以下はとする。
楕円函数
定義 上有理型な函数が 楕円函数 (Elliptic Function)とは、二つの周期
を持つことをいう。を半周期といい、についてと表す。その全体をと置く。
楕円函数が与えられたとき、点で与えられる平行四辺形の領域をとする。このときの境界上にはの零点や極が無いものとする。
命題 定数でない楕円函数について以下が成り立つ。
- 内部におけるの極は有限個である。
- 内部におけるの零点は有限個である。
- 内部における留数の和はゼロである。
- は上で正則でない。
(証明)は有界閉なので、もしの極が内部に無限個存在すれば集積点を持つ。これはが有理型であることに反する。零点の場合もの零点はの極であり、が楕円函数であることから従う。
留数定理より
となるが、周期性より積分の1番目と3番目、2番目と4番目が打ち消しあうのでゼロとなる。
が上で正則なら上で連続なので有界である。周期性より上で有界なのでLiouvilleの定理よりは定数となる。
注意 を定数でない楕円函数とする。任意のに対して、もまた楕円函数である。ここで必要ならを少しずらすことで内部にの零点が全て含まれるようにできる。このとき同様に有限個であることが分かるため、この意味での点もまた内部で有限個である。
命題 を定数でない楕円函数とする。内部における極と零点の重複込みの個数は一致し、一般に点の重複込みの個数も一致する。更に内部における零点を重複込みでとし、極を重複込みでとすると、
が成り立つ。
(証明)偏角の原理を思い出す。がで位ならと表せる。(はで正則でを満たす。)このとき
となるが、はで正則なのでをまわりの円周として
となる。従って零点が個、極が個なら
となり一致する。(は楕円函数であり、最後の等式はその周期性より従う。)
同様に
だから
となる。ここでが線分上を動くとき、周期性よりは原点周りを何週かしてに戻ってくる。の積分はなので、その回数分が現れる。結局
となる。
定義 楕円函数について、内の極の重複込みの個数をの位数と呼ぶ。
位数ゼロの楕円函数は定数である。また留数の和がゼロという性質から、定数でない楕円函数の位数は以上となる。位数の楕円函数を考えると、次のパターンがある。
- 箇所に位の極を持ち、留数はゼロである。
- 箇所に位の極を持ち、留数は互いに逆である。
Weierstrassの函数
函数を以下で定める。
ただしはゼロを除く和とする。これは収束していて上有理型となる。内部の極はのみで、位数は、留数はゼロである。
定義 を Wierstrassの(ペー)函数 という。
とするとに対しての項だけが残り
だから函数は概ねのようなものである。
函数の微分は、項別微分して
と分かる。
命題 函数に対して以下が成り立つ。
(証明)について
よりは奇函数である。同様には偶関数である。
まずについて
より楕円函数である。従って積分すると
となるが、と置けば偶関数より定数部分はゼロとなる。故にも楕円函数である。
命題 は
の解である。ただし
とする。
(証明)は原点で正則な偶関数であるからと表せる。すると
よりとなる。頑張って計算すると
となる。左辺は楕円函数なので右辺も楕円函数だから定数となる。あとは係数を計算すると
より目的の微分方程式を満たすことが分かる。
ちなみに
と順次によって求めていくことができる。具体的には函数はとによって決まる。
注意 逆にが解ならよりだからとなる。よってを得る。従って一般解はである。
注意 を更に微分するとだから
を得る。特にはパンルヴェI()のにおける自励極限であることが分かる。