ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
今回は解答の出来がかなり雑になっているので、議論を追う際は気をつけて追ってください。
2013B02
多項式環及びその商体をとる。変数多項式環のイデアルによる剰余をとし、代数の準同型を
で定義する。
- によってを加群と見たとき、は有限生成自由加群であることを示し、そのランクを求めなさい。
- の冪等元を全て挙げなさい。
- 自然な単射環準同型によってをの部分環と見做す。(2)で求めた冪等元たちとで生成される環をとおき、線型空間としての剰余を考える。線型空間の次元を求めなさい。
- 乗法群の単射は同型でないことを示しなさい。
- まずの任意の元はのような多項式で代表される。ここである多項式が
を満たしていたとき、を代入することでの仮定と併せてが従う。同様の議論で及びも従う。以上から捩れを持つ元はに限ることがわかるからPID上の有限生成加群の構造定理からは自由加群である。
次に
は次元線型空間なので、の生成元の個数は以上である。そして実際に於いて
であることからは上から生成されている。以上からである。 - まずの元
が冪等であったとする。ここでのいずれの極にも含まれないを任意に取ったとき、を代入すると、これはである。いまは任意に取っているからは定数であり、よってである。またを代入することで
がわかる。よって冪等元としてあり得るのは
の場合であり、これらに対応するの元は
のつである。そしてこれらは実際に冪等である。 - まずの任意の元は複素数及びを用いて
と表され、この表し方は通りしかない。実際通りの方法で表される元があったとすると、少なくとも一方はでないある複素数について
が満たされていることになるが、次数を考えることでこのようなことは起こり得ないとわかる。以上から線型空間として
であるからが従う。 - 実際に於いて
は一方が他方の逆数になっているから同型ではない