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東大数理院試過去問解答例(2020B02)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2020B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2020B02
  1. $K$上の$2$変数多項式環$K[X,Y]$の極大イデアルは$2$元生成されることを示しなさい。
  2. $2$変数多項式環$\mathbb{Z}[X,Y]$$3$元生成されることを示しなさい。
  1. まず極大イデアル$\mathfrak{m}$を任意にとる。このときザリスキの補題から$K$のある有限拡大$L/K$に対して全射
    $$ K[X,Y]\twoheadrightarrow L $$
    でその核が$\mathfrak{m}$であるようなものを取ることができる。ここで$X,Y$の像を$a,b$とし、$a$$K$上の最小多項式を$F(X)$とおき、$K(a)$$b$の最小多項式を$G'(T)$とおき、$G(X,Y)$$G(a,T)=G'(T)$であるような$K$係数多項式とする。このとき$G$$Y$に関して$[L:K(a)]$次以下、$X$に関して$[K(a):K]$次以下に取ることができる。このとき$F(X),G(Y)\in\mathfrak{m}$が満たされている。一方
    $$ K[X,Y]/(F(X),G(X,Y))\simeq K(a)[Y]/(G(a,Y))\simeq K(a,b)=L $$
    であるから$(F,G)$も極大イデアルになる。以上から$\mathfrak{m}$$F,G$から生成される。
  2. $k=\mathbb{Z}[X,Y]/\mathfrak{m}$が標数$0$であったとして矛盾を示す。このときザリスキの補題から$k$は代数体である。いま$X,Y$の像を$a,b$とし、自然数$N$$a,b$$\mathbb{Z}[\frac{1}{N}]$上整になるようにとる。このとき$K$$\mathbb{Z}$$a,b$で生成される代数なので、有限生成$\mathbb{{Z}}[\frac{1}{N}]$加群である。これによって$K$の任意の元は$\mathbb{Z}[\frac{1}{N}]$上整になる。しかし$a$は整閉整域であり、特に$\frac{1}{N+1}$$\mathbb{Z}[\frac{1}{N}]$上整ではないから矛盾する。よって$k$は標数$0$である。再びザリスキの補題によって$k$は有限体である。
    以上から任意の極大イデアル$\mathfrak{m}$に対してある$p$が存在して全射
    $$ F:\mathbb{Z}[X,Y]\twoheadrightarrow\mathbb{F}_p[X,Y] $$
    によって$F(\mathfrak{m})$は極大イデアルになっている。(1)から$p(\mathfrak{m})$$2$元生成されていたから、これによって$\mathfrak{m}$はこの$2$元の引き戻しと$p$の計$3$元で生成される。

(1)(2)はそれぞれ次のように一般化できます。証明は上の議論とほぼ同じです。

  1. 体上の$n$変数多項式環$K[X_1,\cdots,X_n]$$n$元生成される。
  2. $\mathbb{Z}[X_1,\cdots,X_n]$$n+1$元生成される。
投稿日:2024810
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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