こんにちは!ゆきたそといいます.現在高校一年生で,高校数学を主に勉強しています.今回が初投稿です.インパクトが弱いかもしれませんが,Mathlogにはあまり高校数学の解説がないなと思ったので,入試問題を紹介しようと思いました.
$n$が相異なる素数$p,q$の積,$n=pq$であるとき,$n-1$個の数$_n\mathrm{C}_k(1≦k≦n-1)$の最大公約数は$1$であることを示せ.(京都大)
一発目の問題はこれです!どうでしたか?解けましたか?抽象的な問題で,すぐにひらめくことは難しいと思います.まず,問題文の解釈から始めましょう.
$_n\mathrm{C}_k$がでるから二項定理かな?
互いに素⇒Euclidの互除法
まず,この二つが出ると思うのですが,これらは有効打にはなりません(実際に試してみるとわかると思います).なぜなら,調べる個数が多すぎるのと,具体的な値が出ていないからです.では,具体的な値とは何か?それはもちろん,
$$_n\mathrm{C}_1=n=pq$$
です.これの約数とは,$1$,$p$,$q$,$pq$の4つで,$1$以外は$p$または$q$の倍数になっていることを考えると,どれか一つでも$p$または$q$の倍数でないものがあることを示せばよい,ということが解ります.勘のいい方はここでピンとくるかもしれません.
ではここで実験です.
$p=2$,$q=3$の時を考えてみましょう.考えるべき$5$個の値とは,
$${6,15,20,15,6}$$
で,$2$の倍数でないものは$_6\mathrm{C}_2$,$3$の倍数でないものは$_6\mathrm{C}_3$です.
次に,$p=2$,$q=5$の時はどうでしょうか?
$$10,45,120,210,252,210,120,45,10$$
で,$2$の倍数でないものは$_{10}\mathrm{C}_2$,$5$の倍数でないものは$_{10}\mathrm{C}_5$です.
もういいですね,次のことを示せばよい,ということになります.
「$p,q$を相異なる素数とするとき,$_{pq}\mathrm{C}_p$は$p$の倍数ではない」
これを解答中で示せば,†証明完了†となります.
$p,q$に関しての対等性と,$_n\mathrm{C}_1=pq$の約数は$1,p,q,pq$であることから,次の命題を示せば証明は完了する.
$p,q$を相異なる素数とするとき,$_{pq}\mathrm{C}_p$は$p$の倍数ではない.
証明を以下に与える.
$${_{pq}\mathrm{C}_p=\frac{(pq)(pq-1)(pq-2)・・・(pq-p+1)}{p・(p-1)・・・2}}$$
の分子の()で囲まれた$p$個の数で$p$の倍数なのは$pq$のみで,かつ分母では$p$だけなので,結局,分母分子の素因数$p$は相殺される.従って,この数は$p$の倍数ではない.
従って,題意は示された.(終)
次の条件を満たす組$(x,y,z)$を考える.
条件(A):$x,y,z$は正の整数で,$x^2+y^2+z^2=xyz$および$x≦y≦z$を満たす.
いかの問いに答えよ.
$(1)\ \ $条件(A)を満たす組$(x,y,z)$で,$y≦3$となるものを全て求めよ.
$(2)\ \ $組$(a,b,c)$が条件(A)を満たすとする.このとき,組$(b,c,z)$が条件(A)を満たすような$z$が存在することを示せ.
$(3)\ \ $条件(A)を満たす組$(x,y,z)$は無限に存在することを示せ.(東京大)
二発目はこれです!見るからにボリューミー!この問題は,ほんとうに,すごいです.何がすごいというと,無限に存在するという,すごくすごい結果を受験生たちに証明させようとしていることです.
(3)だけ出ると難しいですが,(1),(2)という美しい誘導がついているおかげで,受験で出せるレベルまで難易度を下げています.完答できれば,差のつく良問です(一高校生が言うのははばかられますが).
無限に存在する,とはどう証明するのでしょう?(2)を見る限り数学的帰納法を使うのかな,と推測できます(事実,この問題の山場は(2)です).でも,このタイプの数学的帰納法には名前がついています.その名前とは,無限降下法です.
出典はわからないのですが,無限降下法の例として,こんなものがあります.
$a,b,c,d$を整数とし,$8a^4+b^4+4c^4+2d^4=2abcd$を満たすとする.
$(1)\ \ $$a,b,c,d$はすべて偶数であることを示せ.
$(2)\ \ $$a=b=c=0$を示せ.
(2)の解答のみ与えておきます.
まず,$a=2a',b=2b',c=2c',d=2d'(a',b',c',d' \in \mathbb{Z})$と表現できるので,与式に代入すると,
$${8a^4+b^4+4c^4+2d^4=2abcd \Longleftrightarrow8a^4+b'^4+4c'^4+2d'^4=2a'b'c'd'}$$
となる.ここで,$a,b,c,d$のいずれも$0$でないことを仮定すると,同様の操作を繰り返せば無限に絶対値が小さい偶数が存在することになり,矛盾する.従って題意は示された.(終)
こんな感じです.これが無限降下法の考え方で,Fermatの最終定理の$n=4$の場合の証明に用いられてるとかなんとか.
さて,問題の(2)に戻りましょう.まぁ,難しくないんですけどね.ただ単に$b^2+c^2$が二つの組で出現してるので,等式で結んで因数分解するだけです.大小性の議論が少し面倒くさいですが,できます(迫真)!
$(1)\ \ $条件式を$z$についての二次方程式とみれば,
$${z^2-xyz-(x^2+y^2)=0}$$
となり,$z$の実数条件を考えると,
$${x^2y^2-4(x^2+y^2) \geq0 \Longleftrightarrow x^2(y^2-4)\geq4y^2( \gt0)}$$
従って,$y\geq3$が必要条件であり,$y\leq3$を考えると$y=3$と定まる.
これを二番目の式に代入すると,$5x^2\geq36$となり,$x\leq y=3$を組み合わせて,$x=3$と定まる.
$(x,y)=(3,3)$を条件(A)の式に代入すると,
$$z^2-9z+18=0 {\Longleftrightarrow (z-3)(z-6)=0 \Longleftrightarrow z=3\lor z=6}$$
となり,$(x,y,z)=(3,3,3)\lor (x,y,z)=(3,3,6)$(答)
$(2)\ \ $組$(a,b,c)$が条件(A)を満足するので,
$$ a^2+b^2+c^2=abc・・・*\ \ \land\ \ a \leq b \leq c$$
が成立し,この下で,
$$ b^2+c^2+z^2=bcz・・・☆\ \ \land\ \ b\leq c\leq z$$
を満足する$z$の存在を示せばよい.
今,
$$ ☆-* \Longleftrightarrow z^2-bcz+abc-a^2=0 \Longleftrightarrow (z-a)(z-bc+a)=0$$
であり,$z=bc-a$について考えると,$(1)$の結果から$b \geq 3$であるので,
$$ (bc-a)-c=(b-1)c-a \geq 2c-a \gt0・・・♡$$
となり,$z=bc-a$は$b \leq c \leq z$も満足するから,$z-bc-a$とすれば組$(b,c,z)$は条件(A)を満足する.(終)
$(3)\ \ $$(a_1,b_1,c_1)=(3,3,3)$として,数列$\lbrace a_n \rbrace$,$\lbrace b_n \rbrace$,$\lbrace c_n \rbrace(n \geq 1)$を
$$ a_{n+1}=b_n,b_{n+1}=c_n,c_{n+1}=b_nc_n-a_n$$
として定めると,$(2)$の結果からすべての$n$で組$(a_n,b_n,c_n)$は条件(A)を満足し,それぞれ互いに相異なる.
故に,条件(A)を満足する組$(x,y,z)$は無数に存在する.(終)
$a-b-8$と$b-c-8$が素数となるような素数の組$(a,b,c)$をすべて求めよ.(一橋大)
初見での感想は,どっから手を付けていいかわかんねぇぇぇぇぇでした.見た感じ,「素数」という漠然とした条件しか与えられていないので,具体的な方針が立ちにくいです.しかし,「素数」という条件は絞り込みにおいて非常に大きな威力を発揮することがあります.こういう具体値がない素数がらみの問題は,まず
と突破口が開くことが多いです.この一橋の問題は,それらすべてが凝縮されている,良問だと思います.
さて,解説に入るのですが,$a,b,c$のうち最小のものは何ですか?それはもちろん,$c$です.整数の絞り込みのとき,最小or最大のものに着目することは鉄則ですが,素数の場合は最小の素数が$2$で,唯一の偶数であることを利用することができるときがあります.なので$a,b$が奇素数であることが解り,$c$が$2$かどうかで場合分けする必然性が出てきます.さらに,偶奇を共にする整数の差は偶数であり,異にする整数の差は奇数となることも整数問題では重要です.
解いてみたい方は一度解いてみてください.次の行から解答が始まります.
$a-b-8,b-c-8$が素数であるから,$a \gt b \gt c$である.今,$a,b,c$は素数であるから,$a,b$は奇数であることが解り,$a-b-8$は偶数であることも解る.一方,$a-b-8$は素数であるので,
$$ a-b-8=2 \Longleftrightarrow a=b+10$$
と解る.
$1°$.$c=2$のとき,
素数$b-c-8$を$p$とおく.$p$は奇数で,$b=p+10,a=p+20$である.
ここで,$\mod 3$で考えると,
$$ b \equiv p+1,c \equiv p+1 \ \ \ \ \therefore abp \equiv p(p+1)(p+2)$$
であり,$p(p+1)(p+2)$は連続$3$整数積であるから,$abp$は$3$の倍数.$a \gt b \gt p \geq3$であり,$a,b,p$が素数であるから$p=3$.
$2°$.$c$が奇数のとき,
$b-c-8$は偶数であるが,素数でもあるので,
$$b-c-8=2 \ \ \therefore b=c+10,a=c+20$$
となる.これは$1°$で$p \longrightarrow c$としたものだから,$c=3$.
$1°,2°$の議論より,$(a,b,c)=(23,13,2),(23,13,3)$(答)
$\LaTeX$打ち込みに全然慣れていないので,公開までにすごく時間がかかってしまいました.
大好きな入試問題の紹介でしたが,いかがだったでしょうか?(NAVERまとめ並感)今後も機会があれば高校数学の記事を書いていこうと思っているので,ぜひ読んでくださるとうれしいです.
最後までお読みいただき,ありがとうございました.