4

グラフのラプラシアン固有値0の重複度と連結成分の関係

1167
0

はじめに

研究を進めるにあたり、グラフのラプラシアン固有値0の重複度と連結成分の関係について証明を考える機会がありました。
Mathlogで記事を書いてみたいという気持ちと、研究の過程で出会った定理について考えた記録を残したいという思いにより、この記事を作成しました。

ラプラシアン

n個の頂点を持つ単純グラフGを考えたとき,vi0in1)をグラフGの頂点とし,deg(vi)を頂点viの次数とする.

ここで, D=diag(deg(v1),deg(v2),,deg(vn))とし,AをグラフGの隣接行列とする. L=DAにより定義される行列Lラプラシアン行列という.
このとき,Lの要素は
Li,j={deg(vi)i=j1ij and vivjが隣接0otherwise1i,jn によって与えられる.

グラフGのラプラシアン固有値0の重複度は,連結成分の個数に等しい.

ラプラシアン固有値0の重複度をm0,グラフの連結成分をCl1lc)とする.
Cl1lc)に対応した値が全て1,その他の値が全て0というn次ベクトルxl=t[0,,0,1,,1Clに対応した部分,0,,0]1lcが線形独立な固有値0の固有ベクトルとして構成できるので,m0cである.x=t[x1,x2,,xn]をラプラシアン固有値0の固有ベクトルとすると,txLx=0 であるから,

0=txLx
=l=1cjClxj(Lx)j
=l=1c(jClDj,jxj2j,kClAj,kxjxk)L=DAより)
=l=1c(jClkClAj,kxj2j,kClAj,kxjxk)
=l=1cjClxjkClAj,k(xjxk)
=12l=1cj,kCl(xjAj,k(xjxk)+xkAk,j(xkxj))
=12l=1cj,kCl(xjAj,kxkAk,j)(xjxk)

ここで,Aj,k=Ak,j1j,kn)より,

=12l=1cj,kClAj,k(xjxk)2

である.

連結成分Cl1lc)上の任意の2頂点j,kCl1lc)は経路jp1p2pskp1,,psCl1lc))が存在して,Aj,p1=Ap1,p2==Aps,k=11lcである.
したがって,xj=xp1=xp2==xps=xkj,p1,,ps,kCl1lc))であるから,xがラプラシアン固有値0の固有ベクトルとなるとき,x=t[a1,,a1C1に対応した部分,a2,,a2C2に対応した部分,,ac,,acCcに対応した部分]alC1lcである.

よって,ラプラシアン固有値0の固有ベクトルxxl1lc)を用いてx=l=1calxlalC1lcである.
xl1lc)の線形結合として表せるから,cm0である.

よって,m0=cであるから,グラフGのラプラシアン固有値0の重複度は,連結成分の個数に等しい.

投稿日:20201121
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

ufo
ufo
4
1167
博士(理学)/組合せ論/離散数学

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中