はじめに
これから、何回かに分けて、二項係数の整数論的性質について、見ていきたいと思います。受験生の時に、二項係数関連の問題(東大2015のあれとか)にハマって、あれこれ考えてみたものですので、受験生にも役に立つ話かもしれません。
テーマ
今回は、二項係数を素数で割れる回数について調べます。いちいち「二項係数を素数で割れる回数」というのは面倒なので、一般に、ので割れる回数をと書くことにします。
連続整数に属するの倍数の個数
以下、とします。
ですから、連続整数に注目するのは自然な発想です。次の問題を考えましょう。
これは明らかになわけですが、もう少し踏み込んでおきます。
でをで割ったあまりを表します。の場合を考えましょう。後ろから個を除いて、とします。は以下の最大のの倍数です。さて、この個数はなので、その中のの倍数の個数はによらず個です。いま、除いた個の中のの倍数の個数は、の倍数分ずらしたの中のの倍数の個数と同じで、
となります。であることと合わせて、問題の個数をとすると、次のようにまとめられます。
のときも、同じ式が成り立つことが確かめられます(ここでは割愛)。これは二項係数のを考えるのにとても有用な判定法です。また、この判定法はが素数である必要はありません。
を求める
上で求めた判定法を用いて、
を求めます。ちょっと一般化して、を求めましょう。
より、
です。は判定法により、次のように場合ごとに求められます。
ここで、暗算しやすくするため(?)に、言い換えをしましょう。今、とはゲームをしていて、第ラウンドでは、ならばは点を得て、も同様とします。双方の得点差が一定になるまで行い、その時点でがに何点リードしているか、がというわけです。
いま、を求めたかったのですから、との勝負になります。しかし、任意のに対して、ですから、はすべてのラウンドで無得点です。したがって、の得点がそのままになります。
練習問題
実際に使ってみましょう。
を素数とするとき、はで何回割れるか。
[解答] 第ラウンドはより無得点。第ラウンドはより得点。以降より常に無得点だから、求める値はである。
が偶数になる最小のを求めよ。(東大2015)
[解答] が偶数とは、で回以上割り切れるということ。つまり、となる回数が回以上ということである。
このように、はまでは最大なのでは無得点。得点できる可能性があるのは第ラウンドからで、それはのときであり、そのようなの最小値はである。
裏技
を求める方法を得ることができましたが、これはさらに次のように言い換えることができます。
を進数表示して、を計算するとき、繰り下がりの回数はに等しい。
の進数表示のの位をとする。の計算において、の位で繰り下がりが発生することと、
は同値であり、これはということに他ならない。したがって、前節で求めたものと一致する。
おわりに
今回は二項係数のを求めました。Part2では、二項係数のを求めます。
読んでいただきありがとうございました。