\theta)\\ &=(\cos((-\theta)+\theta),\sin((-\theta)+\theta))\\ &=(\cos0,\sin0)\\ &=(e_1,e_2) \end{align} $$
となるので、$(x,y)=(\cos\theta,\sin\theta)$の逆元は$(\cos(-\theta),\sin(-\theta))$である。


ねこさん「・・・にゃ!$\theta+0=\theta$とか$(-\theta)+\theta=0$とか、無意識に計算してるにゃね。でもこれって、実数の加法が群の定義を満たしてるおかげっぽいにゃね。いつも何も考えずに計算してたにゃ・・・。今度は、ちゃんと意識しながら結合法則を確認してみるにゃ!」


~ねこさんノート~
(4)(結合法則)
$C$の任意の元$(x_1,y_1),(x_2,y_2),(x_3,y_3)$に対して、ある実数$\theta_1,\theta_2,\theta_3$が存在して
$$ (x_1,y_1)=(\cos\theta_1,\sin\theta_1) $$
$$ (x_2,y_2)=(\cos\theta_2,\sin\theta_2) $$
$$ (x_3,y_3)=(\cos\theta_3,\sin\theta_3) $$
と表せる。
とする。このとき
$$ \begin{align} ((x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2))\cdot(x_3,y_3)&=\{(\cos\theta_1,\sin\theta_1)\cdot(\cos\theta_2,\sin\theta_2)\}\cdot(\cos\theta_3,\sin\theta_3)\\ &=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) \cdot(\cos\theta_3,\sin\theta_3)\\ &=(\cos((\theta_1+\theta_2)+\theta_3),\sin((\theta_1+\theta_2)+\theta_3))\\ &=(\cos(\theta_1+(\theta_2+\theta_3)),\sin(\theta_1+(\theta_2+\theta_3)))\\ &=(\cos\theta_1,\sin\theta_1)\cdot(\cos(\theta_2+\theta_3),\sin(\theta_2+\theta_3))\\ &=(\cos\theta_1,\sin\theta_1)\cdot\{ (\cos\theta_2,\sin\theta_2)\cdot(\cos\theta_3,\sin\theta_3)\}\\ &=(x_1,y_1)\cdot((x_2,y_2)\cdot(x_3,y_3)) \end{align} $$
よって
$$ ((x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2))\cdot(x_3,y_3)=(x_1,y_1)\cdot((x_2,y_2)\cdot(x_3,y_3)) $$
となるので結合法則が成り立つ。


ねこさん「$(\theta_1+\theta_2)+\theta_3=\theta_1+(\theta_2+\theta_3)$のところで、実数の加法が結合法則が成り立つことを使ったにゃね。にゃるほどにゃ~。・・・にゃにゃ!!もしかして、実数の性質を使えば、こんなことも言えちゃうにゃ!?」


~ねこさんノート~
(5)(可換)
$C$の任意の元$(x_1,y_1),(x_2,y_2)$に対して、ある実数$\theta_1,\theta_2$が存在して
$$ (x_1,y_1)=(\cos\theta_1,\sin\theta_1) $$
$$ (x_2,y_2)=(\cos\theta_2,\sin\theta_2) $$
と表せる。このとき
$$ \begin{align} (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)&=(\cos\theta_1,\sin\theta_1)\cdot(\cos\theta_2,\sin\theta_2)\\ &=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2))\\ &=(\cos(\theta_2+\theta_1),\sin(\theta_2+\theta_1))\\ &=(\cos\theta_2,\sin\theta_2)\cdot(\cos\theta_1,\sin\theta_1)\\ &=(x_2,y_2)\cdot(x_1,y_1) \end{align} $$
よって
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(x_2,y_2)\cdot(x_1,y_1) $$
が成り立つ。


ねこさん「これが噂の『可換』ってやつにゃね!『にゃーべる群』って言うらしいにゃね~(※アーベル群です)。これで、ぶちねこ先生の問題も解けたことだし、ゴロゴロするにゃ。ひなたぼっこにゃ」

ねこさんはゴロゴロし始めてしまいました。お日様が気持ちいいです。ねこさんは、野性を失って、おなかを出してゴロゴロしています。

ねこさん「ゴロゴロゴロ・・・」

くろねこ郵便屋さん「ねこさん、ねこさん!また、ぶちねこ先生からお手紙来てますよ~!」

ねこさん「・・・にゃ!?」

(つづくかも)

今回の結論

集合$C$を以下とする。
$$ C=\{(x,y)|x,y \in \mathbb{R},\ x^2+y^2=1\} $$

$C$の任意の元$(x_1,y_1),(x_2,y_2)$に対して、ある実数$\theta_1,\theta_2$が存在して
$$ (x_1,y_1)=(\cos\theta_1,\sin\theta_1) $$
$$ (x_2,y_2)=(\cos\theta_2,\sin\theta_2) $$
と表せる。
演算$\cdot$を以下のように定義する。
$$ (x_1,y_1)\cdot(x_2,y_2)=(\cos(\theta_1+\theta_2),\sin(\theta_1+\theta_2)) $$
このとき、$C$は演算$\cdot$に関して可換群をなす。

参考文献

[1]
足立 恒雄 , ガロア理論講義, 日本評論社, pp.23-24
投稿日:20201118
更新日:2023124

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みぽ
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今日もねこがかわいい。

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