$\mathbb{R}^2$上の曲線を$C:\ y^2=x^3-2$とし, $C$上の点$\mathrm{P}_n$を次のように定める.
このとき以下の問いに答えよ.
$(1)$ $\mathrm{P}_n$の$x$座標を$x_n$と置くと, $
x_{n+1}=\dfrac{{x_n}^4+16x_n}{4({x_n}^3-2)}
$であることを示せ.
$(2)$ $m,\ n$を$0 < n < m$を満たす互いに素な自然数とする.
$A=m(m^3+16n^3), \ B=4n(m^3-2n^3)$と置いたとき, $A$と$B$の最大公約数は$24$の約数であることを示せ.
$(3)\ x_n$を正の既約分数としたときの分子を$H(x_n)$としたとき, $H(x_{n+1})>\dfrac{1}{24}H(x_n)^4$を満たすことを示し, 曲線$C$上に有理点は無限にあることを証明せよ.
$(1)$
$y^2=x^3-2$を各辺$x$で微分すると, $2yy'=3x^2$であり, $y_n\ne0$のときの$(x_n,\ y_n)$における接線の方程式は
$$\begin{align}y=\dfrac{3{x_n}^2}{2y_n}(x-x_n)+y_n\end{align}$$である. $C$との交点の$x$座標が満たす方程式は
$$\begin{align}
\left\{\dfrac{3{x_n}^2}{2y_n}(x-x_n)+y_n\right\}^2=x^3-2\end{align}$$となる. この方程式は$x_n$を二重解に持つので, 解と係数の関係から$x$の二次の係数に着目して,$$\begin{align}
&x_n+x_n+x_{n+1}=\left(\dfrac{3{x_n}^2}{2y_n}\right)^2\\
\therefore x_{n+1}=\dfrac{9{x_n}^4}{4{y_n}^2}-2x_n&=\dfrac{9{x_n}^4-8x_n({x_n}^3-2)}{4({x_n}^3-2)}=\dfrac{{x_n}^3+16x_n}{4({x_n}^3-2)}.\end{align}$$
$(2)$
$A,B$の最大公約数を$G$と置く. このとき, 素数$p$が$G$の約数だとすると次が成立する.
$[1]$ $p$は$n$の約数ではない.
$[2]$ $p$が$2$でないなら, $p$は$m$の約数ではない.
$(\because)$
$[1]$ $p$が$G$の約数であり, $n$の約数でもあるとすれば, $n,\ m$は互いに素だから, $p$は$m$を割り切らない. すると, $p$は$m^4$も割り切らないので$A$を割り切らない. これは$p$が$G$の約数であり, $A$の約数でもあることに反する.
$[2]$ $p$が$2$ではなく, $m$の約数だとすると, $n,m$は互いに素だから, $p$は$n$の約数ではない. すると, $p$は$8n^4$を割り切らないから, $p$は$B$の約数ではないことになるが, これは$p$が$G$の約数であり, $B$の約数であることに反する.
$p$が$G$を何回割り切るかを考える.
$(\mathrm{i})$ $p\ne2$のとき, $p$は$4,n,m$のいずれも割り切らないから, $m^3+16n^3,\ m^3-2n^3$の共通因数であり, この差$(m^3+16n^3)-(m^3-2n^3)=18n^3=2\cdot3^2\cdot n^3$も割り切るはずだが, $p$は$2$も$n$も割り切らないから, $3^2$を割り切るはずで, $p=3$でなければならず, しかも高々$2$回しか$G$を割り切らない.
次に, $A$か$B$のいずれかが$9$で割り切れないことを示す. 今, $m,n$は互いに素だから, $m,n$のいずれかが$3$で割り切れないときに$m^3-2n^3$が$9$で割り切れないことが言えれば十分. $m,n$のいずれかが$3$の倍数のとき, もう一方は3の倍数ではなく, $A$か$B$は3では割り切れない. いずれも$3$の倍数でないとき, $m,n$は互いに素で, $9$で割った余りを考えれば, $1\leqq m,n \leqq 8$を考えれば十分. 考えられる全ての$(m,\ n)$の組は,$$\begin{align}
(m,n)=
&(1,\ 1),\ (1,\ 2),\ (1,\ 4),\ (1,\ 5),\ (1,\ 7),\ (1,\ 8),\\
&(2,\ 1),\ (2,\ 5),\ (2,\ 7),\ (4,\ 1),\ (4,\ 5),\ (4,\ 7),\\
& (5,\ 1),\ (5,\ 2),\ (5,\ 4),\ (5,\ 7),\ (5,\ 8),\\
& (7,\ 1),\ (7,\ 2),\ (7,\ 4),\ (7,\ 5),\ (7,\ 8),\ (8,\ 1),\ (8,\ 5),\ (8,\ 7)\end{align}$$であるが, いずれの場合も$m^3-2n^3$は$9$では割り切れないので,$G$は$3$で高々$1$回しか割り切れない.
$(\mathrm{ii})$ $p=2$のとき, $m$が奇数だとすると, $m^4$も奇数だから, $A$は$2$で割り切れない. 次に, $m$が偶数だとすると, $n$は奇数であり, $A$は$2$で$4$回以上割り切れるが, $8n^4$は$2$でちょうど$3$回だけ割り切れるから, $G$は$2$で高々$3$回しか割り切れない.
以上により, $G$は高々$3$で$1$回, $2$で$3$回しか割り切れないので, $G$は$2^3\times3=24$の約数である.
$(3)$
$H(x_{n+1})$を既約分数表示にしたときの分子は最小でも$\dfrac{A}{24}$であり,$$\begin{align} A-H(x_n)^4&=m(m^3+16n^3)-m^4=16mn^3>0\\ \therefore H(x_{n+1})&\geqq\dfrac{A}{24}>\dfrac{m^4}{24}=\dfrac{1}{24}H(x_n)^4\end{align}$$が成立する. また一般に, $a\geqq3$ならば$\dfrac{1}{24}a^4>a$が成り立つので, $H(x_n)\geqq3$なら$\dfrac{1}{24}H(x_n)^4>H(x_n)$が成立する.
更に, $H(x_1)=3\geqq3$であり, 任意の自然数$n$に対して, $$\begin{align} H(x_{n+1})>H(x_n)\end{align}$$が成立する. これにより, $x_n$の既約分数表示の分子は増加していき, 特に$x_1,...,x_n$は全て異なることがわかる. また, $(1)$より, $x_1$が有理数なので, 任意の自然数$n$に対して$x_n$は有理数である.
よって, $C$上に有理点は無数に存在する.
$C:y^2=ax^3+bx^2+cx+d$ (但し, $y=0$のとき, 右辺は重解を持たないとする.)と定義される曲線は楕円曲線と呼ばれている.
本問のように, 無数に有理点がある楕円曲線もあれば, $y^2=x^3-x$のように, 有限個の有理点しか持たないようなものもある. $a,b,c,d$が有理数なら, $(1)$のように, 有理点から接線を引くと, $C$との交点はまた有理点になる. また, 相異なる$2$つの有理点が与えられたとき, その2点を通る直線との交点を取っても有理点になる. このように, 楕円曲線の点同士に対して新たな点を作る演算を考えることができて, 群構造を持つことになる. (単位元は無限遠点, 逆元は$x$軸対称の点に取るとうまくいく.)
ミレニアム懸賞問題の未解決問題のひとつであるBSD予想は楕円曲線についての問題で, Fermatの最終定理の解決にも使われている(らしい).