本記事の内容は、とってもゆるい議論で成り立っています。自分が極限の順序交換と一様収束の関係を理解するのに使っているイメージを伝えるのが趣旨なので、厳密さは追求していません。また、ここで使っている領域という言葉は、記事を書きやすくするために作った私の造語であり、well-definedですらありません。
はじめに
今回は、二変数関数の極限において、
が成り立つのはどういうときなのか、ということについてのイメージの仕方をお話ししていきます。
極限を捉え直す
とは、任意のに対して
を満たすをとることができる、ということでした。これは、が然るべき条件を満たせば、の差を除いてとは等しい、と捉えることができます。これを、
と書くことにします。(は十分条件としてその部分集合で代用できるので、の取り方は一意的ではありません。)
上の極限を取るという操作を、「をに限りなく近づけることで、をに限りなく近づける」と考えるのではなく、「をに入れることで、をにより近づける」と考えるのです。議論の途中でに条件を課すことがなければ、すなわち任意ので成り立つことしか行わなければ、これは結局、
と読み直せるので、とりあえずは「の差を除いて等しい」状態で考えよう、というわけです。
関数族の極限
今の話を、関数族に適用してみます。これは、二変数関数を考えることに同じです。以下、の定義域を、の定義域をとします。
に、上の話をとりあえず当てはめてみると、が然るべき条件を満たすとき、
となります。しかし、の条件はによる可能性があるので、次のようにするのがよいでしょう。
いちいち「然るべき条件」というのは面倒なので、この条件は平面上の領域とみなせますから、それを領域と呼ぶことにしましょう。領域内で、と考えるということです。
epsilon領域
一様収束
一様収束
に対し、
が成り立つとき、関数族はに上一様収束するという。
がにで一様収束するというのは、領域が次の図のように、長方形に取れるというのと等しいことがわかると思います。
一様収束
反対に、がにで一様収束せず各点収束するというのは、領域が次の図のように、定義域内で無限に細くなってしまうということです。
各点収束
完全に潰れてしまう点は定義域の外にあることに注意してください。でないと、各点収束すらしないことになってしまいます。
極限の順序交換
わざわざこのような言い換えをしてきたのは、極限の順序交換の話をするためです。
は一般に成り立つでしょうか。ただし、やは、少なくとも各点収束の意味で存在するとします。また、も存在するとします。
やが一様収束か否かで場合分けして考えてみましょう。
ともに一様収束の場合
ともに一様収束ならば、2つの領域、およびの領域は次のようになっているはずです。
ともに一様収束
つまり、の領域のなかで、をに近づけていけば、の領域に入ることができます。これは、
を意味し、が成り立つことがわかりました。ついでに、の近傍で、の領域にすっぽり入るものが取れますから、
も成り立ちます。
一方のみ一様収束の場合
一方のみ一様収束のとき、2つの領域、およびの領域は次のようになっているでしょう。
一様収束と各点収束
このときもやはり、の領域のなかで、をに近づけていけば、の領域に入ることができます。つまりは成り立ちますし、同様にしても成り立ちます。
ともに一様収束でない場合
ともに一様収束でない場合、一番"ヤバイ"のは、領域が次のようになっているときです。
ともに各点収束
このとき、の領域はのそれと共通部分を持たないので、とは限りません。よってが成り立つとは言えません。
おわりに
このように、"領域"というものをイメージすると、極限の順序交換がなぜ一様収束性と関係するのか、少しはわかりやすくなるのではないかと思います。
読んでいただきありがとうございました。