$n \geq 2$を整数として、非負整数$S_n,T_n$を次で定める。
$2^n(n+2020)$が$n$で割り切れる最大の回数を$S_n$とする。
$4^n(n+2020)$が$n$で割り切れる最大の回数を$T_n$とする。
$2S_{64^p}-T_{64^p}=1$を満たす素数$p$は存在するか?
「$64^p$で何回割り切れるか?」という問は「$2$で何回割り切れるか?」という問に変換するのが良さそうです。また、素数が絡んでくるのでFermatの小定理を使うことも想像できます。(数オリをやっていないとあまり馴染みがない定理ですが非常に重要です。)
$p$を素数,$a$を$p$と互いに素な整数とする。このとき$a^{p-1}\equiv1(mod p)$が成立する。
また、後で使うことになるので絶対値に関する性質を一つ紹介しておきます。
$x$を実数とする。このとき、$\lbrack2x\rbrack \geq 2\lbrack x\rbrack$が成立する。
ある整数$n$が唯一つ存在して$n \leq x < n+1 $となる。$\lbrack x \rbrack=n$である。
①$n \leq x < n+ \frac{1}{2} $のとき
$2n \leq 2x <2n+1$より、$\lbrack 2x \rbrack =2n=2\lbrack x \rbrack$
②$n+\frac{1}{2} \leq x <1$のとき
$2n+1\leq 2x <2n+2$より、$\lbrack 2x \rbrack =2n+1=2\lbrack x \rbrack+1 \geq 2\lbrack x \rbrack $
補題2を用いて定理1を使える形にして、定理1で$p$を絞る方針でいきます。
まず、$S_{64^p}$を求める。$2^n$は素因数$2$を$n=64^p$個持つ。$n+2020=64^p+2020$は素因数$2$を$2$個持つ。よって、$2^n(n+2020)$は素因数$2$を$64^p+2$個持つ。また、$n=64^p=2^{6p}$は素因数$2$を$6p$個持つので$2^n(n+2020)$は$n$で$\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack $回割り切れる。
よって、$S_{64^p}=\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack$ となる。同様に、$T_{64^p}=\displaystyle \lbrack \frac{2 \cdot 64^p+2}{6p} \rbrack$となる。
(補題2を用いて定理1を使える形にする。)
$2\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack-\lbrack \frac{2 \cdot 64^p+2}{6p} \rbrack=1$を満たすpを考えたら良い。
このような$p$が存在したとする。
$2\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack>\lbrack \frac{2 \cdot 64^p+2}{6p} \rbrack$が成立する。補題2で、$x=\displaystyle \frac{64^p+1}{6p}$とし、次のようになる。
$2\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack>\lbrack \frac{2 \cdot 64^p+2}{6p} \rbrack \geq 2\lbrack \frac{64^p+1}{6p} \rbrack$
左の不等号は等式を含まないので$\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack \neq \lbrack \frac{64^p+1}{6p} \rbrack$が成立する。
よって、$\displaystyle \lbrack \frac{64^p+2}{6p} \rbrack=k$とすると、$6pk \leq 64^p+2$と$64^p+1<6pk$を同時に得る。
したがって、$64^p+2=6pk$すなわち$64^p+2$は$6p$の倍数である。
(これで定理1が使えそうな形になった。)
以下、$64^p+2$が$6p$の倍数になる$p$を見つける。
(このような$p$が存在したとしても元の条件を満たすとは限らないことに注意※下で補足)
①$p=2$のとき
$64^2+2$は$4$の倍数ではないが$6p=12$は4の倍数なので不適である。
②$p=3$のとき
$64^3+2 \equiv 1+2 \equiv 3(mod 9)$より$64^3+2$は9の倍数ではないが$6p=18$は9の倍数なので不適である。
③$p$が$5$以上のとき
$64^p+2$が$2,3,p$で割り切れたら良い。$2$と$3$で割り切れることは直ぐにわかる。
$p \neq 2$であるから$p$と$64$は互いに素である。定理1より$64^{p-1} \equiv 1(modp)$である。
よって、$64^p+2 \equiv 64+2 \equiv 66$である。$66 \equiv 0(modp)$であれば良いから、$p=2,3,11$
$p\neq 2,3$より、$p=11$となる。
$64^p+2$が$p$で割り切れる$p$は$11$だけということが分かった。この$p=11$が元の条件すなわち、$2\displaystyle \lbrack \frac{64^{11}+2}{66} \rbrack-\lbrack \frac{2 \cdot 64^{11}+2}{66} \rbrack=1$を満たすか確かめる。
不等式$2\displaystyle \lbrack \frac{64^{11}+2}{66} \rbrack>\lbrack \frac{2 \cdot 64^{11}+2}{66} \rbrack \geq 2\lbrack \frac{64^{11}+1}{66} \rbrack$について、左辺$-$右辺$=2$である。(左辺$-$右辺$=2$であることは$64^p+2$が$p$で割り切れることから従うのであった。)
よって、中辺$-$右辺$=1$かどうかを考えたら良い。
$x=\displaystyle \frac{64^{11}+1}{66} $として、$64^{11}+1 \equiv (-2)^{11}+1 \equiv 65(mod 66)$より補題2の証明においては②のケースだとわかる。すなわち中辺$-$右辺$=1$であることがわかる。
よって、$p=11$のみが問題の条件を満たすことがわかる。
答え.p=11
※の部分について補足します。
補題2より中辺$\geq $右辺が成立していて、左辺$-$中辺$=1$となる$p$を探すのが目標でした。
そのためには左辺$>$右辺が成り立ってくれる必要があります。そのような$p$を定理1で求めました。(それは$p=11$だった。)
このとき、左辺$-$右辺$=2$であることが分かるので中辺$-$右辺$=1$が成立することを確かめる必要があるわけです。(その判定は補題2の証明中で述べた。)
(もし左辺$>$右辺が成立しても中辺$=$右辺ならば左辺$-$中辺$=2$となって不適です。)
Mathlog使いやすかった!$\LaTeX$の文と通常の文が同じ場所で打つ方法を知らなかったので非常に嬉しいです。ちなみにこの問題は自作の中で最も気に入っています。