ここでは東大数理の修士課程の院試の2017B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2017B02
を素数とし、を濃度の有限集合とする。ここで作用
が二重推移的、つまり任意の及びについてかつであるようなが存在するものとする。このとき以下の問いに答えなさい。
(1) はの倍数であることを示しなさい。
(2) となるような及びの例を挙げなさい。
(3) となるようなは(2)で挙げたもので(同型を除いて)尽くされていることを示しなさい。
- まずは推移的であるからあるの固定部分群をとおくと、
である。次にのうちの固定部分群をとおくと、二重推移性から
である。以上から
が従うから、所望の結果が得られる。 - ここでとおき、更にの間の全単射全体の為す群の部分群
を考える。まずである。このとき自然に定まる作用
を考えると、これは二重推移である。以上から上で構成した,及びは所望の条件を満たしている。 - このときは位数の部分群を持つが、Sylowの定理からこのような部分群は一つしかない。これをとおく。次にあるを固定し、その固定化部分群をとる。このとき
であることからがわかる。ここで半直積の構造から群準同型
が誘導される。ここであるがを満たしていたとする。このときであるから、はとの両方を固定するが、これはを意味する。以上から準同型は位数の群の間の単射であり、左辺はに同型であるから、が従う。ここで半直積で誘導される群準同型が単射であるようなものは同型を除いて一意に定まるから、としてあり得るのは同型を除いて(2)で挙げた例のみである。