5

n次元球の体積

1330
0

問題設定

今日は、半径a(>0)n次元球Bn(a)={xRn||x|a}の体積を求めてみたいと思います。まずは、体積の定義を確認します。

体積

ARnに対して
Adx1dxn
が可積分であるとき、Aは体積確定といい、この積分の値を、Aの(n次元)体積という。

したがって、今回考えるのは、次の問題ということになります。

Bn(a)dx1dxn=?

n次元極座標変換

この積分をこのまま計算するのは現実的ではありません。そこで極座標変換をしたいのですが、n次元の極座標とはどうすればいいのでしょうか。r=(x1,x2,,xn)を極座標表示することとします。それはおよそ次の手順にまとめられます。

  1. rx1軸とx2x3xn超平面(x1=0)に射影する
  2. x1=0への射影を、x2軸とx3xn超平面(x2=0)に射影する
  3. 手順1,2を繰り返す

実際にやってみます。手順1は、
x1=r1cosθ1, r2=r1sinθ1 (r10,0θ1π)
と置くことに相当します。r1rの大きさで、r2rx2x3xn超平面への射影の大きさです。その射影について同じことをします。すなわち、
x2=r2cosθ2, r3=r2sinθ2 (r20,0θ2π)
です。さらに繰り返してゆきます。
x3=r3cosθ3, r4=r3sinθ3 (r30,0θ3π)xk=rkcosθk, rk+1=rksinθk (rk0,0θkπ)xn1=rn1cosθn1, rn=rn1sinθn1 (rn10,0θn12π)
最後のrnとは、xn軸への射影のことなので、xn座標そのものを表し、rn0とは限らないことに注意します。θn1の範囲も、これだけ2πまでです。
こうして、r=(x1,x2,,xn)を極座標表示することができました。

重積分における置換積分

変数変換して積分する場合は、微小体積がどう変換されるかも知らなけらばなりません。その求め方について簡単に解説します。
わかりやすさのために、まずは、馴染みのある2次元極座標変換で考えてみます。
x=rcosθ, y=rsinθ
このもとで、(r,θ)[r0,r0+dr]×[θ0,θ0+dθ]を動くとき、(x,y)の動く範囲の面積はいくらでしょうか。この例では、(x,y)の動く範囲は扇型から扇型を除いた形なので、図形的に考えれば容易に求めることができますが、ここでは後のためにもより一般的に考えます。微小量の関係は次の式で表されます。
(dxdy)=(cosθrsinθsinθrcosθ)(drdθ)
もっといえば、
(x0+dxy0+dy)=(x0y0)+(cosθrsinθsinθrcosθ)(drdθ)
つまり、(r,θ)[r0,r0+dr]×[θ0,θ0+dθ]を動くとき、(x,y)は、[r0,r0+dr]×[θ0,θ0+dθ]を上の行列で変換した図形を動くことになります。もちろんこれは平行四辺形なので、扇型とは一致しないですが、一次近似するとそうなる、ということです。すると、行列式が面積の拡大率になるので、この場合は
|cosθrsinθsinθrcosθ|=r
より、
dxdy=rdrdθ
となります。

本題に戻って、n次元極座標変換にこのことを適用してみます。
dx1dr2=r1dr1dθ1dx2dr3=r2dr2dθ2dxn1drn=rn1drn1dθn1
したがって、
dx1dx2dxn=r1r2rn1dr1dθ1dθ2dθn1
です。いま、
r2=r1sinθ1r3=r2sinθ2=r1sinθ1sinθ2rn1=r1sinθ1sinθn2
より、
dx1dx2dxn=r1n1sinn2θ1sinn3θ2sinθn2dr1dθ1dθ2dθn1
となりました。これで、求める積分が次のように書き換えられます。

Bn(a)dx1dxn=r=0r=aθ1=0θ1=πθn2=0θn2=πθn1=0θn1=2πr1n1sinn2θ1sinn3θ2sinθn2dr1dθ1dθ2dθn1

あとは計算

r=0r=aθ1=0θ1=πθn2=0θn2=πθn1=0θn1=2πr1n1sinn2θ1sinn3θ2sinθn2dr1dθ1dθ2dθn1=ann2πk=1n20πsinkθdθ=ann2πk=1n220π/2sinkθdθ=2n1anπnk=1n2Γ(k+12)Γ(12)2Γ(k+22)=2anπnΓ(1+12)Γ(12)Γ(1+22)Γ(2+12)Γ(12)Γ(2+22)Γ(3+12)Γ(12)Γ(3+22)Γ(n2+12)Γ(12)Γ(n2+22)=2anπnΓ(12)n2Γ(n2)=(aπ)nΓ(n2+1)

雪崩れるように消えてゆく感じがなんとも言えぬ爽快感を感じさせますね。

本日は以上です。読んでいただきありがとうございました。

投稿日:20201118
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 問題設定
  2. n次元極座標変換
  3. 重積分における置換積分
  4. あとは計算