行列式は既約多項式であることを微分を用いて証明します.
2024/12/16追記:微分を使わなくても証明できたので差し替えました.
間違いがあれば教えてください.
以下では[1]の内容を証明抜きに, あるいは断りなく用います.
まず正確な主張を述べます.
$R$を整域とする. また$R$上の$n^{2}$変数多項式環を$A_{n}=R[x_{11},\ldots,x_{1n},\ldots,x_{n1},\ldots,x_{nn}]$とおく.
$\det$を$A_{n}$の元
$$
\sum_{\sigma\in\mathfrak{S}_{n}}\text{sgn}(\sigma)x_{1\sigma(1)}\ldots x_{n\sigma(n)}
$$
として定める. ($n$次行列の行列式)
このとき, $\det$は$A_{n}$の元として既約多項式である.
$\det=fg$ ($f$,$g\in A_{n}$)とする.
まず$R$は整域なので$A_{n}$の単元群は$R$の単元群に一致することに注意する(このことは次数の考察からわかる).
もしある変数$x_{ij}$が$f$, $g$の両方に現れるとすると$\det=fg$には$x_{ij}^{2}$が現れるが, これは$\det$は行列のどの成分の$2$乗も現れないことに矛盾する. よって$f$, $g$に共通する変数$x_{ij}$は存在しない.
そこで必要なら$f$, $g$を入れ替え, $f$に$x_{11}$が現れる($g$には現れない)としてよい.
ここでもし$g$に$x_{1i}$ $(2\leq i\leq n)$が現れるとすると$\det$に$x_{11}x_{1i}$が現れる. これは$\det$の形に矛盾する. よって$x_{1i}$$(1\leq i\leq n)$は$f$に現れ, $g$には現れない.
このことから, $g$に$x_{ii}$ $(2\leq i\leq n)$が現れるとすると$\det$に$x_{1i}x_{ii}$が現れてしまい矛盾($\sigma(1)\ldots\sigma(n)$は相異なる). よって$x_{ii}$ $(1\leq i\leq n)$は$f$に現れ, $g$には現れない.
以上と$\det$の形から, $f$には$x_{11}\ldots x_{nn}$なる項が現れなくてはならない. $\det$は$n$次斉次式なので, $R$が整域であることから$f$, $g$は$n$次以下の斉次式である. 今$f$が$n$次以上であることが分かったので, $f$は$n$次斉次式である. よって$\det=f$である.
明らかかつあまり意味がなさそうな系として, 代数閉体上の非正則行列全体はAffine代数多様体となることがこの事実から従う.