この記事
で登場したを別の方法で求められないか,というのが今回の記事の主旨です.
記号の定義と重要な定理をもう一度書いておきます.
を微分を用いずに計算することが今回の目標になります.求めるにあたり,次の関数を定義します.
各関数の微分での計算規則は次の通りです.
この計算規則から,となる関数の存在が予想されます.
について考えてみましょう.
となり,関数のに関する漸化式ができました.初項を考えると,
よりとわかります.よってを求めるためには,漸化式
の一般項を求めればよいとわかります.解法は見当もつかないので,具体的に計算して一般項を予想します.簡単のためとしています.
まで頑張って計算すると
となります.だんだん規則性が見えてきましたね.
は次のような式であると予想できます.
のときでこれを数学的帰納法で証明していきます.と言っても,そのまま証明しようとすると計算がきついので少し工夫します.
そのための準備として次の二つの補題を示しておきます.
数学的帰納法で証明する.
のときはより成り立つ.のとき成り立つと仮定すると,が成り立つ.
であるから,右辺第2項ではとなりとなる.
右辺第1項の微分では,(計算規則によると)であるようなに対して,をに掛けて総和をとるという操作を行っているため,となり
となる.以上よりのときでも成り立つ.
補題3と補題4から,によって定まる関数を用いてと書けます.ここで,です.以降では断りなくと書く場合はこのような集合を表すものとします.
予想を証明するためには,であることが言えれば良いということになります.そこで公式1を用いてについて考えると,次の漸化式を得ます.
予想の証明
この漸化式の一般項がであることを数学的帰納法で証明する.
のとき,より成り立つ.
のときに成り立つと仮定すると,
- のとき
から,となる.よって
となり成り立つ. - のときとおいて
ここでであるから
となり成り立つ.
記号を混同しやすいので気を付けてください.
以上より,であることを示せた.
ついに証明ができました.これによって,
となり,
となって
となります.を代入して
となり,目標を達成することができました.
この式から面白いことが分かります.
かなり驚異的な結果だと思います.
終わりに
実際に定理6の式を使おうとすると分かりますが,この式はの分割の仕方を書き出してから行うので,計算量はの大きさに強く依存します.
そこで,計算量を減らすことができる次の定理を紹介します.
証明は
こちら
の記事で詳しく書いてあるのでここでは省略します.
この定理を使えば,とで小さいほうを選んで計算すればいいことになります.
ここまで読んでいただきありがとうございました.