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楕円曲線上の有理点の構成

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問.

R2上の曲線をC: y2=x32とし, C上の点Pnを次のように定める.

  • (a) P1=(3,5)
  • (b) PnにおけるCの接線をとり, PnではないCとの交点をPn+1とする.


    このとき以下の問いに答えよ.
    (1) Pnx座標をxnと置くと, xn+1=xn4+16xn4(xn32)であることを示せ.
    (2) m, n0<n<mを満たす互いに素な自然数とする.
    A=m(m3+16n3), B=4n(m32n3)と置いたとき, ABの最大公約数は24の約数であることを示せ.
    (3) xnを正の既約分数としたときの分子をH(xn)としたとき, H(xn+1)>124H(xn)4を満たすことを示し, 曲線C上に有理点は無限にあることを証明せよ.

解答

(1)

y2=x32を各辺xで微分すると, 2yy=3x2であり, yn0のときの(xn, yn)における接線の方程式は
  y=3xn22yn(xxn)+ynである. Cとの交点のx座標が満たす方程式は
{3xn22yn(xxn)+yn}2=x32となる. この方程式はxnを二重解に持つので, 解と係数の関係からxの二次の係数に着目して,xn+xn+xn+1=(3xn22yn)2xn+1=9xn44yn22xn=9xn48xn(xn32)4(xn32)=xn3+16xn4(xn32).

(2)

A,Bの最大公約数をGと置く. このとき, 素数pGの約数だとすると次が成立する.
 [1] pnの約数ではない.
 [2] p2でないなら, pmの約数ではない.
()
[1] pGの約数であり, nの約数でもあるとすれば, n, mは互いに素だから, pmを割り切らない. すると, pm4も割り切らないのでAを割り切らない. これはpGの約数であり, Aの約数でもあることに反する.
[2] p2ではなく, mの約数だとすると, n,mは互いに素だから, pnの約数ではない. すると, p8n4を割り切らないから, pBの約数ではないことになるが, これはpGの約数であり, Bの約数であることに反する.

pGを何回割り切るかを考える.
(i) p2のとき, p4,n,mのいずれも割り切らないから, m3+16n3, m32n3の共通因数であり, この差(m3+16n3)(m32n3)=18n3=232n3も割り切るはずだが, p2nも割り切らないから, 32を割り切るはずで, p=3でなければならず, しかも高々2回しかGを割り切らない.

次に, ABのいずれかが9で割り切れないことを示す. 今, m,nは互いに素だから, m,nのいずれかが3で割り切れないときにm32n39で割り切れないことが言えれば十分. m,nのいずれかが3の倍数のとき, もう一方は3の倍数ではなく, ABは3では割り切れない. いずれも3の倍数でないとき, m,nは互いに素で, 9で割った余りを考えれば, 1m,n8を考えれば十分. 考えられる全ての(m, n)の組は,(m,n)=(1, 1), (1, 2), (1, 4), (1, 5), (1, 7), (1, 8),(2, 1), (2, 5), (2, 7), (4, 1), (4, 5), (4, 7),(5, 1), (5, 2), (5, 4), (5, 7), (5, 8),(7, 1), (7, 2), (7, 4), (7, 5), (7, 8), (8, 1), (8, 5), (8, 7)であるが, いずれの場合もm32n39では割り切れないので,G3で高々1回しか割り切れない.
(ii) p=2のとき, mが奇数だとすると, m4も奇数だから, A2で割り切れない. 次に, mが偶数だとすると, nは奇数であり, A24回以上割り切れるが, 8n42でちょうど3回だけ割り切れるから, G2で高々3回しか割り切れない.

以上により, Gは高々31回, 23回しか割り切れないので, G23×3=24の約数である. 

(3)

 H(xn+1)を既約分数表示にしたときの分子は最小でもA24であり,AH(xn)4=m(m3+16n3)m4=16mn3>0H(xn+1)A24>m424=124H(xn)4が成立する. また一般に, a3ならば124a4>aが成り立つので, H(xn)3なら124H(xn)4>H(xn)が成立する.

更に, H(x1)=33であり, 任意の自然数nに対して, H(xn+1)>H(xn)が成立する. これにより, xnの既約分数表示の分子は増加していき, 特にx1,...,xnは全て異なることがわかる. また, (1)より, x1が有理数なので, 任意の自然数nに対してxnは有理数である.

よって, C上に有理点は無数に存在する. 

補足

 C:y2=ax3+bx2+cx+d (但し, y=0のとき, 右辺は重解を持たないとする.)と定義される曲線は楕円曲線と呼ばれている.

本問のように, 無数に有理点がある楕円曲線もあれば, y2=x3xのように, 有限個の有理点しか持たないようなものもある. a,b,c,dが有理数なら, (1)のように, 有理点から接線を引くと, Cとの交点はまた有理点になる. また, 相異なる2つの有理点が与えられたとき, その2点を通る直線との交点を取っても有理点になる. このように, 楕円曲線の点同士に対して新たな点を作る演算を考えることができて, 群構造を持つことになる. (単位元は無限遠点, 逆元はx軸対称の点に取るとうまくいく.)
ミレニアム懸賞問題の未解決問題のひとつであるBSD予想は楕円曲線についての問題で, Fermatの最終定理の解決にも使われている(らしい).

参考: 数論I Fermatの夢と類体論 (加藤和也 黒川信重 斎藤毅)

投稿日:20201118
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