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面白い積分:tanh(x)とζ関数の関係

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大学レベル (キーワード : ゼータ関数 , tanh(x) , メリン変換 , 部分分数展開、非整数階微積分)

こんばんは。たしです。
今日たまたま計算した積分が面白かったので紹介します!

それがこちら↓

$$ \int_0^{\infty} x^{s-1} \tanh \left( \frac{x}{2} \right) dx \ =\ 2(2^{1-s}-1)\ \zeta(s) \Gamma(s)$$

双曲線関数 : $\tanh(x) = \frac{\sinh(x)}{\cosh(x)}=\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}$ , $\zeta(s)$:ゼータ関数、$\Gamma(s)$ :ガンマ関数

専門的な話をすると、$\tanh(x)$にメリン変換を行った結果がゼータ関数やガンマ関数で書けるというものになります。
証明方法はいろいろあると思いますが、今回は部分分数分解を用いた導出を紹介します(厳密さは軽視して大雑把に計算します)。大学レベルの知識を説明なしで用いるので、人によっては読みづらいかもしれませんがご了承ください。

公式1の導出

$$\frac{\pi}{\tanh(\pi x)}=x \sum_{k \in \mathbb{Z}} \frac{1}{x^2+k^2} \\ \frac{\pi}{\sinh(\pi x)}=x \sum_{k \in \mathbb{Z}} \frac{(-1)^k}{x^2+k^2}$$

証明は割愛しますが、三角関数や双曲線関数の"無限乗積展開" (平たく言うと因数分解)から、対数微分などを用いて導出できます。余談ですが、この式を変形して$x \rightarrow0$の極限を取ることで$\zeta(2)$が計算できたり、、$x=1$を代入することで、$\sum_{k \in \mathbb{N}} \frac{1}{1+k^2}$のような級数が計算できたりします。

また、この式と双曲線関数の半角の公式$"\tanh(\frac{x}{2})=\frac{1}{\tanh(x)}-\frac{1}{\sinh(x)}"$$"\pi x \rightarrow x"$などの変形を用いることで最終的に次の等式を得ます。

$$\tanh \left( \frac{x}{2} \right)=\sum_{k \in \mathbb{N}} \frac{4x}{x^2+\pi^2(2k-1)^2}$$

次の補題は、公式2の右辺で項別にメリン変換を施す際に用いるものです。

$$\int_0^\infty\frac{x^{s}}{x^2+a^2}dx = \frac{\pi a^{s-1}}{2\cos(\frac{\pi}{2}s)}$$

この式も証明には大学レベルの議論が必要なので詳細は割愛します(複素積分で定番の練習問題です)。本来ならば$s$の収束範囲の議論などが必要ですが、一旦は認めましょう。それにしても、左辺の多項式を積分すると$\pi$$\cos$などの一見無関係そうな値が出てくるのは何度見ても面白いです。

さて、これを用いて本来の目的であった積分を考えます。

$$ \int_0^{\infty} x^{s-1} \tanh \left( \frac{x}{2} \right) dx = \int_0^{\infty} x^{s-1} \sum_{k \in \mathbb{N}} \frac{4x}{x^2+\pi^2(2k-1)^2}dx ...(公式2)\\ =\sum_{k \in \mathbb{N}}\int_0^{\infty} \frac{4x^{s}}{x^2+\pi^2(2k-1)^2}dx ...(無限和と積分の入れ替えは議論が必要だが割愛)\\ =4\sum_{k \in \mathbb{N}}\frac{\pi ・(\pi (2k-1))^{s-1}}{2\cos(\frac{\pi}{2}s)} ...(補題2)\\ =\frac{2\pi^s}{\cos(\frac{\pi}{2}s)}\sum_{k \in \mathbb{N}}\frac{1}{(2k-1)^{1-s}} \\ =\frac{2\pi^s}{\cos(\frac{\pi}{2}s)}\left(1-\frac{1}{2^{1-s}} \right)\zeta(1-s) \ \ ...(ζ関数の奇数和の場合の有名公式を使用) $$

というわけで無事に積分結果を閉じた形で表せました。これで終わりでもいいのですが、実はもう少し簡単にできます。
次の3つの関数等式を使って、さらに式変形を行います。

$$1. \sin(\pi s)=2\sin\left( \frac{\pi}{2} s \right)\cos\left(\frac{\pi}{2} s \right) \\ 2. \Gamma(s)\Gamma(1-s)=\frac{\pi}{\sin(\pi s)} \\ 3. \zeta(s) = 2^s \pi^{s-1} \sin \left(\frac{\pi}{2} \right) \Gamma(1-s)\zeta(1-s)$$

以上の公式たちを上手くこねくり回すことで次の等式が得られます。
$$ \frac{\pi^s \zeta(1-s)}{\cos\left( \frac{\pi}{2}s \right)}=2^{1-s}\zeta(s)\Gamma(s) $$

これを上で得られていた結果に当てはめると

続き

$$ \int_0^{\infty} x^{s-1} \tanh \left( \frac{x}{2} \right) dx =\frac{2\pi^s}{\cos(\frac{\pi}{2}s)}\left(1-\frac{1}{2^{1-s}} \right)\zeta(1-s)\\ =2\left(1-\frac{1}{2^{1-s}} \right)2^{1-s}\zeta(s)\Gamma(s)\\ =2(2^{1-s}-1)\zeta(s)\Gamma(s) $$

よって最初に示したかった公式1が示されました。

非整数階微積分との関係

ちなみに上で得た公式を少し変形すると、次のようになります。
$$\frac{1}{\Gamma(s)}\int_0^{\infty} x^{s-1} \tanh \left( \frac{x}{2} \right) dx =2(2^{1-s}-1)\zeta(s)$$

ここで$s$を負の整数($s=-n , n\in \mathbb{N})とすると、\zeta(-n)=-\frac{B_{n+1}}{n+1}(B_n$はベルヌーイ数)という公式が成り立ち、次が成り立ちます。
$$ (右辺) = -\frac{2(2^{n+1}-1)B_{n+1}}{n+1} $$

さてここで、話を変えて積分の中にある$\tanh \left( \frac{x}{2} \right)$に注目して、この関数をテイラー展開してみると次のようになります。

$$\tanh \left( \frac{x}{2} \right) = \sum_{n=1}^{\infty}\left( \frac{2(2^{n+1}-1)B_{n+1}}{n+1} \right) \frac{x^n}{n!}$$

なんとテイラー展開に出てくる係数と、上の積分で$s=-n$とした結果が(符号を除いて)完全に一致してしまいました!

理由を知らずにこの結果を見るとびっくりするかもしれませんが、実はこれは非整数階微積分(または分数階微積分)の考えを知っていると簡単に理解できます。

実は$( \frac{d^n}{dx^n} )f(0)$がテイラー展開の係数と関わっているように、$(\int)^sf(0)$は上の積分と密接に関係しています。$s=-n$として不思議な結果が得られたのは、微分と積分が逆演算ということに対応しているんですね。

以上が非整数階微積分との関係でした。自分は大学で非整数階微積分と解析数論のことを専門にしているので、この分野のことが少しでも気になってくれたら嬉しいです。

それでは最後まで見ていただきありがとうございました! ご指摘やミス等ありましたらコメントか Twitter (@math_lewisia)までお願いします。

投稿日:20201126

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投稿者

九州大学数理学府2年 / 専門は解析とかゼータ関数とか。基本は大学数学の話しかしません。

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