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【指摘】今日の数学1(記事番号791)に対する指摘

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$$\newcommand{a}[0]{a} \newcommand{A}[0]{A} \newcommand{and}[0]{\wedge} \newcommand{b}[0]{b} \newcommand{B}[0]{B} \newcommand{c}[0]{c} \newcommand{C}[0]{C} \newcommand{coloneqq}[0]{\colon=} \newcommand{colonLonglrarrow}[0]{\colon\Longleftrightarrow} \newcommand{compop}[1]{{#1}^{\mathsf{c}}} \newcommand{d}[0]{d} \newcommand{D}[0]{D} \newcommand{imply}[0]{\Longrightarrow} \newcommand{M}[0]{M} \newcommand{or}[0]{\vee} \newcommand{P}[0]{P} \newcommand{set}[2]{\{{#1}\mid{#2}\}} \newcommand{v}[0]{v} \newcommand{V}[0]{V} \newcommand{w}[0]{w} \newcommand{W}[0]{W} \newcommand{x}[0]{x} \newcommand{X}[0]{X} \newcommand{y}[0]{y} \newcommand{Y}[0]{Y} \newcommand{z}[0]{z} \newcommand{Z}[0]{Z} $$

以下では 今日の数学1 に対して,一般的な記法に基づいた訂正と,その解説を行います.比較検討を容易にするため,基本的には元記事を引用したうえで直後に訂正を述べるスタイルを取ります.訂正した部分についてはその理由を注で述べます.また,内容が基本的なものであるため,証明は丁寧に書くよう心掛けました.

&&&thm 二重否定律p.4(1)
$P:命題$
$≡:論理学的同値$
$とする.このとき¬(¬P)≡Pが成立する.$

&&&thm 訂正版:二重否定律
$P$を命題とし,$≡$を論理学的同値とする.このとき$\neg(\neg\P)\equiv\P$が成立する.

  • 本質的には何も変わっていませんが,最後の証明を大幅に書き換えた都合で全体の整合性を取る為に改行やインデントなどの調整を行いました.
  • 以下ではこのような数学的でない若干の調整については特に断らないこととします.

&&&def 和集合(p.6)
$A,B:集合$
$とする.$
$$ A∪B:=\{x|∃x∈A∨∃x∈B\} $$
$と定義し,これをAとBとの和集合という.すなわち$
$$ a∈A∪B:\Longleftrightarrow (a∈A)∨(a∈B) $$
を決める.

&&&def 訂正版:和集合
$A$$B$を集合とする.このとき
$$A\cup B\colon=\set{x}{\x\in\A\or\x\in\B}$$
と定義し,これを$A$$B$との和集合という.すなわち形式的には
$$\a\in\A\cup\B\colon\Longleftrightarrow (\a\in\A)\vee(\a\in\B)$$
と定義する.

  • $A\cup B\colon=\set{x}{\exists\x\in\A\or\exists\x\in\B}$」の「$\exists\x\in\A\or\exists\x\in\B$」について
    • これは標準的な記法ではありません.標準的な論理式の定義を用いるのであれば$\exists\x\in\A$は論理式ではありません(あるいは好意的に解釈すると$\exists\x[\x\in\A]$となりますが,これは$A$が空でないという論理式であり,文脈にそぐわないでしょう).論理式の定義を変更するのであれば,その旨を述べるべきだと考えます.
  • $A\cup B\colon=\set{x}{\exists\x\in\A\or\exists\x\in\B}$」について
    • まず集合の内包的記法は,集合$X$を一つの自由変数を持つ開論理式$\Phi(x)$を用いて$X=\set{x}{\Phi(x)}$と表示するものということに注意します.この表記は,集合論の言語にない表示方法ですから何らかの略記と考えてよく,実際,正式には閉論理式$\forall\x[\x\in\X\Leftrightarrow\Phi(x)]$の略記として定義するのが標準的です.
    • よって個体定項$a$について,一つの自由変数を持つ開論理式$x\in\X$に$a$を代入して得られる論理式$\a\in\X$と,一つの自由変数を持つ開論理式$\Phi(x)$に$a$を代入して得られる論理式$\Phi(a)$とは同値です.
    • この二つに注意すると,仮に$A\cup B\colon=\set{x}{\exists\x\in\A\or\exists\x\in\B}$と定義するならば,$a$を個体定項とするときに定まる二つの論理式$a\in\A\cup\B$と$\exists\a\in\A\or\exists\a\in\B$とが同値になるような集合として$A\cup\B$を定義することになりますが,これは個体定項が存在量化子に束縛されている時点でおかしいです.よって内包的記法を標準的でないものを採用するか,論理式の定義そのものを標準的でないものを採用する必要があります.いずれにせよそれらは言及するべきだと考えます.
  • 論理学的同値を$\equiv$で書くのであれば$\colon\equiv$を使うべきだと思いますが,記法の問題に過ぎないため元記事の記法に従いました.

&&&def 共通部分(p.6)
$和集合と同様の条件下で$
$$ A∩B:=\{x|∃x∈A∧∃x∈B\} $$
$を定義する.これをAとBとの共通部分という.すなわち$
$$ a∈A∩B:\Longleftrightarrow (a∈A)∧(a∈B) $$
と定める.

&&&def 訂正版:共通部分
$A$$B$を集合とする.このとき
$$\A\cap B\colon=\set{x}{\x\in\A\and\x\in\B}$$
と定義し,これを$A$$B$との共通部分という.すなわち形式的には
$$\a\in\A\cap\B\colon\Longleftrightarrow (\a\in\A)\and(\a\in\B)$$
と定める.

  • $A\cap B\colon=\set{x}{\exists\x\in\A\and\exists\x\in\B}$」の「$\exists\x\in\A\and\exists\x\in\B$」について
    • これは標準的な記法ではありません.標準的な論理式の定義を用いるのであれば$\exists\x\in\A$は論理式ではありません(あるいは好意的に解釈すると$\exists\x[\x\in\A]$となりますが,これは$A$が空でないという論理式であり,文脈にそぐわないでしょう).論理式の定義を変更するのであれば,その旨を述べるべきだと考えます.
  • $A\cap B\colon=\set{x}{\exists\x\in\A\and\exists\x\in\B}$」について
    • まず集合の内包的記法は,集合$X$を一つの自由変数を持つ開論理式$\Phi(x)$を用いて$X=\set{x}{\Phi(x)}$と表示するものということに注意します.この表記は,集合論の言語にない表示方法ですから何らかの略記と考えてよく,実際,正式には閉論理式$\forall\x[\x\in\X\Leftrightarrow\Phi(x)]$の略記として定義するのが標準的です.
    • よって個体定項$a$について,一つの自由変数を持つ開論理式$x\in\X$に$a$を代入して得られる論理式$\a\in\X$と,一つの自由変数を持つ開論理式$\Phi(x)$に$a$を代入して得られる論理式$\Phi(a)$とは同値です.
    • この二つに注意すると,仮に$A\cap B\colon=\set{x}{\exists\x\in\A\and\exists\x\in\B}$と定義するならば,$a$を個体定項とするときに定まる二つの論理式$a\in\A\cap\B$と$\exists\a\in\A\and\exists\a\in\B$とが同値になるような集合として$A\cap\B$を定義することになりますが,これは個体定項が存在量化子に束縛されている時点でおかしいです.よって内包的記法を標準的でないものを採用するか,論理式の定義そのものを標準的でないものを採用する必要があります.いずれにせよそれらは言及するべきだと考えます.

&&&def 補集合((p.6))
$M:集合$
$A⊂M:Mの部分集合$
$とする.$
$$ A^c:=\{x∈M|∃x∈M∧∃x\notin A\} $$
$と定めるとき,A^cをMにおけるAの補集合という.また$
$$ a∈A^c: \Longleftrightarrow a\notin A:\Longleftrightarrow ¬(a∈A) $$
$と定義する.$

&&&def 訂正版:補集合
$M$を集合とし,$A$$M$の部分集合とする.このとき
$$\compop{A}\coloneqq\set{x\in\M}{\x\in\M\and\x\notin\A}$$
と定義し,$\compop{A}$$M$に於ける$A$の補集合という.すなわち形式的には
$$\a\in\compop{A}\colonLonglrarrow\neg(\a\in\A)\and\a\in\M$$
と定める.

  • $\compop{A}\coloneqq\set{x\in\M}{\exists\x\in\M\and\exists\x\notin\A}$と書かれていましたが,これは標準的ではありません.繰り返しになるので詳細は省略します.
  • 補集合の定義として$\a\in\compop{A}\colonLonglrarrow\neg(\a\in\A)$は不適切です.実際,$A$に属さない集合全体を集めると,これは集合を為しません.

&&&def 差集合(p.6)
$M:集合$
$A,B⊂M:Mの部分集合$
$A^c:MにおけるAの補集合$
$とする.A,Bに対して$
$$ A-B:=A∩B^c $$
$と定義し,これをAとBとの差集合という.とくに$
$$ A^c:=M-A $$
と決める.

&&&def 訂正版:差集合
$M$を集合とし,$A$および$B$$M$の部分集合とする.このとき
$$\A-B\coloneqq\A\cap\compop{B}$$
と定義し,これを$A$$B$との差集合という.特に
$$\compop{A}=M-A$$
が成立する.

  • 些細なことであすが,既に記法を補集合を定義する際に約束しているのですから「$\compop{A}$$M$に於ける$A$の補集合」と断る必要はありません.
  • 「とくに$\compop{A}:=M-A$」という記述は,既に補集合の記法を定義しているのでおかしいです.これは示されるべき命題です.以下にこの証明を付けておきます.
    • 先ず$\compop{A}\subset\M$を示す.$\compop{A}$の元$a$を任意にとると,$\compop{A}$の定義より$\neg(a\in\A)\and\a\in\M$が成立する.よって$\a\in\M$が得られる.$\a$の取り方は任意であったから,$\forall\x[ x\in\compop{A}\Rightarrow\x\in\M ]$が得られる.よって$\compop{A}\subset\M$である.
    • 次に$S$を$M$の部分集合とするとき,$S\cap\M=S$であることを示す.
      • 先ず$S\cap\M\subset S$を示す.$S\cap\M$の元$a$を任意にとると,$ S\cap\M$の定義より$a\in S\and\a\in\M$が成立する.よって$a\in S$が得られる.$a$の取り方は任意であったから,$\forall\x[ x\in S\cap\M\Rightarrow\x\in S ]$が得られる.よって$S\cap\M\subset S$である.
      • 次に$S\cap\M\supset S$を示す.$S$の任意の元$a$を任意にとると,$S$が$M$の部分集合であることの定義から$\forall\x[ \x\in S\Rightarrow\x\in\M]$の成立が分かり,よって$a\in S\Rightarrow\a\in\M$が分かる.$a$は$S$の元なので$a\in S$が成立し,$a\in\M$が従う.よって$\a\in\M\and\a\in S$が得られた.$a$の取り方は任意であったから,$\forall\x[\x\in S\Rightarrow\x\in\M\and\x\in S]$が得られる.よって$S\cap\M\supset S$である.
      • 以上より$S\cap\M=S$が示された.
    • 以上の二つを合わせると,$\M\cap\compop{A}=\compop{A}\cap\M=\compop{A}$が分かるので,$M-A=\M\cap\compop{A}=\compop{A}$が示された.

&&&thm ド・モルガン(p.6(1))
$M:集合$
$A⊂M:Mの部分集合$
$A^c:MにおけるAの補集合$
とする.このとき
$$ (A^c)^c=A $$
が成立する.

$(証明)$
$$ ∀x(x∈(A^c)^c←→x∈A) $$
$を示したい.$
$(\rightarrow) ∀x(x∈(A^c)^c→x∈A)$
$そのためにA^cから元を適当に選び,これをa∈A^cとする.a∈(A^c)^cは$
$補集合の定義より(a\notin A)^cと書ける.これも補集合の定義から¬(a\notin A)$
$である.再び,補集合の定義から¬(¬(a∈A))である.ここで,定理$
$1(p.4)の二重否定律よりa∈Aを得る.それゆえ$
$$ a∈(A^c)^c→a∈A $$
$が成立する.そして,a∈A^cはA^cから適当に選んだので全称量化子に$
$係るxはaに制限される.すなわちx=aである.ゆえに$
$$ ∀x(x∈(A^c)^c→x∈A) $$
$が成り立つ.$
$(←) x∈A→x∈(A^c)^c$
$逆も補集合の定義と二重否定律を用いれば,先と全く同様に示される$
$ので,定理が示された.□$
$補足$
$a∈A^cを適当に選ぶとは$
$A^c⊂A^cより写像$
$$ ∃f:A^c→A^c;x↦f(x) (∀x∈A^c)\\ f(x):=x $$
$を定義し,その像集合f(A^c)⊂A^cに対して像f_i(x)∈f(A^c)を$
$$ f(A^c)=\{f_i(x)|∃x∈A^c,i=1,2,...\} $$
$適当(合理的・都合的)に選ぶことをいう.ゆえに,A^cの量は像の量に依存$
$するのでx=aが成り立ち,全称命題$
$$ ∀x(x∈(A^c)^c→x∈A) $$
が成立する.

&&&thm 訂正版:ド・モルガンの法則
$M$を集合とし,$A$$M$の部分集合とする.このとき$\compop{\compop{A}}=A$が成立する.

$\forall\x[\x\in\compop{\compop{A}}\Leftrightarrow\x\in\A]$を示す.

Step 1:$\forall\x(\x\in\compop{\compop{A}}\Rightarrow\x\in\A)$について,$\compop{\compop{A}}$の元$a$を任意にとる.このとき補集合の定義より
$$\neg(\a\in\compop{A})\and\a\in\M$$
が成立する.再び補集合の定義より
$$\neg(\neg(\a\in\A)\and\a\in\M)\and\a\in\M$$
が成立する.古典命題論理の基本的な性質を繰り返し用いることで,
$$(\neg\neg(\a\in\A)\or\neg(\a\in\M))\and\a\in\M$$
$$(\neg\neg(\a\in\A)\and\a\in\M)\or(\neg(\a\in\M)\and\a\in\M)$$
$$(\neg\neg(\a\in\A)\and\a\in\M)\or(\bot)$$
$$\neg\neg(\a\in\A)\and\a\in\M$$
$$\a\in\A\and\a\in\M$$
$$\a\in\A$$
を得る.ただしそれぞれの変形に於いて,古典命題論理に於けるde Morganの法則,分配法則,矛盾の定義,矛盾に関する規則,二重否定の除去,連言の除去を用いた.$a$の取り方は任意であったので,$\forall\x[x\in\compop{\compop{A}}\Rightarrow\x\in\A]$が分かり,よって部分集合の定義から$\compop{\compop{A}}\subset\A$が得られる.

Step 2:$\forall\x[\x\in\compop{\compop{A}}\Leftarrow\x\in\A]$について,$A$の元$a$を任意にとる.$A$$M$の部分集合であるから$\forall\x[\x\in\A\Rightarrow\x\in\M]$が成立するので$a\in\A\Rightarrow\a\in\M$が分かる.$a$の取り方より$a\in\A$が成立しているので$\a\in\M$が得られる.また二重否定導入により$\neg\neg(a\in\A)$が成立分かるので,
$$\neg\neg(\a\in\A)\and\a\in\M$$
が得られる.矛盾に関する規則より
$$(\neg\neg(\a\in\A)\and\a\in\M)\or(\bot)$$
$$(\neg\neg(\a\in\A)\and\a\in\M)\or(\neg(\a\in\M)\and\a\in\M)$$
が成立し,de Morganの法則より
$$(\neg\neg(\a\in\A)\or\neg(\a\in\M))\and\a\in\M$$
が得られる.よって補集合の定義を繰り返し用いれば
$$\neg(\a\in\compop{A})\and\a\in\M$$
$$\a\in\compop{\compop{A}}$$
が得られる.$a$の取り方は任意であったので,$\forall\x[x\in\compop{\compop{A}}\Leftarrow\x\in\A]$が分かり,よって部分集合の定義から$\compop{\compop{A}}\supset\A$が得られる.

Step 3:以上を纏めると

,Step 1およびStep 2より$\compop{\compop{A}}=\A$が得られた.

  • 証明は全体を通して意味が分かりません.
  • 先ず補足については次の通りです.
    • 「$\a\in\compop{A}$を適当に選ぶ」について
      • 「$\compop{A}$の元$a$を任意にとる」は通常は同じ意味です.
      • これは通常の意味であれば$a\in\compop{A}$という論理式が真であると仮定するという以上の意味はありません
      • 「無限集合だから取りつくすことはできない」のような心配は不要です.現代数学は厳密に無限集合を扱うために人間が扱える有限長の論理式を用いて形式化したのです.ここに「無限観」のような非数学的な思想が介入する余地はありません.
      • 「論理式を形だけ用いる」のではなく,せめて「熟達した専門家であれば容易に論理的公理と推論規則を用いた議論に還元できるような議論をし」なければ,それは現代数学としては認められないでしょう.
    • 「$A^c⊂A^c$より写像$∃f:A^c→A^c;x↦f(x) (∀x∈A^c)$,$f(x):=x$を定義し,」について
      • 「$∃f:A^c→A^c;x↦f(x) (∀x∈A^c)$,$f(x):=x$を定義し,」は通常の記法であれば明らかに記号の濫用です.
      • 通常は若干のテニヲハの違いはあるにせよ「$\exists f [ \text{$f$は$\compop{A}$から$\compop{A}$への写像であり,$f(x)=x$を満たす} ]$が成立する」と書くか,「写像$f\colon\compop{A}\rightarrow\compop{A}$であって$f(x)=x$を満たすものが存在する」と書くか,「写像$f\colon\compop{A}\rightarrow\compop{A}$を$f(x)\coloneqq\x$により定義する」と書きます.
    • 「像集合$f(A^c)⊂A^c$に対して像$f_i(x)∈f(A^c)$を$f(A^c)={f_i(x)|∃x∈A^c,i=1,2,...}$適当(合理的・都合的)に選ぶことをいう.」について
      • 意味不明です.日本語の文章を為していません.
      • 像集合という用語は一般的ではありません.写像$f$が与えられたとき,定義域の元$x$に対応して一意に決まっている終域の元$f(x)$は$f$の$x$に於ける値と呼ばれ,$f$の値全体の集合$\set{x}{\exists y\in\compop{A}[f(y)=x]}$を$f(\compop{A})$や$f[\compop{A}]$と書き,これを$f$の像といいます.
      • 「像$f_i(x)$」の$f_i$は何ですか??未定義語を突然用いられても困ります.
      • 「適当(合理的・都合的)に選ぶ」の意味が分かりません.恣意的に選ぶという意味だとしたら,それでは全ての元について考えられていません.
      • $f(A^c)={f_i(x)|∃x∈A^c,i=1,2,...}$という式は一般的な記法ではありませんし,好意的に解釈をしても理解できません.
        • 集合の内包的記法に於ける縦棒$\mid$の右側には自由変数を一つもつ開論理式を書き,左側には右側に書いた論理式に現れるただ一つの自由変項と同じ記号を書きます.
        • 好意的に解釈し,$f(\compop{A})=\set{y}{\exists i\in{1,2,\ldots}\exists\x∈A^c[y=f_i(x)]}$だとしましょう.こうだとしても$f(\compop{A})$の通常は全ての元が自然数で添え字づけられているとは限らないためおかしいです.
      • もしも「任意の集合が自然数で添え字づけられる」という体系で考えているのであれば,それは現代数学で一般的に用いられる体系と大きく異なります.その場合は矢張り公理系,推論規則,言語などははっきり明示して下さい.
    • 「ゆえに,$A^c$の量は像の量に依存するので$x=a$が成り立ち」について
      • 「$A^c$の量」が未定義のため理解できません.
      • 「像の量に依存」が未定義のため理解できません
      • 未定義語で書かれた文章を根拠にしているため「ので$x=a$が成り立ち」の部分は理解不能です.
  • 次に証明については次の通りです.
    • 「$a∈(A^c)^c$は補集合の定義より$(a\notin A)^c$と書ける.」について
      • 「$a\notin\A$」は論理式であって集合ではないので,「$(a\notin A)^c$」は意味不明です.正しくは$a\notin\compop{A}\and\a\in\M$(あるいは若干の議論を省略していると考えるにしても$a\notin\compop{A}$)でしょう.
    • 「$¬(a\notin A)$である.再び,補集合の定義から$¬(¬(a∈A))$である」は「補集合の定義から」ではなく「$\a\notin\A$の定義から」でしょう.
    • 「そして,$a∈A^c$は$A^c$から適当に選んだので全称量化子に係る$x$は$a$に制限される.すなわち$x=a$である.」は意味不明です.
      • 「$\a\in\compop{\compop{A}}\Rightarrow\a\in\A$」から「$\forall\x[x\in\compop{\compop{A}}\Rightarrow\x\in\A]$」を結論することは,$\forall$-導入と呼ばれる標準的な推論規則です.
      • 通常の論理体系を用いるのであればここで変に捏ね繰り回す必要はないです.もし$\forall$-導入を採用しないような論理体系を考えているのであれば,一般的ではないので公理系,推論規則,言語などははっきり明示して下さい.
    • 補集合の定義が誤っているため一見逆の証明が全く同様のように思われますが,厳密には同様ではありません.
投稿日:20201120

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