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MZVの積分表示

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\displaystyle} \newcommand{f}[0]{<} \newcommand{l}[0]{\left(} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right)} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{tria}[0]{\tau\rho\iota\alpha} \newcommand{v}[0]{\varnothing} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} $$

はじめに

この記事はMZVの積分表示とその周辺についてできるだけわかりやすくまとめたものになります。つい最近知ったことを記事にしているので、間違いがあれば指摘していただけると嬉しいです。

本題

まずは簡単な$\z(1,2)$の積分表示を例にして考えてみます。

$ \begin{eqnarray*} &&\z(1,2)\\ &=&\sum_{0\f a\f b}\frac1{ab^2}\\ &=&\sum_{0\f a,b}\frac1{a(a+b)^2}\\ &=&\sum_{0\f a,b}\frac1{a(a+b)}\int_0^1t_1^{a+b-1}dt_1\\ &=&\sum_{0\f a,b}\frac1a\int_0^1\frac{dt_1}{t_1}\int_0^{t_1}t_2^{a+b-1}dt_2\\ &=&\sum_{a=1}^\infty\frac1a\int_0^1\frac{dt_1}{t_1}\int_0^{t_1}\sum_{b=1}^\infty t_2^{a+b-1}dt_2\\ &=&\sum_{a=1}^\infty\frac1a\int_0^1\frac{dt_1}{t_1}\int_0^{t_1}\frac{t_2^a}{1-t_2}dt_2\\ &=&\sum_{a=1}^\infty\int_0^1\frac{dt_1}{t_1}\int_0^{t_1}\frac{dt_2}{1-t_2}\int_0^{t_2}t_3^{a-1}dt_3\\ &=&\int_0^1\frac{dt_1}{t_1}\int_0^{t_1}\frac{dt_2}{1-t_2}\int_0^{t_2}\sum_{a=1}^\infty t_3^{a-1}dt_3\\ &=&\int_0^1\frac{dt_1}{t_1}\int_0^{t_1}\frac{dt_2}{1-t_2}\int_0^{t_2}\frac{dt_3}{1-t_3}\\ &=&\int_{0\f t_3\f t_2\f t_1\f 1}\frac{dt_1dt_2dt_3}{t_1(1-t_2)(1-t_3)} \end{eqnarray*} $

よって、$\d\z(1,2)=\int_{0\f t_3\f t_2\f t_1\f 1}\frac{dt_1dt_2dt_3}{t_1(1-t_2)(1-t_3)}~~~~~$がわかりました。

また、一般に、略記法で書くと

$\d\z(k_1,k_2,\ldots,k_n)=\int_0^1\underbrace{\frac{dt}t \circ\frac{dt}t\ldots\circ \frac{dt}t}_{k_n-1}\circ\frac{dt}{1-t}\circ\ldots\circ\underbrace{\frac{dt}t \circ\frac{dt}t\ldots\circ \frac{dt}t}_{k_2-1}\circ\frac{dt}{1-t}\circ\underbrace{\frac{dt}t \circ\frac{dt}t\ldots\circ \frac{dt}t}_{k_1-1}\circ\frac{dt}{1-t} $

が成立します。これの証明は省略させていただきます。

この積分表示の利点は私の知る限りでは2つあります。

  • 双対性定理

双対性定理とは、任意の許容インデックス$\textbf{k} $に対して$\zeta(\textbf{k})=\zeta(\textbf{k}^\dagger)$が成立するというものです。これがMZVの積分表示から証明できます。

例として$\z(1,2) $で考えてみましょう。

$ \begin{eqnarray*} &&\z(1,2)\\ &=&\int_{0\f t_3\f t_2\f t_1\f 1}\frac{dt_1dt_2dt_3}{t_1(1-t_2)(1-t_3)}\\ &=&\int_{0\f 1-x_1\f1-x_2\f1-x_3\f1}\frac{dx_1dx_2dx_3}{x_1x_2(1-x_3)}~~~~~~~~~~(x_3=1-t_1~~,~~x_2=1-t_2~~,~~x_1=1-t_3)\\ &=&\int_{0\f x_3\f x_2\f x_1\f1}\frac{dx_1dx_2dx_3}{x_1x_2(1-x_3)}\\ &=&\z(3)\\ \end{eqnarray*} $

より、$\z(1,2)=\z(3) $ が証明されました。このように、$x=1-t$と置換することにより双対性定理を証明することができます。

  • シャッフル積

シャッフル積とは、簡潔に言うと2つ以上のMZVの積分表示の積を分解するものです。言葉で説明するとかなり長くなるので実際に1つ例を挙げて考えてみます。ここでは$\z(2)^2 $を考えてみましょう。

$ \begin{eqnarray*} &&\z(2)^2\\ &=&\int_{0\f t_4\f t_3\f 1}\frac{dt_3dt_4}{t_3(1-t_4)}\int_{0\f t_2\f t_1\f 1}\frac{dt_1dt_2}{t_1(1-t_2)}\\ &=&\int_{\substack{0\f t_4\f t_3\f 1 \\ 0\f t_2\f t_1\f 1}}\frac{dt_1dt_2dt_3dt_4}{t_1(1-t_2)t_3(1-t_4)}\\ &=&\l\int_{0\f t_2\f t_4\f t_3\f t_1\f 1 }+\int_{0\f t_2\f t_4\f t_1\f t_3\f 1 }+\int_{0\f t_2\f t_1\f t_4\f t_3\f 1 }+\int_{0\f t_4\f t_2\f t_1\f t_3\f 1 }+\int_{0\f t_4\f t_2\f t_3\f t_1\f 1}+\int_{0\f t_4\f t_3\f t_2\f t_1\f 1 } \r\frac{dt_1dt_2dt_3dt_4}{t_1(1-t_2)t_3(1-t_4)}\\ &=&\z(1,3)+\z(1,3)+\z(2,2)+\z(1,3)+\z(1,3)+\z(2,2)\\ &=&4\z(1,3)+2\z(2,2) \end{eqnarray*} $

より、$\z(2)^2=4\z(1,3)+2\z(2,2) $がわかります。このように、シャッフル積は比較的強い結果を得ることができます。

おわりに

この記事ではMZVの積分表示と積分表示の利点2つについて簡単にまとめました。積分表示の利点は何もこれだけでなく他にもあるので、興味のある方は是非調べてみてください。

投稿日:20201121
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神鳥奈紗
神鳥奈紗
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遭難者です.高専1年です.MZV,級数,積分をメインにやっています.

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