ここでは東大数理の修士課程の院試の2020B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2020B02
- 体上の変数多項式環の極大イデアルは元生成されることを示しなさい。
- 変数多項式環は元生成されることを示しなさい。
- まず極大イデアルを任意にとる。このときザリスキの補題からのある有限拡大に対して全射
でその核がであるようなものを取ることができる。ここでの像をとし、の上の最小多項式をとおき、上の最小多項式をとおき、をであるような係数多項式とする。このときはに関して次以下、に関して次以下に取ることができる。このときが満たされている。一方
であるからも極大イデアルになる。以上からはから生成される。 - 体が標数であったとして矛盾を示す。このときザリスキの補題からは代数体である。いまの像をとし、自然数をが上整になるようにとる。このときは上で生成される代数なので、有限生成加群である。これによっての任意の元は上整になる。しかしは整閉整域であり、特にが上整ではないから矛盾する。よっては標数である。再びザリスキの補題によっては有限体である。
以上から任意の極大イデアルに対してあるが存在して全射
によっては極大イデアルになっている。(1)からは元生成されていたから、これによってはこの元の引き戻しとの計元で生成される。
(1)(2)はそれぞれ次のように一般化できます。証明は上の議論とほぼ同じです。
- 体上の変数多項式環は元生成される。
- は元生成される。