概要
本稿では,距離空間における集積点,閉集合,閉包の概念についてまとめる.
以下,を距離空間とし,に対してと定める.また,をの部分集合とする.
集積点
集積点
がの集積点であるとは,任意のに対してが成り立つことをいう.
集積点の定義は「はの元を用いていくらでも近似できる」ということを意味している.これを点列の言葉で置き換えたのが次の命題である.
集積点の点列による特徴づけ
次の2条件は同値である.
- はの集積点である.
- ()かつを満たす点列が存在する.
を示そう.をの集積点とする.このとき,各に対してであるから,その元を1つ選んでとおく.すると,点列は定義より()を満たす.さらに,任意のに対してとなるようなをとれば,のときが成り立つからである.以上よりが従う.
を示そう.点列を()かつを満たすものとする.このとき,任意のに対してならばとなるようなが存在し,特にである.従って,はの集積点であり,が成り立つ.
次の2条件について,は成り立つがは成り立たない.
- はの集積点である.
- ()かつを満たす点列が存在する.
は命題1のからわかる.の反例を挙げよう.
,とし,点列を()により定める.このとき,点列は()かつを満たすが,はの集積点ではない.実際,である.
閉集合
閉集合は集積点の概念を用いて定義できる.
閉集合
がの閉集合であるとは,の任意の集積点がに属することをいう.
閉集合の定義もやはり点列の言葉で言い換えることができる.
閉集合の点列による特徴づけ
次の2条件は同値である.
- はの閉集合である.
- 点列が()かつを満たすならばである.
を示そう.をの閉集合とし, 点列が()かつを満たすとする.なるが存在するとき,点列の満たす条件よりである.また,すべてのに対してが成り立つとき,点列は()かつを満たすから,命題1よりはの集積点である.よって,はの閉集合であるからである.以上よりが従う.
を示そう.をの集積点とすると,命題1より()かつを満たす点列が存在する.従って,2よりとなるから,が成り立つ.
閉包
閉包
任意のに対してを満たすような全体の集合をの閉包といい,と書く.
であることを示そう.のとき,任意のに対してゆえが成り立つ.よってである.
が閉集合であることを示そう.をの集積点とし,とする.このときであるから,その元を1つ選んでとする.さらに,よりであるから,その元を1つ選んでとする.するとゆえである.よってであるから,閉集合の定義よりは閉集合である.
の最小性を示そう.をを含む閉集合とし,とする.このとき,任意のに対してかつが成り立つからである.そこで,各に対しての元を1つ選びとおくと,点列は()かつを満たす.は閉集合であるから,命題2よりである.ゆえにである.
次の命題は,閉包がもとの集合に集積点を付け加えたものであることを示している.
であることを示そう.命題3よりである.とすると,任意のに対してが成り立つから,である.すなわちである.よってが成り立つ.
であることを示そう.とすると,任意のに対してが成り立つからである.よってである.
この事実から,閉包を用いて閉集合を特徴づけられることがわかる.
の集積点全体の集合をとする.
1を仮定すると,であるから,命題4より2が得られる.
2を仮定すると,命題4よりである.従ってであるから1が得られる.