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Weierstrassの$\wp$函数ショートコース(1)

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以下$\omega_{1}, \omega_{2}\in\mathbb{C}$$\mathrm{Im}(\omega_{1}/\omega_{2})\gt 0$とする。

楕円函数

定義 $\mathbb{C}$上有理型な函数$f$楕円函数 (Elliptic Function)とは、二つの周期

$$ \begin{aligned} f(z+2\omega_{1}) &=f(z), \\ f(z+2\omega_{2}) &=f(z) \end{aligned} $$

を持つことをいう。$\omega_{1}, \omega_{2}$を半周期といい、$m, n\in\mathbb{Z}$について$\Omega_{m,n}=2m\omega_{1}+2n\omega_{2}$と表す。その全体を$\Omega$と置く。

  • 定数は楕円函数である。

楕円函数$f$が与えられたとき、点$t, t+2\omega_{1}, t+2\omega_{1}+2\omega_{2}, t+2\omega_{2}$で与えられる平行四辺形の領域を$\Delta$とする。このとき$\Delta$の境界$C$上には$f$の零点や極が無いものとする。

命題 定数でない楕円函数$f$について以下が成り立つ。

  • $\Delta$内部における$f$の極は有限個である。
  • $\Delta$内部における$f$の零点は有限個である。
  • $\Delta$内部における留数の和はゼロである。
  • $f$$\Delta$上で正則でない。

(証明)$\overline{\Delta}$は有界閉なので、もし$f$の極が$\Delta$内部に無限個存在すれば集積点を持つ。これは$f$が有理型であることに反する。零点の場合も$f$の零点は$1/f$の極であり、$1/f$が楕円函数であることから従う。

留数定理より

$$ \begin{aligned} \sum_{a\in\Delta}\mathrm{Res}_{z=a}f(z) &=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\oint_{C}f(\zeta)\mathrm{d}\zeta \\ &=\left( \int_{t}^{t+2\omega_{1}}+\int_{t+2\omega_{1}}^{t+2\omega_{1}+2\omega_{2}}+\int_{t+2\omega_{1}+2\omega_{2}}^{t+2\omega_{2}}+\int_{t+2\omega_{2}}^{t} \right)f(\zeta)\mathrm{d}\zeta \end{aligned} $$

となるが、周期性より積分の1番目と3番目、2番目と4番目が打ち消しあうのでゼロとなる。

$f$$\Delta$上で正則なら$\overline{\Delta}$上で連続なので有界である。周期性より$\mathbb{C}$上で有界なのでLiouvilleの定理より$f$は定数となる。$\square$

注意 $f$を定数でない楕円函数とする。任意の$c\in\mathbb{C}$に対して、$f-c$もまた楕円函数である。ここで必要なら$\Delta$を少しずらすことで$\Delta$内部に$f-c$の零点が全て含まれるようにできる。このとき同様に有限個であることが分かるため、この意味で$f$$c$点もまた$\Delta$内部で有限個である。

命題 $f$を定数でない楕円函数とする。$\Delta$内部における極と零点の重複込みの個数は一致し、一般に$c$点の重複込みの個数も一致する。更に$\Delta$内部における零点を重複込みで$a_{1}, \dotsc, a_{n}$とし、極を重複込みで$b_{1}, \dotsc, b_{n}$とすると、

$$ \sum_{i=1}^{n}a_{i}\equiv\sum_{i=1}^{n}b_{i} \mod{\Omega} $$

が成り立つ。

(証明)偏角の原理を思い出す。$f$$a$$k$位なら$f(z)=(z-a)^{k}g(z)$と表せる。($g$$a$で正則で$g(a)\neq 0$を満たす。)このとき

$$ \frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}=\frac{k}{z-a}+\frac{g^{\prime}(z)}{g(z)} $$

となるが、$g^{\prime}(z)/g(z)$$a$で正則なので$C_{a}$$a$まわりの円周として

$$ k=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\oint_{C_{a}}\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}\mathrm{d}z $$

となる。従って零点が$N$個、極が$M$個なら

$$ N-M=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\oint_{C}\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}\mathrm{d}z=0 $$

となり一致する。($f^{\prime}/f$は楕円函数であり、最後の等式はその周期性より従う。)

同様に

$$ z\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}=(a+(z-a))\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}=\frac{ak}{z-a}+\mathrm{hol.} $$

だから

$$ \begin{aligned} \sum_{i=1}^{n}a_{i}-\sum_{i=1}^{n}b_{i} &=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\oint_{C}z\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}\mathrm{d}z \\ &=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\left\lbrace \int_{t}^{t+2\omega_{1}}+\int_{t+2\omega_{1}}^{t+2\omega_{1}+2\omega_{2}}+\int_{t+2\omega_{1}+2\omega_{2}}^{t+2\omega_{2}}+\int_{t+2\omega_{2}}^{t} \right\rbrace z\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}\mathrm{d}z \\ &=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\left\lbrace 2\omega_{1}\int_{t}^{t+2\omega_{2}}-2\omega_{2}\int_{t}^{t+2\omega_{1}} \right\rbrace\frac{f^{\prime}(z)}{f(z)}\mathrm{d}z \end{aligned} $$

となる。ここで$z$が線分$\lbrack t, t+2\omega_{i} \rbrack$上を動くとき、周期性より$f(z)$は原点周りを何週かして$f(t)$に戻ってくる。$f^{\prime}/f$の積分は$\mathrm{log}f$なので、その回数分$2\pi\sqrt{-1}$が現れる。結局

$$ \sum_{i=1}^{n}a_{i}-\sum_{i=1}^{n}b_{i}=2m\omega_{1}+2n\omega_{2}=\Omega_{m,n}\in\Omega $$

となる。$\square$

定義 楕円函数$f$について、$\Delta$内の極の重複込みの個数を$f$の位数と呼ぶ。

位数ゼロの楕円函数は定数である。また留数の和がゼロという性質から、定数でない楕円函数の位数は$2$以上となる。位数$2$の楕円函数を考えると、次のパターンがある。

  • $1$箇所に$2$位の極を持ち、留数はゼロである。$\rightarrow \wp(z)$
  • $2$箇所に$1$位の極を持ち、留数は互いに逆である。$\rightarrow \mathrm{sn}(z)$

Weierstrassの$\wp$函数

函数$\wp(z)$を以下で定める。

$$ \wp(z):=\frac{1}{z^{2}}+\sum_{\omega\in\Omega}^{\prime}\left( \frac{1}{(z-\omega)^{2}}-\frac{1}{\omega^{2}} \right) $$

ただし$\sum^{\prime}$はゼロを除く和とする。これは収束していて$\mathbb{C}$上有理型となる。$\Delta$内部の極は$z\equiv 0$のみで、位数は$2$、留数はゼロである。

定義 $\wp(z)$Wierstrassの$\wp$(ペー)函数 という。

$\omega_{1}=\pi/2, \omega_{2}\rightarrow\infty$とすると$\omega=2m\omega_{1}+2n\omega_{2}$に対して$n=0$の項だけが残り

$$ \frac{1}{z^{2}}+\sum_{m}^{\prime}\left( \frac{1}{(z-\pi m)^{2}}-\frac{1}{(\pi z)^{2}} \right)=\sum_{m=-\infty}^{\infty}\frac{1}{(z-\pi m)^{2}}-\frac{2}{\pi^{2}}\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{m^{2}}=\frac{1}{\mathrm{sin}^{2}z}-\frac{1}{3} $$

だから$\wp$函数は概ね$\mathrm{cosec}^{2}(z)$のようなものである。

$\wp$函数の微分は、項別微分して

$$ \wp^{\prime}(z)=-2\sum_{\omega}\frac{1}{(z-\omega)^{3}} $$

と分かる。

命題 $\wp$函数に対して以下が成り立つ。

  • $\wp^{\prime}(z)$は奇函数、$\wp(z)$は偶函数である。
  • $\wp^{\prime}(z), \wp(z)$は共に楕円函数である。

(証明)$\wp^{\prime}(z)$について

$$ \wp^{\prime}(-z)=-2\sum\frac{1}{(-z-\omega)^{3}}=2\sum\frac{1}{(z-(-\omega))^{3}}=-\wp^{\prime}(z) $$

より$\wp^{\prime}(z)$は奇函数である。同様に$\wp(z)$は偶関数である。

まず$wp^{\prime}(z)$について

$$ \wp^{\prime}(z+2\omega_{1})=-2\sum\frac{1}{(z+2\omega_{1}-\Omega_{m,n})^{3}}=-2\sum\frac{1}{(z-\Omega_{m-1,n})^{3}}=\wp^{\prime}(z) $$

より楕円函数である。従って積分すると

$$ \wp(z+2\omega_{1})=\wp(z)+\mathrm{const.} $$

となるが、$z=-\omega_{1}$と置けば偶関数より定数部分はゼロとなる。故に$\wp(z)$も楕円函数である。$\square$

命題 $\wp(z)$

$$ \left( \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}z} \right)^{2}=4y^{3}-g_{2}y-g_{3} $$

の解である。ただし

$$ \begin{aligned} g_{2}&=60\sum^{\prime}\frac{1}{\omega^{4}}, & g_{3}&=140\sum^{\prime}\frac{1}{\omega^{6}} \end{aligned} $$

とする。

(証明)$\phi(z)=\wp(z)-1/z^{2}$は原点で正則な偶関数であるから$\phi(z)=a_{0}+a_{2}z^{2}+a_{4}z^{4}+\dotsb$と表せる。すると

$$ a_{0}=\phi(0)=\sum^{\prime}\left( \frac{1}{(-\omega)^{2}}-\frac{1}{\omega^{2}} \right)=0 $$

より$\wp(z)=z^{-2}+a_{2}z^{2}+a_{4}z^{4}+\dotsb$となる。頑張って計算すると

$$ \wp^{\prime}(z)^{2}-4\wp(z)^{3}+20a_{2}\wp(z)=-28a_{4}+\mathrm{higher.} $$

となる。左辺は楕円函数なので右辺も楕円函数だから定数となる。あとは係数を計算すると

$$ \begin{aligned} a_{2}=\frac{\phi^{(2)}(0)}{2!}&=3\sum^{\prime}\frac{1}{\omega^{4}}, & a_{4} &=5\sum^{\prime}\frac{1}{\omega^{6}}, & \dotsc & \end{aligned} $$

より目的の微分方程式を満たすことが分かる。$\square$

ちなみに

$$ \begin{aligned} a_{2}&=\frac{g_{2}}{20}, & a_{4}&=\frac{g_{3}}{28}, & a_{6}&=\frac{g_{2}^{2}}{1200}, & a_{8}&=\frac{3g_{2}g_{3}}{6160}, & a_{10}&=\frac{g_{2}^{3}}{156000}+\frac{g_{3}^{2}}{10192}, & a_{12}&=\frac{g_{2}^{2}g_{3}}{184800}, & \dotsc & \end{aligned} $$

と順次$g_{2}, g_{3}$によって求めていくことができる。具体的には$\wp$函数は$g_{2}$$g_{3}$によって決まる。

注意 逆に$y=\wp(u(z))$が解なら$(\wp^{\prime})^{2}\dot{u}^{2}=4\wp^{3}-g_{2}\wp-g_{3}=(\wp^{\prime})^{2}$より$\dot{u}^{2}=1$だから$u=\pm z+\alpha$となる。よって$y=\wp(\pm z+\alpha)=\wp(z\pm\alpha)$を得る。従って一般解は$\wp(z+\alpha)$である。

注意 $(\wp^{\prime})^{2}=4\wp^{3}-g_{2}\wp-g_{3}$を更に微分すると$2\wp^{\prime}\wp^{(2)}=12\wp^{2}\wp^{\prime}-g_{2}\wp^{\prime}$だから

$$ \begin{aligned} \wp^{(2)}&=6\wp^{2}-\frac{g_{2}}{2}, & \wp^{(3)}&=12\wp\wp^{\prime} \end{aligned} $$

を得る。特に$\wp$はパンルヴェI($y^{(2)}=6y^{2}+t$)の$t\rightarrow -g_{2}/2$における自励極限であることが分かる。

投稿日:20201119

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