この記事は筆者が通っていた公立中学にて,高校受験を控えた生徒たちに「定期テストは生徒を楽しませる行事」と考えている数学教員からプレゼントされた学年末試験の最終大問であり,配点は40点でした.
なお,この問題の元ネタは2003年,東大の後期入試問題「$\pi>3.05$を証明せよ」である.
図はMathlogがTik-Zに対応していないのでdesmos.comで作成しました。
URL:
https://www.desmos.com/calculator/3noexrakk6?lang=ja
$\pi>3.12$を証明せよ. (公立中学校3年学年末テスト最終大問)
任意の円に内接する正$12\cdot24$角形の外周が円周よりも小さいことは次の図1,2より明らかである.
ここで、円の半径$r$とすると,内接する正$24$角形の外周比$\frac{24\alpha r}{2r}$,を求めて円周率$\pi$と比較する。
尚,正$12$角形と正$24$角形の両方を図示したのは正$24$角形の一辺を求めるために正$12$角形が必要となるためである。
ここで,図3のように正$12$角形の一辺とその両端と外接円の中心を直線で構成された三角形を作り,補助線としてその三角形の外接円と外接円の中心,中心と頂点を結ぶ直線を描く.
(解りにくい場合は図1と図3を交互に表示させて見比べてほしいネ)
ここで,正十二角形の一辺の中心角が$30^\circ$であるため,円周角の定理より,赤色の三角形は正三角形であることは自明である.このことから,正$12$角形の一片の長さを$2a$とすると,次のように求められる.
$$r^2=\left(2+\sqrt{3}\right)^2a^2+a^2\ \ \therefore a=\frac{r}{\sqrt{\left(2+\sqrt{3}\right)^2+1}}=\frac{1}{2\sqrt{2+\sqrt3}}r$$この時点(正$12$角形)では,$$\frac{12\times2\frac{1}{2\sqrt{2+\sqrt3}}r}{2r}=\frac{6}{\sqrt{2+\sqrt3}}={}^{\dagger}3.10582854\cdots\fallingdotseq3.106<3.12$$より不十分である.
(この時点で元ネタである$\pi>3.05$は証明できている)
次に,正$24$角形の一片の長さを$b$として求める.
(解りにくい場合は図2と図3と図4を交互に表示させて見比べてほしいネ)
図4より,ピタゴラスの定理を用いると$$b^2=\left(r-\sqrt{r^2-a^2}\right)^2+a^2$$$$\begin{align*}\therefore b=&\sqrt{\left(r-\sqrt{r^2-a^2}\right)^2+a^2}\\=&\sqrt{\left(r-\sqrt{r^2-\left(\frac{1}{2\sqrt{2+\sqrt3}}r\right)^2}\right)^2+\left(\frac{1}{2\sqrt{2+\sqrt3}}r\right)^2}\\=&r\cdot\sqrt{\left(1-\sqrt{1-\left(\frac{1}{2\sqrt{2+\sqrt3}}\right)^2}\right)^2+\left(\frac{1}{2\sqrt{2+\sqrt3}}\right)^2}\\\vdots\ &\ \ \ \ \leftarrow{}^{\dagger}(\mbox{面倒なので省略するが,気になる方はぜひ計算してみて欲しいネ})\\=&\sqrt{2-\sqrt{2+\sqrt{3}}}\times r\end{align*}$$となる.
よって,正$24$角形の外周比は$$\frac{24\times\sqrt{2-\sqrt{2+\sqrt{3}}}\times r}{2r}=12\sqrt{2-\sqrt{2+\sqrt{3}}}={}^{\dagger}3.1326286\cdots>3.13>3.12$$$$\therefore\pi>\frac{24b}{2r}>3.13>3.12$$
これより証明終了.
$\dagger$:効率化のためWolframalphaを用いて算出した.