0

東大数理院試過去問解答例(2017B02)

64
0
$$$$

ここでは東大数理の修士課程の院試の2017B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2017B02

$p$を素数とし、$S$を濃度$p$の有限集合とする。ここで作用
$$ \begin{split} \rho:G\times S&\to S\\ (g,x)&\mapsto gx \end{split} $$
が二重推移的、つまり任意の$x_1\neq x_2\in S$及び$y_1\neq y_2$について$gx_1=y_1$かつ$gx_2=y_2$であるような$g\in G$が存在するものとする。このとき以下の問いに答えなさい。
(1) $|G|$$p(p-1)$の倍数であることを示しなさい。
(2) $|G|=p(p-1)$となるような$G$及び$S$の例を挙げなさい。
(3) $|G|=p(p-1)$となるような$G$は(2)で挙げたもので(同型を除いて)尽くされていることを示しなさい。

  1. まず$\rho$は推移的であるからある$x\in S$の固定部分群を$G_x$とおくと、
    $$ p=|Gx|=\frac{|G|}{|G_x|} $$
    である。次に$G_x$のうち$y(\neq x)\in S$の固定部分群を$G_{x,y}$とおくと、二重推移性から
    $$ p-1=|G_xy|=\frac{|G_x|}{|G_{x,y}|} $$
    である。以上から
    $$ \frac{|G|}{|G_{x,y}|}=p(p-1) $$
    が従うから、所望の結果が得られる。
  2. ここで$S=\mathbb{F}_p$とおき、更に$S$の間の全単射全体の為す群の部分群
    $$ G=\left\{\left( \begin{split} S&\to S\\ x&\mapsto ax+b \end{split} \right)\middle|a\in\mathbb{F}_p^\times,b\in\mathbb{F}_p\right\} $$
    を考える。まず$G=p(p-1)$である。このとき自然に定まる作用
    $$ \begin{split} \rho:G\times S&\to S\\ (f,x)&\mapsto f(x) \end{split} $$
    を考えると、これは二重推移である。以上から上で構成した$G$,$S$及び$\rho$は所望の条件を満たしている。
  3. このとき$G$は位数$p$の部分群を持つが、Sylowの定理からこのような部分群は一つしかない。これを$H=\langle\sigma\rangle$とおく。次にある$x\in S$を固定し、その固定化部分群$G_x$をとる。このとき
    $$ HG_x=G $$
    $$ H\cap G_x=\{1\} $$
    $$ H\triangleleft G $$
    であることから$G=H\rtimes G_x$がわかる。ここで半直積の構造から群準同型
    $$ \begin{split} f:G_x&\to\mathrm{Aut}(H)\\ g&\mapsto (h\mapsto ghg^{-1}) \end{split} $$
    が誘導される。ここである$g\in G_x$$g\sigma=\sigma g$を満たしていたとする。このとき$g=\sigma g \sigma^{-1}$であるから、$g$$x$$\sigma(x)$の両方を固定するが、これは$g=1$を意味する。以上から準同型$f:G_x\to \mathrm{Aut}(H)$は位数$p-1$の群の間の単射であり、左辺は$\mathbb{F}_p^\times$に同型であるから、$G_x\simeq\mathbb{F}_p^\times$が従う。ここで半直積$\mathbb{F}_p\rtimes\mathbb{F}_p^\times$で誘導される群準同型$\mathbb{F}_p^\times\to \mathrm{Aut}(\mathbb{F}_p)$が単射であるようなものは同型を除いて一意に定まるから、$G$としてあり得るのは同型を除いて(2)で挙げた例のみである。
投稿日:2023127
更新日:2023127

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中