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正規化積〜無限大が有限値に!?!?〜ドキドキワクワク正規化ライフ〜

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いっけなーい!!収束収束!!
私、どこにでもいる発散無限積の無限 和積(なしきりのなごつみ)!!
今日もいけ好かない理学徒を困らせようと思ったら、いつのまにか解析接続されて有限の値に繰り込まれちゃった!!
一体私、これからどうなっちゃうの〜〜!?!?!?

注意
ここから先には変な名前の美少女のラブコメ要素はありません。
またこれを書いている人は数学の研究者でもなければ数学科生や高専生ですらありません。内容に誤りや不正確な点があるかもしれないということを念頭に置いてご覧ください。
必要な知識
特にないが、著作権の都合上いくつかの重要な部分の証明を省略しているため、Hurwitzのゼータ関数に関する知識があれば厳密な理解に役立てるだろう。

序説

さて、諸君はこのようなものを見たことがあるだろうか。
1×2×3×4×...=n=1n=2π

本稿ではこの摩訶不思議に思える数式を、ゼータ正規化と言う手法を用いて正当化し、他にも様々な正規化積を導出する。

解析接続とは

ゼータ正規化をやる前に、解析接続を知らなければ始まらない。

解析接続

解析接続とは、ある領域でしか定義されていない関数をより広い定義域へと拡張する手法のことである。

この拡張する方法は一致の定理と言うもので一意に定まることが知られているらしい。
例えば次の無限級数1+x+x2+x3+...=n=0xnは高校数学でも扱い、この収束半径が1であることは簡単に示すことができる。
しかし、この等比級数は有名な次の表示を持つ。
|x|<1,n=0xn=11x
この式の左辺は|x|<1でしか定義されていないのにも関わらず、右辺はx=1を除く全ての実数(もっと言えば全ての複素数)を定義域としている。
つまり、f(x)=11xは等比級数の解析接続であると言える。

Hurwitzゼータ関数の解析接続

Hurwitzのゼータ関数とは次の式で定義されるリーマンゼータ関数の一般化の一つである。
ζ(s,x)=n=0(n+x)s
x=1とすると通常のリーマンゼータ関数。
右辺はRe(s)>1でしか収束しないが、この関数は次のような表示で全複素平面に解析接続できることが知られている。詳細は[1]を確認せよ。

Hurwitzのゼータ関数の解析接続

ζ(s,x)=1Γ(s)1ψ(t,x)ts1dt+1Γ(s)01{n=1Nan(x)tn}ts1dt+1Γ(s)01{ψ(t,x)(n=1Nan(x)tn)}ts1dt
ψ(t,x)=ext1et=n=1an(x)tn

ゼータ正規化

ゼータ正規化とは発散する和や積を有限の値に繰り込む手法のことで、特に正規化積とは数列Λ={λn|n=0,1,2,3...}と一般化されたゼータ関数
ζΛ(s)=n=0λnsを用いて、次のように定義される。

正規化積

n=0λn:=exp(ζΛ(0))

ただし、ζΛ(s)は先ほどのHurwitzゼータ関数のようにそれぞれs=0を含むように解析接続されている必要がある。
このゼータ正規化によって冒頭にあった式
1×2×3×4×...=n=1n=2π
を導出することができる。さらに、あとで簡単に導出できるがそれほど認知されていないと思われる正規化積も導出する。

補足:なぜ上のような定義で積の正規化ができるのかを説明する。
ζ(s)=n=0log(λn)λnsとなるので、もし無限積が通常の意味で収束するならそれがそのまま値になり、発散するのであれば解析接続された値で記述することによって通常の無限積も含めた定義となっている。

レルヒの公式

レルヒの公式は、正規化積で遊ぶに当たってかなり重要な公式であるのでここで紹介する。

[1,レルヒの公式,P.22]

sζ(s,x)|s=0=logΓ(x)2π

証明については[1,レルヒの公式,P.22]を参照せよ。
以下ではこの公式を使って様々な正規化積を導出する。

正規化積

レルヒの公式とゼータ正規化を使い、、次の正規化積が示される。

レルヒの公式による正規化積

n=0(n+x)=2πΓ(x)

x=1とすれば、有名な自然数の無限積
n=1n=2π
がわかる。さらに、私が暇つぶしで遊んでいたら導出できた式もここで紹介しておこう。

様々な正規化積

n=1n2n=2468...=π
n=12n+1=n=12n1=1357...=2
n=12n2n+1=246...357...=π2
n=1an=2πa
n=1na=2πa
n=12=12
n=0a=a
n=04n+14n+3=Γ(34)22π

これらはいくつかは工夫して計算したが、基本的に全て対応するゼータ関数を構成して忠実にs=0での微分係数を求め計算した。

これらの式を見比べてみると、例えば
n=1n2n

n=12n=1n
のように値を分解して計算しても結果が同じであることに気付くだろう。この結果から、正規化された積も結合律がきちんと成り立っていることがわかる。これは(自分で考えた証明が誤っていなければ)簡単に証明できるので証明は省く。

追記
過去の文献を調べたところ、正規化積は積の法則
anbn=anbn
や、絶対値の交換
|an|=|an|
は一般に不成立であるらしい。私ではよくわからなかったので詳しく知りたければ[2]を参照せよ。

続いて、この正規化された値を使って実際に収束する無限積を計算してみよう。
無限積n=12n2n(2n1)(2n+1)=π2
はウォリス積と呼ばれ、計算するのにはウォリス積分と呼ばれるものを使って計算する方法と、Γ(1/2)sin(π/2)との同値性を使って導く方法がある。
この収束する無限積を形式的に発散する無限積に分解し、正規化された値を当てはめてみると、n=1n2n=πであり、n=12n+1=n=12n1=2だったので、
n=12n2n(2n1)(2n+1)=n=12nn=12nn=112n1n=112n+1
=π2122=π2
驚くことに、本当に実際の値と一致してしまった。私も先日正規化積を触り始めた身なのでまだ詳しいことはわからないのだが、どうやらこのように正規化積とは全くのデタラメの概念という訳ではなさそうだ。

終わりに

本当は素数の無限積の正規化まで書きたかったのだが、私の時間的都合と精神的負担及びまだ厳密な証明を理解していないという事情で断念した(面倒くさいともいう)。興味がある人は'The Product Over All Primes is 4π2'とグーグルで検索をかけて探してみて欲しい。それでは。

参考文献

  1. 黒川重信 『現代三角関数論』 (岩波書店,2013)
  2. https://www.riam.kyushu-u.ac.jp/fluid/meeting/16ME-S1/papers/Article_No_22.pdf
投稿日:20201125
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  1. 序説
  2. 解析接続とは
  3. Hurwitzゼータ関数の解析接続
  4. ゼータ正規化
  5. レルヒの公式
  6. 正規化積
  7. 終わりに
  8. 参考文献