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対称群の生成系を構成する

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  本編(note) で使用する生成系の構成法が正しく機能することを証明する.

 5次対称群を例に取る. 部分群(14253)に対して,
(14253)(142),(253)(142),(253),(25)
という操作の列が考えられ, 得られた生成系(142),(253),(25)は生成元として互換を含んでいるためS5と等しいことを主張している.
 証明の準備としていくつかの補題を示す.

 任意の置換は有限個の互換の積で表せるのだから, 任意のi,j(aiaj)が生成できることを示せばよい.
1i<ni<jについて, ijの差で帰納法を用いることにより証明する.
ji=1のとき, (aiaj)(aiai+1)として既に生成系の中に存在する.
ji=kのとき(aiaj)が与えられた生成元の積で表せたとすると,
ji=k+1のとき,
(aiaj)=(aiai+k+1)=(aiai+1)(ai+1ai+k+1)(aiai+1)
(ai+1ai+k+1)は仮定から与えられた生成元の積で表せるため, (aiai+k+1)も生成系に含まれる.
よって, 任意の互換が生成できるため, (a1a2),(a2a3),,(an1an)Sn全体を生成する.

 piを取り,
1pni1のとき,
(a1a2an)p(aiai+1)(a1a2an)p=(ai+pai+p+1)
であるからp1,2,,ni1と動かせば(ai+1ai+2),(ai+2ai+3),,(an1an)が得られる.
ni+1pn1のとき,
(a1a2an)p(aiai+1)(a1a2an)p=(ai+pnai+pn+1)
であるからpni+1,ni+2,,n1と動かせば(a1a2),(a2a3),,(ai1ai)が得られる.
以上より, (a1a2),(a2a3),,(an1an)が得られ, 補題1からこれらの生成系はSnに等しいため, (a1a2an)(aiai+1)(1i<n)Sn全体を生成する.

 以上の補題から最初の定理が示される.

定理(再掲)
以下ではn3とする. n次対称群Snにおける生成系に対して, 次の操作を考える.

1. ある生成元の一部を切り抜いて, 生成系に加えることができる. 即ち, 生成元(aiai+1aj)(0<ji<n)を持つ生成系Sに対して, i<k<l<jとして(akak+1al)を生成系に加え,
S,(akak+1al)
とできる. ただし, S,(akak+1al)S=σ1,σ2,,σmに対してσ1,σ2,,σm,(akak+1al)を表す.

2. ある生成元を任意の位置で切り取ることができる. 即ち, 生成元σ=(aiai+1aj)(0<ji<n)を持つ生成系S=σ1,σ2,,σ,σmに対して,
σ1,σ2,,(aiai+1at),(atat+1aj),σm(i<t<j)
とできる.
 Snにおける長さnの巡回置換(a1a2an)の生成系(a1a2an)から上記の操作1または2を順繰りに施し, 生成元に互換が現れれば, その生成系はSnと等しい.

 以下では操作1を切り抜き, 操作2を切り取り, 切り抜きと切り取りによって得られた互換を生成元として含む生成系を終系と呼ぶ. また, 巡回置換(a1a2an)を順序対a1,a2,,anと見做すと, 切り抜きと切り取りの前後で順序関係は保存され, ai,ai+1がともに含まれる終系の置換を順序対と見做したとき, ai<ak<ai+1を満たすakは存在しないものとする.
 切り取りと切り抜きの定義から, 終系において, 任意のaiを含む置換が必ず存在し, i1,nかつaiがその置換において端に位置するのなら, aiを含む置換が2つ以上存在する. ただし, aiが置換の端に位置するとは, aiを含む置換を順序対と見做した際に, ak<aiまたはai<akなるakが存在しないということである. 以上のことから, 終系における互換は(aiai+1)の形をしており, n3よりi,i+1が同時に1またはnにならないため, ai,ai+1の少なくとも一方は(aiai+1)以外の置換に含まれていることが分かる.
 ここで, aiが他の置換σに含まれているとする.
(1) aiσの端に位置しているとき
 σ=(akak+1ai)として,
(akak+1ai)q(aiai+1)(akak+1ai)q=(ak+q1ai+1)
q1,2,,ikと動かすと(akai+1),(ak+1ai+1),,(ai1ai+1)が得られる. さらに(ak+q1ai+1)(ak+qai+1)から
(ak+q1ai+1)(ak+qai+1)(ak+q1ai+1)=(ak+q1ak+q)
のように隣接互換が得られる.
(2) aiσの端に位置していないとき
 σ=(akak+1al)とすると, ai+1σに含まれているため, 補題2から(aiai+1)σの積で隣接互換(akak+1),(ak+1ak+2),,(al1al)を表すことができる.
 この議論はai+1が他の置換に含まれているとしても同様に進み, (1),(2)の操作で得られた隣接互換についてさらに(1),(2)の操作を行うといった具合で, 終系においては, 繰り返し巡回置換を隣接互換により分解していくことができるため, 補題1から, 終系はSnに等しいと言える.

投稿日:311
更新日:418
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有限群論 好きな群は6次対称群

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