こんにちは!Ωです!
今回はJMO本選の解説をしていこうと思います。
図を書くのは読者にお任せしたいと思います。申し訳ないです。
なるべく早くTikZ使えるようになりたいですね、、、
ということで早速問題です。
鋭角三角形$ABC$があり、その外心を$O$とする。3点$A,B,C$から対辺におろした垂線の足をそれぞれ$D,E,F$とし、さらに辺$BC$の中点を$M$とする。直線$AD$と直線$EF$の交点を$X$,直線$AO$と直線$BC$の交点を$Y$とし、線分$XY$の中点を$Z$とする。このとき3点$A,Z,M$が同一直線上にあることを示せ。
さて、この問題をみて図を描いて見た感じだと、図が1つの三角形の中でほぼほぼ完結しているなぁ。という印象。共線を示せという問題なこともあり、ベクトルで解くのが良いのではないかという発想になりました。
基礎的な知識として、$5心$の位置ベクトルは知っておきましょう。
なお、外心、垂心は次のような表示も知られています。
$ \overrightarrow{o} =\displaystyle\frac{a\cos A \overrightarrow{a}+b\cos B \overrightarrow{b}+c\cos C \overrightarrow{c}}{a\cos A+b\cos B+c\cos C}$
$ \overrightarrow{h} =\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{a}{\cos A} \overrightarrow{a}+\frac{b}{\cos B} \overrightarrow{b}+\frac{c}{\cos C} \overrightarrow{c}}{\displaystyle\frac{a}{\cos A}+\frac{b}{\cos B}+\frac{c}{\cos C}}$
普段ベクトルになじみのない方もきずかれたと思いますが、上のように、平面上の任意の点は$ \displaystyle\frac{\alpha \overrightarrow{a}+\beta \overrightarrow{b}+\gamma \overrightarrow{c}}{\alpha+\beta+\gamma}$のようにかけて、その$\alpha,\beta,\gamma$の比は一意に定まります。
この$(\alpha,\beta,\gamma)$を、その点の重心座標と言います。
例えば、内心の重心座標は$(a,b,c)$です。重心座標については、ここで話すと趣旨がずれてしまいますので、別の記事を投稿しようと思います。
まず点$Y$について考察します。先程の$5心$の位置ベクトルの表示から、
$ AO:AY=b\cos B+c\cos C:a\cos A+b\cos B+c\cos C$がわかります。
このことから、始点をAとする位置ベクトルを考えると、
$\displaystyle \overrightarrow{y} =\frac{b\cos B \overrightarrow{b}+c\cos C \overrightarrow{c}}{b\cos B+c\cos C}$
がわかります。
あとは$ \overrightarrow{x} $さえ解れば$ \overrightarrow{z} $がわかり、そうすれば$ \overrightarrow{b} $と$ \overrightarrow{c} $が一次独立なことを用いて、$ \overrightarrow{z} $を$ \overrightarrow{b} $と$ \overrightarrow{c} $を用いて表したときのそれぞれの係数の比と、$ \overrightarrow{m} $を$ \overrightarrow{b} $と$ \overrightarrow{c} $を用いて表したときのそれぞれの係数の比が一致することを示せばよいですね。
では方針が立ったので$ \overrightarrow{x} $を求めにいきましょう。
メネラウスかチェバかなんかを使って
$\displaystyle AX:AH=\frac{a}{\cos A}+\frac{b}{\cos B}+\frac{c}{\cos C}:\frac{2a}{cos A}+\frac{b}{\cos B}+\frac{c}{\cos C}$
とわかります。
実は、重心座標の考え方を使うとここの工程がとても楽になるのですが、それはまた別の機会に。
上から、$ \displaystyle\overrightarrow{x} =\frac{\displaystyle\frac{b}{\cos B} \overrightarrow{b}+\frac{c}{\cos C} \overrightarrow{c}}{\displaystyle\frac{2a}{\cos A}+\frac{b}{\cos B}+\frac{c}{\cos C}}$がわかる。
よって、
$\displaystyle\overrightarrow{z}=\left(\frac{\displaystyle\frac{b}{\cos B}}{\displaystyle\frac{2a}{\cos A}+\frac{b}{\cos B}+\frac{c}{\cos C}}+\frac{b\cos B}{b\cos B+c\cos C}\right) \overrightarrow{b}+\left(\frac{\displaystyle\frac{c}{\cos C}}{\displaystyle\frac{2a}{\cos A}+\frac{b}{\cos B}+\frac{c}{\cos C}}+\frac{c\cos C}{b\cos B+c\cos C}\right) \overrightarrow{c}$
となる。
見た目えぐいですが思ったよりはこの先の計算はきつくないです。
$ \displaystyle\overrightarrow{m} =\frac{ \overrightarrow{b}+ \overrightarrow{c}}{2}$
なので、上のごつい式の$ \overrightarrow{b} $の係数と$ \overrightarrow{c} $の係数が等しくなることを示せばいいです。
たぶん5~10分もあれば計算は終わると思います。この途中式は書いてらんないので省略しますが、途中ででてくる以下の式はかなり示すのが面倒です。
$a\cos A+b\cos B=c\cos(A-B)$
この式、教科書に載ってそうな見た目してるくせに示すのはかなり難しいです。正弦定理と2倍角の式を使うと正しいことがわかります。
この式、図形的にはまだ示せていないので、示せた方がいたらコメントかなにかで知らせてくれると嬉しいです。
この解法は正直な話、実際の試験会場の制限時間内に思いつくとは限らないので怖いですね。
垂心を$H$とします。
点$N$を、$AN$が$\triangle ABC$の外接円の直径となるように取ると、簡単に
四角形$BNCH$が平行四辺形であり、$M$は$HN$の中点であることがわかります。
また、四角形$AFHE$と四角形$ACNB$が相似であるから、$H,N$は対応していて、それぞれの四角形の対角線である、$X,Y$も対応していることがわかります。
これらのことから、2つの四角形の相似の中心が点$A$であることを踏まえると、$\triangle AXY~\triangle AHN (\because AX:XH=AY:YN)$より、$XY$の中点$Z$と$HN$の中点$M$が一直線上に並ぶのは自明です。
いかがでしょうか。2個目の解法に関しては、どのようにしたら思い浮かぶのかは私の能力では説明できなく申し訳ないです。
この問題からは、ベクトルがどのような問題に強いのか、また、多角形における相似や相似の中心の重要性が学べると思います。
ではまた。
2020/11/23