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確率漸化式の素朴な問題(Mathlog新機能実験)

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この記事の目標

次の問題を解きます。出典は覚えていないのですが,以前友人に出題されたことのある問題です。しかも状況がかなり分かりやすいので,有名問題かもしれません。

和と積が3の倍数になる確率は?

nを正の整数とする。1つのさいころをn回投げ,出た目の積をXn,出た目の和をYnとする。
⑴ Xn0(mod3)となる確率pnを求めよ。
⑵ Yn0(mod3)となる確率qnを求めよ。
⑶ Xn0(mod3)かつYn0(mod3)となる確率rnを求めよ。

以下,この問題に2通りの答案を与えていきます。

分からないなら文字で置けばいいじゃない?

僕は,わからないものは文字で置きまくれば幸せになれるという思考の持ち主です。そのため,大量に文字を置きつつ答案を作っていきます。

以下,合同式は法を3としたものを考えているものとします。

⑴の解答

1pnは,n回投げて出た目がすべて3の倍数でない確率に等しいから,1pn=(46)n,つまり,pn=1(23)n

⑵の解答

Yn1となる確率をanYn2となる確率をbnとする。このときn2に対して,

  • Yn10のとき,n回目は3または6が出ればよい。
  • Yn11のとき,n回目は2または5が出ればよい。
  • Yn12のとき,n回目は1または4が出ればよい。

つまり,確率遷移図は次のようになる。(ただし矢印は13を表す。)
qnbqn+1anbanban+1bqnbnbn+1qn

よって,qn=13qn1+13an1+13bn1=13(qn1+an1+bn1)=13である。(n2

また,n=1のときはq1=13であるから,すべての自然数nについてqn=13

(同様に,an=bn=13もすべての自然数nについて成り立つ。)

⑶の解答

次のように記号を定める:

  • Xn0かつYn0となる確率をrnr1=13
  • Xn0かつYn1となる確率をcnc1=0
  • Xn0かつYn2となる確率をdnd1=0
  • Xn0かつYn0となる確率をene1=0
  • Xn0かつYn1となる確率をfnf1=13
  • Xn0かつYn2となる確率をgng1=13

このとき,rn,cn,dn,en,fn,gnにおける確率遷移図は右図のようになる。(ただし,矢印はすべて13を表している。)

rnbrn+1anbcnbcn+1bqndndn+1qnenben+1anbfnbfn+1bqngnbgn+1bqn
数式で表すと,以下の通り。{rn+1=13rn+13cn+13dn+13encn+1=13rn+13cn+13dn+13fndn+1=13rn+13cn+13dn+13gnen+1=13fn+13gnfn+1=13en+13gngn+1=13en+13fn

また,

  • rn+en=(Yn0となる確率)=qn=13
  • cn+fn=(Yn1となる確率)=an=13
  • dn+gn=(Yn2となる確率)=bn=13

である。さらに,数列{fngn}について,⑤と⑥より,f1g1=0,fn+1gn+1=13(fngn)
であるため,すべての自然数nについてfngn=0であり,fn=gnである。特に⑧⑨より,cn=dnである。よって,①②は,④~⑨及びcn=dnを代入することで,①については,rn+1=13rn+13cn+13cn+13(13rn)rn+1=23cn+19.
②については,cn+1=13rn+13cn+13cn+13(13cn)cn+1=13rn+13cn+19.
と変形できる。この二式を用いて数列{rn}の一般項を求めよう。rn+1=23cn+19よりrn+2=23cn+1+19だから,32(rn+219)=13rn+1332(rn+119)+19
整理すると,rn+213rn+129rn=427
ここで,rn13=snとおくと,s1=0,s2=29であり,sn+213sn+129sn=0
である。方程式x213x29=0の異なる2解をα,β (α<β)として,sn+2αsn+1=β(sn+1αsn)
と変形できる。よって数列{sn+1αsn}は,初項29,公比βの等比数列なので,$$
s_{n+1}-\alpha s_n=-\bunsuu29\beta^{n-1}\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑩}}
$$
同様に,$$
s_{n+2}-\beta s_{n+1}=\alpha(s_{n+1}-\beta s_n)
$$
と変形できるから,数列{sn+1βsn}は,初項29,公比αの等比数列より,$$
s_{n+1}-\beta s_n=-\bunsuu29\alpha^{n-1}\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑪}}
$$
⑩⑪より,$$
s_n=-\bunsuu2{9(\beta-\alpha)}(\beta^{n-1}-\alpha^{n-1})=-\bunsuu{2}{9}\left{\left(\bunsuu23\right)^{n-1}-\left(-\bunsuu{1}{3}\right)^{n-1}\right}

\therefore\quad \bm{r_n=\bunsuu13-\bunsuu29\left{\left(\bunsuu23\right)^{n-1}-\left(-\bunsuu13\right)^{n-1}\right}}
$$

⑶の別解を模索する

さすがに先ほどの解答の⑶は,模範的な解答ではないと思います。(自然な発想ではあるんですけどね。。。)

ということで,⑶の解答を,最短距離を目指した別解を提示します。

⑶の短い解答

⑴⑵で用いたpn,qnを用いると,rnについて,rn+1=13rn+13(pnrn)+13(ynrn)
という関係式が成り立つ。すなわち,rn+1=13rn13(23)n+49(#)
この(#)を変形すると,rn+1+13(23)n+113=13{rn+13(23)n13}
となるため,数列{rn+13(23)n13}は公比13で初項は(頑張って計算すれば)29の等比数列である。すなわち,rn+13(23)n13=29(13)n1
rn=1313(23)n23(13)n

多分これが一番速いと思います。

まとめ

というわけで今回は,問題こそ「和と積が3の倍数になる確率は?」と聞かれているだけでしたが,いざ手を動かしてみると難しい問題でした。これ,mod5とかmod7とかになったら,とんでも大変なことになるんじゃないかな。。。

この問題に対する別解を思いついた方は,コメントを頂けると嬉しいです!

また,新機能としてXypicが実装されましたね。いくつか図を書いてみましたが,いかがでしょうか。コメントいただけると嬉しいです。(ちなみに僕はTikZ派ですので,慣れない記法でしたね。。)

投稿日:20201122
OptHub AI Competition

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投稿者

ぱるち
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数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

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