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Daubeciesの局所化作用素とWeyl量子化の関係

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完全なる趣味であり誰得感が半端ないですが,個人的に面白いと思った計算を残します.未定義概念も多くかなり雑に書かれていますがご容赦願いたいです.

I. Daubeciesが1988年の論文でTime- Frequency Localization Operatorなるものを導入しました.今回の内容は,それを含む一般の局所化作用素(Localization Operator)とWeyl量子化(擬微分作用素の一種)の関係式を導くものです.

「『短時間フーリエ変換をベースにした時間周波数解析』と『擬微分作用素をベースにした超局所解析』がある意味でつながっている」という実感を自分なりに得ることができました.

関数空間の枠組を明示していませんが,例えば,現れる関数が全てSchwartz急減少関数の空間に属するとすれば以下の計算は正当化できる...はずです.なお,関数ϕ(y)(x,ξ)Rd×Rdに対しϕx,ξ(y)=eixξϕ(yx)と定めておきます.また,記号一つの積分範囲はRdとします.

 以下,常体となります.

定義など

ϕL2=ψL2=1とする.

短時間Fourier変換

短時間Fourier変換を以下で定める:
Vϕu(x,ξ):=(2π)d/2eiyξu(y)ϕ(yx)dy=F[u()ϕ(x)](ξ)=(2π)d/2(u,ϕx,ξ)L2.
共役短時間Fourier変換は次で定める:
VψF(x):=(2π)d/2ψy,η(x)F(y,η)dydη.
特にϕ=ψの場合はVψVϕ=Iとなる.

局所化作用素

Daubeciesの局所化作用素(localization operator)を次で定める:
Aaϕ,ψu(x):=(2π)d/2ψy,η(x)a(y,η)Vϕu(y,η)dydη=VψaVϕu(x).
これは短時間Fourier multiplierとも呼ばれる.また,ϕ(x)=ψ(x)=πd/4ex2/2ととった場合のDaubeciesの局所化作用素はAnti-Wick量子化と呼ばれる.

定義から直ちに次のことがわかる.

ϕ=ψとする.非負のシンボルa0に対応する局所化作用素Aaϕ,ϕは作用素として非負である.

uS(Rd)に対して
(Aaϕ,ϕu,u)L2(Rd)=(a,|Vϕu|2)L2(R2d)=a(x,ξ)|Vϕu(x,ξ)|2dxdξ0
であることから明らか.

Daubeciesの局所化作用素とWeyl量子化の関係

Daubecies局所化作用素の定義を
Aaϕ,ψu(x)=(2π)da(y,η)Py,ηu(x)dydη
と書き直す.このとき
Py,ηu(x)=(2π)d/2Vϕu(y,η)ψy,η(x)=ψy,η(x)ϕy,η(t)u(t)dt
なので,Py,ηは積分核Ky,η(x,t)=ψy,η(x)ϕy,η(t)を持つ積分作用素である.よって,適当なシンボルによるτ擬微分作用素として表現できる.ここではWeyl量子化による表現を考えることにし,Py,η=OpW(σy,η)なるシンボルσy,ηを求めよう.積分核とWeyl量子化のシンボルσy,ηを対応させる公式(導出は次項参照)を用いて,
σy,η(x,ξ)=(2π)d/2Ftξ[Ky,η(x+t2,xt2)]=eitξψy,η(x+t2)ϕy,η(xt2)dt=eit(ξη)ψ((xy)+t2)ϕ((xy)t2)dt=(2π)dW(ψ,ϕ)(xy,ξη)
と計算できる.最後の等式ではWigner分布
W(f,g)(x,ξ):=(2π)deitξf(x+t2)g(xt2)dt
を用いた表現にしている.

よって,Py,η
Py,ηu(x)=OpW(σy,η)u(x)=(2π)dei(xt)ξσy,η(x+t2,ξ)u(t)dtdξ
と表される.

以上をふまえて,Daubecies局所化作用素Aaϕ,ψ
Aaϕ,ψu(x)=(2π)da(y,η){(2π)dei(xt)ξσy,η(x+t2,ξ)u(t)dtdξ}dydη=(2π)dei(xt)ξ{(2π)da(y,η)σy,η(x+t2,ξ)dydη}u(t)dtdξ=(2π)dei(xt)ξb(x+t2,ξ)u(t)dtdξ
と表現される.ここでb
b(x,ξ)=(2π)da(y,η)σy,η(x,ξ)dydη=a(y,η)W(ϕ,ψ)(xy,ξη)dydη=(aW(ϕ,ψ))(x,ξ)
と計算される.以上の議論から,次の定理が得られる.

Daubeciesの局所化作用素Aaϕ,ψは,シンボルaW(ϕ,ψ)のWeyl量子化に等しい:
Aaϕ,ψ=OpW(aW(ϕ,ψ)).

後回しにした計算

σをシンボルとするτ擬微分作用素
Opτ(σ)u(x)=(2π)dei(xy)ξσ((1τ)x+τy,ξ)u(y)dydξ
は,
Kτ(x,y)=(2π)dei(xy)ξσ((1τ)x+τy,ξ)dξ
を積分核に持つ積分作用素とみることができる.この式はシンボルσから積分核を求める公式を与えている.逆に,積分核からシンボルを求めることができる.

次が成り立つ:
σ(x,ξ)=(2π)d/2Fyξ[Kτ(x+τy,x(1τ)y)].

ラフな計算

上記Kτの式により
Kτ(x+τy,x(1τ)y)=(2π)deiyξσ(x,ξ)dξ
が成り立つことからわかる.

参考文献

  • E. Cordero and L. Rodino. Short-time fourier transform analysis of localization operators. Frames and Operator Theory in Analysis and Signal Processing: AMS-SIAM Special Session, January 12-15, 2006, San Antonio, Texas, Vol. 451, p. 47, 2008.

  • Daubechies, Ingrid. "Time-frequency localization operators: a geometric phase space approach." IEEE Transactions on Information Theory 34.4 (1988): 605-612.

投稿日:20201121
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ky
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  1. 定義など
  2. Daubeciesの局所化作用素とWeyl量子化の関係
  3. 後回しにした計算
  4. 参考文献