ここでは東大数理の修士課程の院試の2016B08の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2016B08
上の次形式(但し)に対して、
を考える。に相対位相を考える。
- は級多様体の構造をもち、群のへの作用は推移的であることを示せ。
- の開部分集合上の微分形式
は上の級微分形式に一意的に拡張できることを示せ。以下この微分形式をとおく。 - はの作用で不変であることを示せ。
- 実数について、上の微分形式
を考える。が閉形式になるためにはであることが必要充分であることを示せ。または完全形式にはなり得ないことを示せ。
- であるから、正則値定理からはの部分多様体である。次に作用が推移的であることを示す。まず実数について行列
はの元で、をに移す。一方行列
はの元で、をに移す。以上より任意のに対してであるから推移性が従う。 - と座標変換する。このとき
と表せ、これによって上の微分形式に拡張できる。 - まずは及び
の型の行列の積の型をしている。よってこれらの行列の作用で不変であることを示せば良い。ここでとすると
である。但し
とおいている。このとき
であるから
が従う。よってである。
次にとすると
である。但し
とおいている。このとき
であるから
が従う。よってである。
最後にもこれまでの議論と同様にして示せる(本来はきちんと書くべきところですが、ここでは冗長さを排すことを優先します)。以上からはの作用で不変である。 - まずである。よって
であるから、は閉形式でになるのはの場合に限る。よって前半が示せた。
以下後半を示す。前半の結果からが完全形式になり得るのはの場合しかない。ここで上の関数がを満たすとすると、の部分集合に於いて
になるから矛盾する。よってが完全形式になることはない。