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東大数理院試2025年度専門B問13解答

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東大数理の院試(2025年度専門B問13)の解答です.
自分が作った解答は ここ に置いてあります.

(東大数理2025年専門B問13)

N={1,2,}とし,p0<p<1を満たす定数とする.確率空間(Ω,F,P)上で定義された確率変数列
X1,X2,X3,,Y1,Y2,Y3,
は独立であるとする.Xi(iN)は実数に値をとり,平均0,分散1を持つとする.Yr(rN)Nに値をとり,
P(Yr=k)=p(1p)k1(kN)
を満たすとする.各rNに対して
Ur=i=1YrXi
とおく.以下の問に答えよ.

  1. rNに対してE[Yr]およびE[Ur2]を求めよ.
  2. r,sNが相異なるとき,E[UrUs]を求めよ.
  3. nNに対して
    Sn=1nr=1nUr
    とおく.このとき,ある確率変数Sが存在して
    limnE[|SnS|2]=0
    が成り立つことを示せ.
  4. rNに対して
    Vr=i=1YrXi+r
    とおく.十分大きなrNに対して,V1+Vrの分布がU1+Urの分布と異なることを示せ.

(1)
E[Yr]=k1kp(1p)k1=p(1(1p))2=1p
である.また
E[(i=1kXi)2]=1i,jkE[XiXj]=i=1kE[Xi2]=k
より
E[Ur2]=k1E[(i=1kXi)2]P(Yr=k)=k1kP(Yr=k)=E[Yr]=1p.
(2)
1in1jmE[XiXj]=i=1min{n,m}E[Xi2]=min{n,m}
より
E[UrUs]=n,m1min{n,m}P(Yr=n)P(Ys=m)=n1nP(Yr=n)2+2n<mnP(Yr=n)P(Ys=m).
ここで右辺第2項は
2n1nP(Yr=n)P(Ys>n)=2n1np(1p)n1(1p)n=2p(1p)n1n(1p)2(n1)
だから,
E[UrUs]=n1np2(1p)2(n1)+2p(1p)n1n(1p)2(n1)=p(2p)n1n(1p)2(n1)=p(2p)(1(1p)2)2=1p(2p).
(3)
Sn=1nr=1ni=1YrXi=1ni1#{r[1,n];Yri}Xi=1ni1r=1n1{Yri}Xi
である.Tn,i=1nr=1n1{Yri}とおく.
E[Tn,i]=E[1{Yri}]=P(Yri)=(1p)i1
より
E[|Tn,i(1p)i1|2]=V[Tn,i]=1n2r=1nV[1{Yri}]1nE[1{Yri}2]=1nE[1{Yri}]=1nP(Yri)=1n(1p)i1
であるから,
E[|Sni1(1p)i1Xi|2]=i1E[|Tn,i(1p)i1|2]i11n(1p)i1=1np0(n).
(4)
確率変数Xの特性関数をϕX(t)と書く.またϕ(t)=ϕX1(t)とする.
ϕV1+Vr(t)=E[ei(V1+Vr)t|Yr]P(Yr<r)+E[ei(V1+Vr)t|Yr]P(Yrr)
の右辺第2項の絶対値はP(Yrr)=(1p)r10(r)であり,第1項は
n<r,m1E[ei(Y1+Yr)t|Y1=n,Yr=m]P(Y1=n)P(Yr=m)=n<r,m1ϕ(t)n+mp2(1p)n+m2n,m1ϕ(t)n+mp2(1p)n+m2(r)()=(n1ϕ(t)np(1p)n1)2=(pϕ(t)1(1p)ϕ(t))2
となる.
一方
ϕU1+Ur(t)=n,m1E[ei(U1+Ur)t|Y1=n,Yr=m]P(Y1=n)P(Yr=m)=n,m1ϕ(2t)min{n,m}ϕ(t)max{n,m}min{n,m}p2(1p)n+m2=p2(1p)2(1p)2ϕ(2t)1(1p)2ϕ(2t)1+(1p)ϕ(t)1(1p)ϕ(t)()=p2ϕ(2t)1(1p)2ϕ(2t)1+(1p)ϕ(t)1(1p)ϕ(t)
である.ただしa,b,cC(|a|,|b|,|c|<1)に対し
n,m1amin{n,m}bmax{n,m}min{n,m}cn+m=n1(ac2)n+2n1m>nanbmncn+m=ac21ac2+2n1(bc)n+11bc(ab1c)n=ac21ac2+2bc1bcac21ac2=ac21ac21+bc1bc
となることを用いた.
今十分大きな任意のrに対しV1+Vrの分布とU1+Urの分布が等しいとすると,任意のtRに対し()()が等しいから
ϕ(t)21(1p)2ϕ(t)2=ϕ(2t)1(1p)2ϕ(2t)
となる.
ここでf(x)=x1(1p)2x(|x|1)は狭義単調増加であることと|ϕ(t)|1より,任意のtRϕ(2t)=ϕ(t)2が成り立つ.これより
ϕ(t)=ϕ(t/2)2==ϕ(t/2n)2n=(1+ϕ(θn)t2n)2neϕ(0)t=1(n)
となる.ここで|θn|<|t|/2n.よってX1=0 a.s. となるが,これはV[X1]=1に矛盾.

投稿日:8日前
更新日:8日前
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delta
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