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閉包と導集合

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こんにちは.みるか( @mirucaaura )です.
タイトルをつけるのが難しいですね.今回は,悩んだことのメモとなります.早速ですが,次の命題について考えます.

(X,d)を距離空間とする.Xの部分集合Aに対して,AAの閉包,AdAの導集合とする.このとき,以下の等式が成り立つ:
A=AAd.

この命題を証明するにあたって,AAAdかつAAdAであることを示せばよいわけですが,AAAdを示すにあたって書籍[1]には次のように書かれていました.

AAAdを示すためには,Aの定義より,AAdが閉集合であることを示せばよい.

恥ずかしながら,この一行にかなりの時間を費やしてしまったので,備忘として本記事に残しておきたいと思った次第です.結論としては,以下の通りです:

Aの定義とは「Aを含む最小の閉集合」であるので,もし「AAdが閉集合であること」を示すことができれば,AAdAよりAAdは集合Aを含み,AAdも閉集合であることが言える.

Aの定義は「集合Aの触点全体の集合」とする立場もあると思いますが,書籍[1]では「Aを含む最小の閉集合」を定義としていました.

うーん...言われてみると確かにそうですね.ただ,自分でこの論法を思いつくのは厳しいかも.そして論理を追うのが自分だけでは厳しかった...教えてくださった方々ありがとうございました.

さて,本記事でAAdが閉集合であることを実際に示すことはしませんが,より自然な方法でAAAdを示しておきたいと思います.なお,以下では閉包の定義として補遺に示した定義を用いることに注意されたい.

AAAdであることを示すためには,任意のxAxAAdとなることを示せばよいです.

まず,xAのときはxAAdとなるので問題ありません.一方,xAのときは閉包の定義より,xAの触点全体の集合に含まれるので.任意のε>0に対して,
B(x,ε)(A{x})=B(x,ε)A
が成り立ちます.一つ目の等号が成り立つのは,いまxAより,集合Aは点xを含まないので,A{x}=Aが成り立つからです.集積点の定義より,点xAの集積点であり,xAdAAdとなります.

以上より,任意のxAに対してxAAdであることが示されたので,AAAdとなります.

Reference

補遺

「導集合」や「閉包」や「集積点」などと言った用語が出てきたので定義をまとめておきます.以下では,距離空間(X.d)の部分集合AXについて考えます.一般の位相空間にも拡張できる話ではあると思いますが,距離空間ということにしておきます.

触点

Xの点xに対して,
B(x,ε)A(ε>0)
が成り立つとき,点xAの触点という.ここで,B(x,ε)は点xを中心とした半径ε>0の開球であり,次のように定義される:
B(x,ε):={yXd(x,y)<ε}.

閉包

集合Aの触点全体の集合をAの閉包といい,Aと表す.

集積点

Xの点xが集合A{x}の触点であるとき,xAの集積点という.すなわち,点xX
B(x,ε)(A{x})(ε>0)
を満たすことをいう.

導集合

集合Aの集積点全体の集合をAの導集合といい,Adと表す.

投稿日:20201121
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みるか
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