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緯度と経度が等しい点のお話

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{beq}[0]{\begin{eqnarray*}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{eeq}[0]{\end{eqnarray*}} \newcommand{G}[1]{\Gamma({#1})} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{hp}[0]{\frac{\pi}2} \newcommand{limn}[0]{\lim_{n\to\infty}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{sumk}[0]{\sum_{k=1}^n} \newcommand{sumn}[1]{\sum_{n={#1}}^\infty} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tc}[0]{\TextCenter} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

はじめに

突然ですが皆さん, 次のようなことを考えたことがありますか?


$\hspace{0.5cm}$緯度と経度が等しい点を結ぶとどんな曲線になるだろうか.

今回はこれについてお話ししていこうと思います.
${}$

パラメタ表示

では, 地球を半径$1$の球として, 経度$\t$, 緯度$\phi$である点$P$の座標をパラメタ表示してみましょう.

今回は$\t=\phi=0$なる点を$A(1,0,0)$とし, 赤道は$xy$平面での求の断面とします.

すると, 点$P$$xy$平面へ射影した点 ($x,y$座標は$P$と等しく$z$座標は$0$の点) を$Q$としたときに, $\angle AOQ=\t,\ \angle QOP=\phi$ となります.
${}$

まず, $\Delta POQ$を考えると, 斜辺$OP=1,\ \angle PQO=\hp,\ \angle POQ=\phi$ なる直角三角形ですので, $OQ=\cos\phi,\ PQ=\sin\phi$ が分かります.

次に$\Delta QOA$を考えると, 斜辺$OQ=\cos\phi,\ \angle QAO=\hp,\ \angle QOA=\t$ なる直角三角形ですので, $Q(\cos\phi\cos\t,\cos\phi\sin\t)$ が分かります.

以上より, $P$のパラメタ表示は
$$ \vec{OP}=\begin{pmatrix} \cos\phi\cos\t\\ \cos\phi\sin\t\\ \sin\t \end{pmatrix}$$
となります.
${}$

これは三次元極座標と呼ばれるものです. (まあ実際は今回で言う$\hp-\phi$$2$つめの変数$\phi$とすることが多いですが. )

個人的には知っていて損はないと思います.

この説明でわかりにくかったという方はWikiってみてください.
${}$

曲線を調べる

パラメタ表示が求められたので, 満を持して, $\t=\phi$としてみましょう!($0\leqq\t\leqq\hp$とします) すると, 次のようになります.

$$ \vec{OP}=\begin{pmatrix} \cos^2\t\\ \cos\t\sin\t\\ \sin\t \end{pmatrix}$$

これを見てもなんだか分からないですね. そこで, $xy$平面上の点$Q(\cos^2\t,\cos\t\sin\t)$の軌跡を考えてみましょう. すると,
$$\beq \vec{OQ}&=&\binom{\cos^2\t}{\cos\t\sin\t}\\ &=&\frac12\binom{\,1+\cos2\t\,}{\sin2\t}\\ &=&\binom{\frac12}{0}+\frac12\binom{\cos2\t}{\sin2\t} \eeq$$
即ち, $Q$は点$(\frac12,0)$を中心とする半径$\frac12$の半円を動くことが分かりました!
${}$

従って, $P$の軌跡は, 球と円柱の共有部分だったということです!
${}$

実はこの曲線は, Viviani's curve と呼ばれるものみたいです. 気になる方はWikiを見てみてください! ( https://en.wikipedia.org/wiki/Viviani%27s_curve )
${}$

弧長を求める

この曲線は円柱の側面だと分かったので, 円柱と一緒に平面に広げれば通常の積分で弧長が求められそうですね!
${}$

$(\frac12,0)$を中心とする半径$\frac12$の円柱の側面に$t$軸をとってみます. ($A$$t=0$とします. )

すると先の$Q$の表示より, $t$$\t$で表すことができて, $t=\t$となります. (半径$\frac12$で中心角$2\t$だからです. )

従って, $P$$z$座標は$\sin\t$だったので, この曲線を広げると
$$ z=\sin t\ \ \big(0\leqq t\leqq\hp\big)$$
となります!こんな単純になるなんて面白いですね.
${}$

さて, この曲線の弧長$L$
$$\beq&\ds\int_0^{\hp}\sqrt{1+\cos^2 t}\,dt&\eeq$$
となります.

ここで残念なのですが, 残念なことにこの積分は初等関数で表すことができません...

仕方ないので近似値を書いておくと, $1.910098894513856\ldots$くらいらしいです.
${}$

面積を求める

今度は, この曲線と経度$0$度線で囲まれた部分の面積を求めてみます!

曲面の面積は高校範囲ではやらないのですが, まあ球面なのでなんとかなるでしょう. (例の如く, そこまで厳密でないのは許してください.)
${}$

まずは, この曲面を$\phi$方向に(緯線に平行に)切ってみましょう.

北緯$\phi\sim\phi+d\phi$の部分の帯を長方形とみなしてみます. 高さはもちろん$d\phi$です.

横幅はというと, 経度$\t$の範囲は$0\leqq\t\leqq\phi\leqq\hp$でしたので, 角度$\phi$だけ動きます. ただしここで注意なのが, 北緯$\phi$を固定して経度$\t$を変化させると, 点$P$は半径$\cos\phi$の円上を動きます!

従って, 微小長方形の横幅は$\phi\cos\phi$であり, 微小面積は$dS=\phi\cos\phi\,d\phi$ となります.

これを積分すれば,
$$\beq S&=&\int_0^{\hp}\phi\cos\phi\,d\phi\\ &=&\Big[\phi\sin\phi+\cos\phi\big]_0^\hp\\ &=&\hp-1 \eeq$$

従って, この曲線(と本初子午線)で囲まれる部分の面積は$\ds\hp-1$だとわかりました! これは結構綺麗で面白いですね.
${}$

おわりに

今回も結構長くなってしまってすみません. でもこういうのをきちんと計算できるのも数学の面白いところですよね.

では, 読んで下さった方, ありがとうございました.

${}$

投稿日:20201118

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投稿者

東大理数B3です

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