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大学数学基礎解説
文献あり

単項イデアル整域である虚二次整数環

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$$\newcommand{CAb}[0]{\mathbf{Ab}} \newcommand{CArr}[0]{\mathbf{2}} \newcommand{CCat}[0]{\mathbf{Cat}} \newcommand{CCAT}[0]{\mathbf{CAT}} \newcommand{CEnr}[1]{{#1}\textrm{-}\mathbf{Cat}} \newcommand{CENR}[1]{{#1}\textrm{-}\mathbf{CAT}} \newcommand{CMod}[1]{{#1}\textrm{-}\mathbf{Mod}} \newcommand{CMonCat}[0]{\mathbf{MonCat}} \newcommand{cod}[0]{\mathop{\mathrm{cod}}} \newcommand{Colim}[0]{\mathop{\mathrm{Colim}}} \newcommand{couni}[0]{\varepsilon} \newcommand{CQuiv}[0]{\mathbf{Quiv}} \newcommand{CSet}[0]{\mathbf{Set}} \newcommand{CUni}[0]{\mathbf{1}} \newcommand{defeq}[0]{\stackrel{\textrm{def}}{=}} \newcommand{defequiv}[0]{\stackrel{\textrm{def}}{\Leftrightarrow}} \newcommand{dom}[0]{\mathop{\mathrm{dom}}} \newcommand{Hom}[0]{\mathop{\mathrm{Hom}}} \newcommand{Id}[0]{\mathrm{Id}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Lim}[0]{\mathop{\mathrm{Lim}}} \newcommand{Limind}[0]{\mathop{\underset{\longrightarrow}{\mathrm{Lim}}}\nolimits} \newcommand{Limproj}[0]{\mathop{\underset{\longleftarrow}{\mathrm{Lim}}}} \newcommand{lsimarrow}[0]{\xleftarrow{\sim}} \newcommand{Lsimarrow}[0]{\overset{\sim}{\Longleftarrow}} \newcommand{Mor}[0]{\mathop{\mathrm{Mor}}} \newcommand{Obj}[0]{\mathop{\mathrm{Obj}}} \newcommand{op}[0]{\mathrm{op}} \newcommand{rsimarrow}[0]{\xrightarrow{\sim}} \newcommand{Rsimarrow}[0]{\overset{\sim}{\Longrightarrow}} \newcommand{SMC}[0]{\mathbf{SMC}} \newcommand{SMCC}[0]{\mathbf{SMCC}} \newcommand{To}[0]{\Rightarrow} \newcommand{uni}[0]{\eta} $$

単項イデアル整域と知られている虚二次整数環を確認していきます。このような環は以下に挙げる9種しかないことが知られていますが、その証明はモジュラー形式とかj不変量をどうこうしてなんか4次のディオファントス方程式に帰着させていて、全プロセス私の手ではまったく手に負えなかったので扱いません。
全9種類と言っても、証明の手法としては3通りしかありません。虚二次体の整数環はまずその格子の形状が直交かどうか ($\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$の形かどうか) で2種類に分類され、さらにその環がノルムを用いてユークリッド整域を成しているかどうかで2種類に分類されます。この2×2=4種類のうち、1つは該当のものが存在せず、残りの3種類について、それぞれ少しずつ異なる証明が与えられます。とはいえ、特にユークリッド環ではないものの証明はまったくの非自明であり、本稿ではOscar Campoliが1988年に$\mathbb{Z}[\frac{1+\sqrt{-19}}{2}]$の場合について証明を与えたものを応用しています。
しかしどうやら、Campoliによると1988年当時まで、少なくとも初学者が見るような標準的な文献にはこの証明はどこにも書かれていない状況だったようです Campoli。歴史的にも、これらの事実は二次形式の類数に関する研究に端を発しており、ガウスやルジャンドルが研究していた時代にイデアル論は存在していませんでしたから、単項イデアル整域であることは関連する体 (ひいては特定の判別式を持つ二次形式) の類数が1であることからの帰結として与えられ、わざわざ環論の内容として解きなおして文献に残そうという動機もなかったものと推察されます。

準備

虚二次体 $\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$とは、有理数$\mathbb{Q}$と負の平方根$\sqrt{-d}$を含む最小の体を指します。ただし$d$はsquare-free ($p^2$の形の因数を持たない) である自然数とします。$\sqrt{-d}$は方程式$x^2+d=0$の根となる数であり、$\mathbb{C}$へ埋め込んだ時に$\pm\sqrt{d}i$のいずれかに写ることが知られています。

具体的な集合としては、次の形で与えられます。
$$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})=\left\{a+b\sqrt{-d}\mid a,b\in\mathbb{Q}\right\}$$体の演算は複素数の四則と同様の方法で定義されます。

$\mathbb{Q}$の有限次拡大 (数体) $K$について、その整数環とは$\mathbb{Z}$上整な元の集合、すなわち$\mathbb{Z}$係数モニック多項式の根であるような$K$の元の全体を指します。

(Neukirch, Ⅰ §2. Exercise 4)

$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の整数環は、次のいずれかである。

  • $d\equiv 3\mod 4$の場合、$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\right]:=\left\{a+b\cdot\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\mid a,b\in\mathbb{Z}\right\}$
  • そうでない場合、$\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$

$z=a+b\sqrt{-d}$としたとき、$z^2-2az+a^2+b^2d=0$が成り立つ。従って$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の整数環とは、$\left\{a+b\sqrt{-d}\mid a,b\in\mathbb{Q},\ 2a,a^2+b^2d\in\mathbb{Z}\right\}$で表される集合である。$2a\in\mathbb{Z}$なので、$a=\frac{n}{2}$ ($n\in\mathbb{Z}$)と置くと、$a^2+b^2d\in\mathbb{Z}$が成り立つためには$b=\frac{m}{2}$ ($m\in\mathbb{Z}$)であることが必要である。そのため、結局$n^2+dm^2$が4で割り切れる条件を調べればよいことがわかる。

$d\equiv 3\mod 4$でない場合、$n^2+dm^2$が4の倍数であることは$n,m$がどちらも偶数であることと同値である。従って、このとき$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の整数環は$\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$である。
$d\equiv 3\mod 4$である場合、$n$$m$はどちらも偶数であるかどちらも奇数であるかであればよい。どちらも奇数であるとき、$n=2k+1,$ $m=2\ell+1$と置くと
\begin{align} \frac{2k+1}{2}+\frac{2\ell+1}{2}\sqrt{-d}&=\frac{2(k-\ell)+(2\ell+1)(1+\sqrt{d})}{2}\\ &=(k-\ell)+(2\ell+1)\frac{1+\sqrt{-d}}{2} \end{align}どちらも偶数である場合、$n=2a,m=2b$となるので
\begin{align} a+b\sqrt{-d}&=(a-b)+2b\cdot\frac{1+\sqrt{-d}}{2} \end{align}
以上より、$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の整数環は$\mathbb{Z}[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}]$に含まれる。
他方、$z=x+y\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\in\mathbb{Z}[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}]$に対して、$z^2-(2x+y)z+x^2+\frac{d+1}{4}y^2=0$が成り立つため、$\mathbb{Z}[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}]$$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の整数環に含まれる。従って、$\mathbb{Z}[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}]$$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の整数環である。

  • 虚二次体$\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$ノルムとは、$N(a+b\sqrt{-d})=a^2+b^2d$で定義される写像$N\colon\mathbb{Q}(\sqrt{-d})\to\mathbb{Q}$である。

$N(xy)=N(x)N(y),\ N(1)=1$

$N(1)=1$は明らか。$x=a+b\sqrt{-d},$ $y=s+t\sqrt{-d}$と置くと
\begin{align} N(xy)&=(as-btd)^2+(at+bs)^2d\\ &=a^2s^2+b^2t^2d^2+a^2t^2d+b^2s^2d\\ &=(a^2+b^2d)(s^2+t^2d)\\ &=N(x)N(y) \end{align}

ユークリッド環 ($d=1,2,3,7,11$)

整域$A$ユークリッド環であるとは、ユークリッド写像と呼ばれる写像$\varphi\colon A\setminus\{0\}\to\mathbb{N}_{\geq 0}$が存在して、任意の$x,y\in A,$ $y\neq 0$に対して

  • ある$q\in A$が存在して$x=qy$
  • ある$q,r\in A$が存在して$x=qy+r,$ $\varphi(r)<\varphi(y)$

のいずれかが成り立つことである。

(後藤-渡辺, p.22)

ユークリッド環は単項イデアル整域である。

$A$をユークリッド環、$\varphi$をユークリッド写像、$I\subseteq A$を0でないイデアルとする。このとき、$\varphi(b)=\min\{\varphi(x)\mid x\in A\}$を満たす$b\in A$が取れる。$A$がユークリッド環であることから、任意に取った$x\in I$に対して、$x=qa+r,$ $r=0$または$\varphi(r)<\varphi(a)$を満たすように$q,r\in A$を取れる。しかし$x-qa\in I$であることと$a$$\varphi$に関する最小性から、$r=0$でなければならないことがわかる。以上より$I=(a)$である。

ガウス型のユークリッド環 ($d=1,2$)

$d=1,2$について、$\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$はユークリッド整域である。

$z=x+y\sqrt{-d},$ $w=u+v\sqrt{-d}$ ($u^2+dv^2\neq 0$) に対して、$a-\frac{1}{2}\leq\frac{ux+dvy}{u^2+dv^2}< a+\frac{1}{2}$$b-\frac{1}{2}\leq\frac{-vx+uy}{u^2+dv^2}< b+\frac{1}{2}$が成り立つように$a,b\in\mathbb{Z}$を取る。このとき、
$$\left(\frac{ux+dvy}{u^2+dv^2}-a\right)^2+d\left(\frac{-vx+uy}{u^2+dv^2}-b\right)^2 \leq \frac{d+1}{4}<1$$が成り立つため、
$$N(z-w(a+bi))=N(w)N(\tfrac{z}{w}-(a+bi))< N(w)$$以上より$\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$ ($d=1,2$) はユークリッド環である。

$d=1,2$について、$\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$は単項イデアル整域である。

アイゼンシュタイン型のユークリッド環 ($d=3,7,11$)

$d=3,7,11$とする。このとき、任意の$q\in\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$に対して$N(q-z)<1$となるような$z\in\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\right]$が存在する。

$q=q_0+q_1\sqrt{-d}$としたとき、$q=(q_0-q_1)+2q_1\frac{1+\sqrt{-d}}{2}$である。$a_0=[q_0-q_1],$ $a_1=[2q_1],$ $e_0=q_0-q_1-a_0,$ $e_1=2q_1-a_1$とする。このとき、$0\leq e_i< 1$である。

  1. $e_0+e_1<\frac{1}{2}$のとき、$e_0,e_1<\frac{1}{2}$も成り立つため、
    \begin{align} N\left(q-(a_0+a_1\tfrac{1+\sqrt{-d}}{2})\right) &=N\left((q_0-q_1-a_0)+(2q_1-a_1)\tfrac{1+\sqrt{-d}}{2}\right)\\ &=e_0^2+e_0e_1+\frac{d+1}{4}e_1^2\\ &=\frac{e_0^2}{2}+\frac{(e_0+e_1)^2}{2}+\frac{d-1}{4}e_1^2\\ &\leq \frac{d+3}{16}\\ &<1 \end{align}

  2. $\frac{1}{2}\leq e_0+e_1<\frac{3}{2}$かつ$-\frac{d-1}{2}< e_0-\frac{d-1}{2}e_1<-\frac{d-3}{4}$のとき、
    \begin{align} N\left(q-(a_0+(a_1+1)\tfrac{1+\sqrt{-d}}{2})\right) &=\frac{e_0^2}{2}+\frac{(e_0+e_1-1)^2}{2}+\frac{d-1}{4}(e_1-1)^2\\ &=\frac{d}{d+1}(e_0+e_1-1)^2+\frac{1}{d+1}(e_0-\tfrac{d-1}{2}e_1+\tfrac{d-1}{2})^2\\ &\leq\frac{d}{4(d+1)}+\frac{d+1}{16}\\ &<\frac{d+5}{16}\leq 1 \end{align}

  3. $\frac{1}{2}\leq e_0+e_1<\frac{3}{2}$かつ$-\frac{d-3}{4}\leq e_0-\frac{d-1}{2}<1$のとき、
    \begin{align} N\left(q-((a_0+1)+a_1\tfrac{1+\sqrt{-d}}{2})\right) &=\frac{(e_0-1)^2}{2}+\frac{(e_0+e_1-1)^2}{2}+\frac{d-1}{4}e_1^2\\ &=\frac{d}{d+1}(e_0+e_1-1)^2+\frac{1}{d+1}(e_0-\tfrac{d-1}{2}e_1-1)^2\\ &<\frac{d+5}{16}\leq 1 \end{align}

  4. $\frac{3}{2}\leq e_0+e_1$のとき、$\frac{1}{2}\leq e_0,e_1$が成り立つため、
    \begin{align} N\left(q-((a_0+1)+(a_1+1)\tfrac{1+\sqrt{-d}}{2})\right) &=\frac{(e_0-1)^2}{2}+\frac{(e_0+e_1-2)^2}{2}+\frac{d-1}{4}(e_1-1)^2\\ &\leq\frac{d+3}{16}\\ &<1 \end{align}

$d=3,7,11$について、$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\right]$はユークリッド環である。

$z=x+y\frac{1+\sqrt{-d}}{2},$ $w=u+v\frac{1+\sqrt{-d}}{2}$ ($u^2+uv+cv^2\neq 0$) とする。ここで$\frac{z}{w}\in\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$に補題5を適用すると、ある$q\in\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\right]$が存在して$N(\frac{z}{w}-q)<1$が成り立つ。$r=z-qw$と置くと、$N(r)< N(w)$が成り立つため、$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\right]$はユークリッド整域であることが従う。

$d=3,7,11$について、$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-d}}{2}\right]$は単項イデアル整域である。

擬似的ユークリッド性によるPIDの証明

ここまででわかる通り、$d$が小さい数の場合は体のノルムを用いて整数環がノルムユークリッド環をなすことで証明をしてきました。しかし$d=5,6,10$および$d\geq 13$の場合、$q\in\mathbb{Q}(\sqrt{-d})$の中に整数環上のどんな元$z$を取っても$N(q-z)\geq 1$となるようなものが存在してしまうため、整数環がノルムユークリッドになりません。ノルムユークリッドでないからといってユークリッドでないとは限らない ( Clark , Clark) のですが、虚二次体の場合はこれ以降ユークリッド環にはなりません。
ところが、Oscar Campoliが$d=19$の場合について調べた結果によると、この環は〝ほとんど〟ユークリッド整域であるらしく、その性質によってこれが単項イデアル整域であることが示されるそうです。そこで、同様の性質が残りの場合でも成立することによってPIDであることを示していきます。

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-19}}{2}\right]$

(Campoli, p.870)

整数環$\mathcal{O}=\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-19}}{2}\right]$について、$\alpha,\beta\in\mathcal{O}$$\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\beta)\leq N(\alpha)$を満たすとする。このとき、$0< N(\alpha\gamma-\beta\delta)< N(\beta)$を満たすような$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$が存在する。

$\alpha,\beta\in\mathcal{O},$ $\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\beta)\leq N(\alpha)$に対して、$N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)<1$となる$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$の存在を言えばよい。$\frac{\alpha}{\beta}=a+b\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$と置くと、条件から$a,b\in\mathbb{Q}$は少なくとも片方が整数ではない。

  1. $a\notin\mathbb{Z}$かつ$b\in\mathbb{Z}$の場合。$a\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$を満たすように$x\in\mathbb{Z}$を定める。このとき、$\gamma=1,$ $\delta=x+b\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とすると
    $$N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)=N(a-x)\leq\frac{1}{4}<1$$
  2. $a\in\mathbb{Z},$ $b\notin\mathbb{Z}$かつ$5b\notin\mathbb{Z}$である場合。$a+5b\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$を満たすように$x\in\mathbb{Z}$を取って、$\gamma=\frac{1-\sqrt{-19}}{2},$ $\delta=x-a\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とする。このとき、$(a+b\frac{1+\sqrt{-19}}{2})\gamma=a\gamma+5b=a+5b-a\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$より
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(a+5b-x\right)<1 \end{align}
  3. $a\in\mathbb{Z},$ $b\notin\mathbb{Z}$かつ$5b\in\mathbb{Z}$である場合。$y\in\mathbb{Z}$$b\in[y-\frac{1}{2},y+\frac{1}{2})$が成り立つように取って、$\gamma=1,$ $\delta=a+y\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とする。このとき、
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left((b-y)\tfrac{1+\sqrt{-19}}{2}\right)\\ &\leq\frac{4}{5}<1 \end{align}
  4. $a,b\notin\mathbb{Z}$かつ$2a,2b\notin\mathbb{Z}$である場合。このとき、適当な$y\in\mathbb{Z}$によって$b\in[y-\frac{1}{3},y+\frac{1}{3})$$2b\in[y-\frac{1}{3},y+\frac{1}{3})$のいずれかが成り立つ。前者の場合、$a\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$となる$x\in\mathbb{Z}$を取って$\gamma=1,$ $\delta=x+y\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とすると
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left((a-x)+(b-y)\frac{1+\sqrt{-19}}{2}\right)\\ &=\left((a-x)+\tfrac{b-y}{2}\right)^2+\frac{19}{4}(b-y)^2\\ &\leq \frac{4}{9}+\frac{19}{36}<1 \end{align}
    後者の場合、$2a\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$となる$x\in\mathbb{Z}$を取って$\gamma=2,$ $\delta=x+y\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とする。
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left((2a-x)+(2b-y)\frac{1+\sqrt{-19}}{2}\right)\\ &\leq\frac{35}{36}<1 \end{align}
  5. $a,b,2a\notin\mathbb{Z}$かつ$2b\in\mathbb{Z}$の場合。$x\in\mathbb{Z}$$2a\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$が成り立つように取って、$\gamma=2,$ $\delta=x+2b\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とする。このとき、
    $$N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)=N(2a-x)<1$$
  6. $a,b,2b\notin\mathbb{Z}$かつ$2a\in\mathbb{Z}$の場合。$5b\in\mathbb{Z}$であるならば$\gamma=5,$ $\delta=x+5b\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$ ($x$$5a\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$を満たす) とする。このとき
    $$N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)=N(5a-x)<1$$
    $5b\notin\mathbb{Z}$であるなら、$\gamma=1-\sqrt{-19},$ $\delta=x-2a\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$ ($x$$2a+10b\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$を満たす) とする。このとき
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N(2a-10b-x)<1 \end{align}
  7. $a,b\notin\mathbb{Z}$かつ$2a,2b\in\mathbb{Z}$の場合。$x\in\mathbb{Z}$$-5b\in[x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})$となるように取って、$\gamma=\frac{1+\sqrt{-19}}{2},$ $\delta=x+(a+b)\frac{1+\sqrt{-19}}{2}$とする ($a+b\in\mathbb{Z}$は条件から従う)。このとき、
    $$N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)=N(-5b-x)<1$$

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-19}}{2}\right]$は単項イデアル整域。

$I$$\mathcal{O}=\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-19}}{2}\right]$の0でないイデアルとする。このとき、$\beta\in I$$N(\beta)$が最小になるように取ると、明らかに$\beta\mathcal{O}\subseteq I$。今、$\alpha\in I$が存在して$\frac{\beta}{\alpha}\notin\mathcal{O}$を仮定すると、定理から$0< N(\alpha\gamma-\beta\delta)< N(\beta)$が成り立つ$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$が存在する。$I$がイデアルであるため$\alpha\gamma-\beta\delta\in I$が成り立つが、そうすると$N(\beta)$の最小性に矛盾する。従って$I\subseteq(\beta)$であり、$(\beta)=I$が成り立つことがわかる。

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-43}}{2}\right]$

$x\in\mathbb{R}$に対して、$\langle x\rangle=\lfloor x+\frac{1}{2}\rfloor$すなわち$x\in[n-\frac{1}{2},n+\frac{1}{2})$を満たす$n\in\mathbb{Z}$を表すものとする。このとき、

  1. $|x-\langle x\rangle|\leq\frac{1}{4}$
  2. $|2x-\langle 2x\rangle|\leq\frac{1}{4}$
  3. $|3x-\langle 3x\rangle|\leq\frac{1}{4}$

の少なくとも1つが成り立つ。

$x\in\mathbb{R}$$n\in\mathbb{Z}$に対して$\langle x+n\rangle=\langle x\rangle+n$が成り立つため、$0\leq x<1$の範囲で示せば十分である。このとき、
(ⅰ) $0\leq x\leq\frac{1}{4}$ならば$|x-\langle x\rangle|\leq\frac{1}{4}$
(ⅱ) $\frac{1}{4}\leq x\leq\frac{5}{12}$ならば$|3x-\langle 3x\rangle|\leq\frac{1}{4}$
(ⅲ) $\frac{3}{8}\leq x\leq\frac{5}{8}$ならば$|2x-\langle 2x\rangle|\leq\frac{1}{4}$
(ⅳ) $\frac{7}{12}\leq x\leq\frac{3}{4}$ならば$|3x-\langle 3x\rangle|\leq\frac{1}{4}$
(ⅴ) $\frac{3}{4}\leq x< 1$ならば$|x-\langle x\rangle|\leq\frac{1}{4}$

よって1.~3.の少なくとも1つは成立することがわかる。

$\mathcal{O}=\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-43}}{2}\right]$において、$\alpha,\beta\in\mathcal{O},$ $\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\alpha)\leq N(\beta)$であるとき、$0< N(\alpha\gamma-\beta\delta)< N(\beta)$を満たすような$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$が存在する。

$\alpha,\beta\in\mathcal{O},$ $\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\beta)\leq N(\alpha)$に対して、$N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)<1$となる$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$の存在を言えばよい。$\frac{\alpha}{\beta}=a+b\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$と置くと、条件から$a,b\in\mathbb{Q}$は少なくとも片方が整数ではない。また、補題8より、$|b-\langle b\rangle|\leq\frac{1}{4},$ $|2b-\langle 2b\rangle|\leq\frac{1}{4},$ $|3b-\langle 3b\rangle|\leq\frac{1}{4}$のうち少なくとも1つは成り立つ。

  1. $b\in\mathbb{Z}$ (従って$a\notin\mathbb{Z}$) の場合、$\gamma=1,$ $\delta=\langle a\rangle+b\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$とおく。このとき
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N(a-\langle a\rangle)\\ &\leq\frac{1}{4}<1 \end{align}
  2. $kb\in\mathbb{Z}$かつ$ka\notin\mathbb{Z}$ ($k=2,3$) が成り立つ場合、$\gamma=k,$ $\delta=\langle ka\rangle+kb\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$とおく。このとき
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N(ka-\langle ka\rangle)\\ &\leq\frac{1}{4}<1 \end{align}
  3. $0<|kb-\langle kb\rangle|\leq\frac{1}{4}$ ($k=1,2,3$) が成り立つ場合、$\gamma=k,$ $\delta=\langle ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle+\langle kb\rangle\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$とすると
    \begin{align} \frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta &=k\left(a+b\tfrac{1+\sqrt{-43}}{2}\right)-\left(\langle ka+\tfrac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle+\langle kb\rangle\tfrac{1+\sqrt{-43}}{2}\right)\\ &=(ka+\tfrac{kb-\langle kb\rangle}{2}-\langle ka+\tfrac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle)+(kb-\langle kb\rangle)\tfrac{\sqrt{-43}}{2} \end{align}であることから、
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &\leq\frac{1}{4}+\frac{43}{64}<1 \end{align}が成り立つ。
  4. $b\notin\mathbb{Z}$かつ$a\in\mathbb{Z},$ $kb\in\mathbb{Z}$ ($k=2,3$) が成り立つ場合。このとき
    \begin{align} \left(a+b\frac{1+\sqrt{-43}}{2}\right)\cdot\frac{1-\sqrt{-43}}{2} &=a+11b-a\frac{1+\sqrt{-43}}{2} \end{align}
    $b\notin\mathbb{Z}$かつ$kb\in\mathbb{Z}$より$11b\notin\mathbb{Z}$が従うため、$\gamma=\frac{1-\sqrt{-43}}{2},$ $\delta=\langle a+11b\rangle-a\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$と置くと
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N(11b-\langle 11b\rangle)\\ &\leq\frac{1}{4}<1 \end{align}
  5. $a,b\notin\mathbb{Z}$かつ$ka,kb\in\mathbb{Z}$$k=2$または$k=3$のどちらかで成立する場合。このとき、$a+b\in\mathbb{Z}$$a-b\in\mathbb{Z}$の少なくとも片方が成り立つ。$a+b\in\mathbb{Z}$のとき、$\gamma=\frac{1+\sqrt{-43}}{2},$ $\delta=\langle-11b\rangle+(a+b)\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$と置く。
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N(-11b-\langle-11b\rangle)\\ &\leq\frac{1}{4}<1 \end{align}
    $a-b\in\mathbb{Z}$のとき、$\gamma=\frac{3-\sqrt{-43}}{2},$ $\delta=\langle 2a+11b\rangle+(-a+b)\frac{1+\sqrt{-43}}{2}$とすると、$a,b$の条件から$2a+11b\notin\mathbb{Z}$が得られるため
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N(2a+11b-\langle 2a+11b\rangle)\\ &\leq\frac{1}{4}<1 \end{align}

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-43}}{2}\right]$は単項イデアル整域である。

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-67}}{2}\right]$

$x\in\mathbb{R}$に対して、$\langle x\rangle=\lfloor x+\frac{1}{2}\rfloor$すなわち$x\in[n-\frac{1}{2},n+\frac{1}{2})$を満たす$n\in\mathbb{Z}$を表すものとする。このとき、$|kx-\langle kx\rangle|\leq\frac{1}{5}$$k=1,2,3,4$のうち少なくとも1つにおいて成立する。

補題8と同様に、$0\leq x<1$について示せれば十分。このとき、以下の7つの場合のいずれかによって主張が成り立つ。

  1. $0\leq x\leq \frac{1}{5}$ならば$|x-\langle x\rangle|\leq\frac{1}{5}$
  2. $\frac{1}{5}\leq x\leq \frac{3}{10}$ならば$|4x-\langle 4x\rangle|\leq\frac{1}{5}$
  3. $\frac{4}{15}\leq x\leq\frac{2}{5}$ならば$|3x-\langle 3x\rangle|\leq\frac{1}{5}$
  4. $\frac{2}{5}\leq x\leq\frac{3}{5}$ならば$|2x-\langle 2x\rangle|\leq\frac{1}{5}$
  5. $\frac{3}{5}\leq x\leq\frac{11}{15}$ならば$|3x-\langle 3x\rangle|\leq\frac{1}{5}$
  6. $\frac{7}{10}\leq x\leq\frac{4}{5}$ならば$|4x-\langle 4x\rangle|\leq\frac{1}{5}$
  7. $\frac{4}{5}\leq x< 1$ならば$|x-\langle x\rangle|\leq\frac{1}{5}$

$\mathcal{O}=\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-67}}{2}\right]$において、$\alpha,\beta\in\mathcal{O},$ $\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\alpha)\leq N(\beta)$であるとき、$0< N(\alpha\gamma-\beta\delta)< N(\beta)$を満たすような$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$が存在する。

$\frac{\alpha}{\beta}=a+b\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$と置くと、$a,b$の少なくとも一方は整数ではない。
\begin{align} (a+b\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2})\tfrac{1-\sqrt{-67}}{2}&=a+17b-a\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2}\\ (a+b\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2})\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2}&=-17b+(a+b)\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2}\\ (a+b\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2})\tfrac{3-\sqrt{-67}}{2}&=2a+17b+(-a+b)\tfrac{1+\sqrt{-67}}{2} \end{align}であることを用いて、次のように場合分けする。

  1. $b\in\mathbb{Z},$ $a\notin\mathbb{Z}$の場合、$\gamma=1,$ $\delta=\langle a\rangle+b\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$と置くと、$N(\frac{\alpha}{\beta}-\delta)=N(a-\langle a\rangle)<1$
  2. $2b\in\mathbb{Z},$ $2a\notin\mathbb{Z}$の場合、$\gamma=2,$ $\delta=\langle 2a\rangle+2b\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$と置くと、$N(2\cdot\frac{\alpha}{\beta}-\delta)=N(2a-\langle 2a\rangle)<1$
  3. $a\in\mathbb{Z},$ $17b\notin\mathbb{Z}$の場合、$\gamma=\frac{1-\sqrt{-67}}{2},$ $\delta=\langle a+17b\rangle-a\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$と置くと、$N(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta)=N(a+17b-\delta)<1$
  4. $2a\in\mathbb{Z},$ $34b\notin\mathbb{Z}$の場合、$\gamma=1-\sqrt{-67},$ $\delta=\langle 2(a+17b)\rangle-2a\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$と置くと、$N(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta)=N(2a+34b-\langle 2a+34b\rangle)<1$
  5. $a+b\in\mathbb{Z},$ $17b\notin\mathbb{Z}$の場合、$\gamma=\frac{1+\sqrt{-67}}{2},$ $\delta=\langle-17b\rangle+(a+b)\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$とすると、$N(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta)=N(-17b-\langle-17b\rangle)<1$
  6. $k=1,2,3,4$のいずれかの場合について、$0<|kb-\langle kb\rangle|\leq\frac{1}{5}$が成り立つ場合。$\gamma=k,$ $\delta=\langle ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle+\langle kb\rangle\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$とすると、
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}-\langle ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle+(kb-\langle kb\rangle)\frac{\sqrt{67}}{2}\right)\\ &=\left(ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}-\langle ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle\right)^2+(kb-\langle kb\rangle)^2\cdot\frac{67}{4}\\ &\leq\frac{1}{4}+\frac{67}{100}=\frac{23}{25}<1 \end{align}
  7. $-a+b\in\mathbb{Z}$であって、$k=2,3,4$のいずれかについて$ka,kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。このとき、$2a+17b\notin\mathbb{Z}$が従うため、$\gamma=\frac{3-\sqrt{-67}}{2},$ $\delta=\langle 2a+17b\rangle+(-a+b)\frac{1+\sqrt{-67}}{2}$とすると$N(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta)=N(2a+17b-\langle 2a+17b\rangle)<1$

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-67}}{2}\right]$は単項イデアル整域である。

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-163}}{2}\right]$

$x\in\mathbb{R}$に対して、$\langle x\rangle=\lfloor x+\frac{1}{2}\rfloor$すなわち$x\in[n-\frac{1}{2},n+\frac{1}{2})$を満たす$n\in\mathbb{Z}$を表すものとする。このとき、$|kx-\langle kx\rangle|\leq\frac{1}{8}$$k=1,\dots,7$のうち少なくとも1つにおいて成立する。

(概略)

補題8,10と同様に、$0\leq x<1$について示せば十分であり、またそれは区間$[0,1)$を適切な19個の区間で覆うことで示される。

$\mathcal{O}=\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-163}}{2}\right]$において、$\alpha,\beta\in\mathcal{O},$ $\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\alpha)\leq N(\beta)$であるとき、$0< N(\alpha\gamma-\beta\delta)< N(\beta)$を満たすような$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$が存在する。

$\alpha,\beta\in\mathcal{O},$ $\beta\neq 0,$ $\frac{\alpha}{\beta}\notin\mathcal{O},$ $N(\beta)\leq N(\alpha)$に対して、$N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right)<1$となる$\gamma,\delta\in\mathcal{O}$の存在を言えばよい。$\frac{\alpha}{\beta}=a+b\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと、条件から$a,b\in\mathbb{Q}$は少なくとも片方が整数ではない。

  1. $k=1,2,3$のいずれかについて、$ka\notin\mathbb{Z},$ $kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。$\gamma=k,$ $\delta=\langle ka\rangle+kb\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと、$N(\frac{\alpha}{\beta}-\delta)=N(ka-\langle ka\rangle)<1$
  2. $k=1,2,3$のいずれかについて、$ka\in\mathbb{Z},$ $41kb\notin\mathbb{Z}$が成り立つ場合。$\gamma=k\cdot\frac{1-\sqrt{-163}}{2},$ $\delta=ka+\langle 41kb\rangle-ka\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと、$N(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta)=N(41kb-\langle 41kb\rangle)<1$
  3. $a+b\in\mathbb{Z},$ $41b\notin\mathbb{Z}$の場合。$\gamma=\frac{1+\sqrt{-163}}{2},$ $\delta=\langle-41b\rangle+(a+b)\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと、$N(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta)=N(-41b-\langle-41b\rangle)<1$
  4. $k=1,\dots,7$のいずれかにおいて$0<|kb-\langle kb\rangle|\leq\frac{1}{8}$が成り立つ場合。$\gamma=k,$ $\delta=\langle ka+\frac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle+\langle kb\rangle\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと、
    \begin{align} N\left(\frac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(ka+\tfrac{kb-\langle kb\rangle}{2}-\langle ka+\tfrac{kb-\langle kb\rangle}{2}\rangle+(kb-\langle kb\rangle)\tfrac{\sqrt{-163}}{2}\right)\\ &\leq\frac{1}{4}+\frac{1}{64}\cdot\frac{163}{4}=\frac{227}{256}<1 \end{align}
  5. $a,b\notin\mathbb{Z},$ $-a+b\in\mathbb{Z}$かつ$k=2,\dots,7$のいずれかにおいて$ka,kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。このとき、条件から$2a+41b\notin\mathbb{Z}$が成り立つため、$\gamma=\frac{3-\sqrt{-163}}{2},$ $\delta=\langle 2a+41b\rangle+(-a+b)\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(2a+41b-\langle 2a+41b\rangle\right)\\ &<1 \end{align}
  6. $a,b\notin\mathbb{Z},$ $a+2b\in\mathbb{Z}$かつ$k=5,7$のどちらかにおいて$ka,kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。このとき$a=n-2b$と置くと$a-41b=n-43b\notin\mathbb{Z}$が成り立つ。従って$\gamma=\frac{3+\sqrt{-163}}{2},$ $\delta=\langle a-41b\rangle+(a+2b)\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(a-41b-\langle a-41b\rangle\right)\\ &<1 \end{align}
  7. $a,b\notin\mathbb{Z},$ $-a+2b\in\mathbb{Z}$かつ$k=5,7$のどちらかにおいて$ka,kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。このとき$a=n+2b$とすると、$3a+41b=3n+47b\notin\mathbb{Z}$が成り立つ。従って$\gamma=\frac{5-\sqrt{-163}}{2},$ $\delta=\langle 3a+41b\rangle+(-a+2b)\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(3a+41b-\langle 3a+41b\rangle\right)\\ &<1 \end{align}
  8. $a,b\notin\mathbb{Z},$ $2a+b\in\mathbb{Z}$かつ$k=5,7$のどちらかにおいて$ka,kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。このとき$a+82b\notin\mathbb{Z}$が成り立つため、$\gamma=\sqrt{-163},$ $\delta=\langle-a-82b\rangle+(2a+b)\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(-a-82b-\langle-a-82b\rangle\right)\\ &<1 \end{align}
  9. $a,b\notin\mathbb{Z},$ $-2a+b\in\mathbb{Z}$かつ$k=5,7$のどちらかにおいて$ka,kb\in\mathbb{Z}$が成り立つ場合。このとき$3a+82b\notin\mathbb{Z}$が成り立つため、$\gamma=2-\sqrt{-163},$ $\delta=\langle 3a+82b\rangle+(-2a+b)\frac{1+\sqrt{-163}}{2}$と置くと
    \begin{align} N\left(\tfrac{\alpha}{\beta}\gamma-\delta\right) &=N\left(3a+82b-\langle 3a+82b\rangle\right)\\ &<1 \end{align}

$\mathbb{Z}\left[\frac{1+\sqrt{-163}}{2}\right]$は単項イデアル整域である。

参考文献

[1]
Neukirch, Jürgen, Algebraic Number Theory, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften, Springer Berlin, Heidelberg, 1999
[3]
後藤四郎, 渡辺敬一, 可換環論, 日本評論社, 2011
[4]
Clark, David A., A Quadratic Field which Is Euclidian but Not Norm-Euclidian, Manuscripta Mathematica, 1994, 327–330
投稿日:20231220
更新日:113

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merliborn
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圏論や普遍代数に興味があります。現在の専門は型理論および圏論的意味論です。

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