0

東大数理院試過去問解答例(2013B02)

225
0
$$$$

ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

今回は解答の出来がかなり雑になっているので、議論を追う際は気をつけて追ってください。

2013B02

多項式環$A=\mathbb{C}[T]$及びその商体$K=\mathbb{C}(T)$をとる。$3$変数多項式環$\mathbb{C}[X,Y,Z]$のイデアル$I=(XY,YZ,ZX)$による剰余を$B=\mathbb{C}[X,Y,Z]/I$とし、$\mathbb{C}$代数の準同型$f:A\to B$
$$ f(T)=\overline{X+Y+Z} $$
で定義する。

  1. $f$によって$B$$A$加群と見たとき、$B$は有限生成自由$A$加群であることを示し、そのランクを求めなさい。
  2. $B\otimes_AK$の冪等元を全て挙げなさい。
  3. 自然な単射環準同型$B\hookrightarrow B\otimes_AK$によって$B$$B\otimes_AK$の部分環と見做す。(2)で求めた冪等元たちと$B$で生成される環を$C$とおき、$\mathbb{C}$線型空間としての剰余$C/B$を考える。$\mathbb{C}$線型空間$C/B$の次元を求めなさい。
  4. 乗法群の単射$B^\times \hookrightarrow C^\times$は同型でないことを示しなさい。
  1. まず$B$の任意の元は$a+bXF(X)+cYG(Y)+dZH(Z)$のような多項式で代表される。ここである多項式$I(T)\neq0$
    $$ I(X+Y+Z)(a+bXF(X)+cYG(Y)+dZH(Z))\in(XY,YZ,ZX) $$
    を満たしていたとき、$Y=Z=0$を代入することで$I(X)\neq0$の仮定と併せて$a+bXF(X)=0$が従う。同様の議論で$a+cYG(Y)=0$及び$a+dZH(Z)=0$も従う。以上から捩れを持つ元は$0$に限ることがわかるからPID上の有限生成加群の構造定理から$B$は自由$A$加群である。
    次に
    $$ \mathbb{C}[X,Y,Z]/(XY,YZ,ZX,X+Y+Z)=\mathbb{C}[X,Y]/(X^2,XY,Y^2) $$
    $3$次元$\mathbb{C}$線型空間なので、$B$の生成元の個数は$3$以上である。そして実際$B$に於いて
    $$ X^n=X(X+Y+Z)^{n-1} $$
    $$ Y^n=Y(X+Y+Z)^{n-1} $$
    $$ Z^n=(X+Y+Z)^n-X^n-Y^n $$
    であることから$B$$A$$1,X,Y$から生成されている。以上から$\mathrm{rank}_AB={\color{red}3}$である。
  2. まず$B$の元
    $$ f(X+Y+Z)+Xg(X+Y+Z)+Yh(X+Y+Z) $$
    が冪等であったとする。ここで$f,g,h$のいずれの極にも含まれない$z$を任意に取ったとき、$(X,Y,Z)=(0,0,z)$を代入すると、これは$f(z)=f(z)^2$である。いま$z$は任意に取っているから$f$は定数であり、よって$f=0,1$である。また$(X,Y,Z)=(0,z,0),(z,0,0)$を代入することで
    $$ f+zh(z)=(f+zh(z))^2 $$
    $$ f+zg(z)=(f+zh(z))^2 $$
    がわかる。よって冪等元としてあり得るのは
    $$ (f,g,h)={(0,0,0),\left(0,0,\frac{1}{T}\right),\left(0,\frac{1}{T},0\right),\left(0,\frac{1}{T},\frac{1}{T}\right),(1,0,0),\left(1,-\frac{1}{T},0\right),\left(1,0,-\frac{1}{T}\right),\left(1,-\frac{1}{T},-\frac{1}{T}\right)} $$
    の場合であり、これらに対応する$B\otimes C$の元は
    $$ {\color{red}0,1,\frac{X}{X+Y+Z},\frac{Y}{X+Y+Z},\frac{Z}{X+Y+Z},\frac{X+Y}{X+Y+Z},\frac{Y+Z}{X+Y+Z},\frac{Z+X}{X+Y+Z}} $$
    $8$つである。そしてこれらは実際に冪等である。
  3. まず$C$の任意の元は複素数$s,t$及び$b\in B$を用いて
    $$ b+s\frac{X}{X+Y+Z}+t\frac{Y}{X+Y+Z} $$
    と表され、この表し方は$1$通りしかない。実際$2$通りの方法で表される元があったとすると、少なくとも一方は$0$でないある複素数$a,b$について
    $$ aX+bY\in(X+Y+Z,XY,YZ,ZX) $$
    が満たされていることになるが、次数を考えることでこのようなことは起こり得ないとわかる。以上から$\mathbb{C}$線型空間として
    $$ C\simeq B\oplus\mathbb{C}\frac{X}{X+Y+Z}\oplus\mathbb{C}\frac{Y}{X+Y+Z} $$
    であるから$\dim_\mathbb{C}C/B={\color{red}2}$が従う。
  4. 実際$C$に於いて
    $$ 1+\frac{X}{X+Y+Z} $$
    $$ 1-\frac{1}{2}\frac{X}{X+Y+Z} $$
    は一方が他方の逆数になっているから同型ではない
投稿日:2024810
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

藍色日和
藍色日和
56
101057
藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中