三角圏からアーベル圏を取り出す方法として有名なものに「
おもしろいのはstandardじゃない
三角圏の
三角圏の基本性質、
完全圏についての言及は自分好みのものなので、単に「heartがアーベル圏」を示すだけなら、一番最後の証明だけ読めば大丈夫です。
三角圏の完全部分圏についてのfolklore(後述の補題3)を教えてくださった某後輩に感謝
まず記事のタイトルにあまり見慣れない単語があると思うので、その定義から初めます。
三角圏
2番めの条件は割と強く、例えば
多分考えている人がいないことはないと思いますが、上の概念は文献で見たことがないので、本記事独自の用語です。
一方、完全圏がいつアーベル圏かどうかは簡単な特徴づけがあります。もしかしたらそんなに有名じゃないかもしれないけど、知っておくとすごく使えます。
完全圏
このような完全圏をアーベル完全圏と呼ぶことにする。
1ならば2は明らか。
2ならば1を示す。アーベル圏の定義にどれを採用するか問題があるが、多分一番有名な「coimageからimageへの自然な射が同型」を使うことにする。まずpre-abelianなことは、
任意に射
とすると、
よって
このとき仮定により
三角圏
完全部分圏の判定には、次の補題が便利です。
三角圏
を満たすならば、
この補題は次の論文のProposition 2.5で見つけた、たぶんfolkloreです。
P. Jorgensen, Abelian subcategories of triangulated categories induced by simple minded systems, arXiv:2010.11799
これはDyerのプレプリントの主結果でもあるようです:
M. Dyer, Exact subcategories of triangulated categories.
まず
このため、
の一部である。これを左に回して
が完全で
これが示されると、次の補題により主張が成り立つ。
三角圏
完全部分圏なら、明らかに完全圏の定義により後半が成り立つ。逆に後半が成り立つとすると、ごちゃごちゃ三角圏の八面体などを使えば完全圏の公理を満たすことが示される。詳しくは上のJorgensenの論文のProposition 2.5を参照のこと。
実はもっと短い証明ができますが、これについては気になる方は直接連絡をとってください。
では主定理の証明を見ましょう。
分かりやすくするため、
まず
また
最後に(ここが一番非自明ですが)、この完全圏構造がアーベル完全圏であることを示す。命題1(アーベル完全圏)により、任意の射をdeflationとinflationに分解すればよい。
任意に射
ネタバレを言うと、ここで取れた真ん中の可換図式による
いま三角
いま三角
以上のことより初め3つの項が
この2つのconflationと、上の図式の可換性により、
完全圏を知らない人でも、
上の証明の最後の二つの列は
よって、任意の
さらに、上の分解は、