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大学数学基礎解説
文献あり

Bourbaki 集合論1の解説

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凡例

ここでは、「ブルバキ数学原論 集合論 1」の解説を行う。
参考資料として、

1

「数学原論 集合論 1(訳:前原 昭二 1968)」を使用することを前提とする。

国立国会図書館のIDを持っていれば、
国立国会図書館のNDLサービスによって無料でBourbakiのpdfをダウンロードできる。

18歳未満の場合は、周辺の図書館や、近隣の古書店、もしくは「日本の古本屋」というサイトから、購入することもできる。

2

'読者への注意'、'第一章を読むための注意'は省略する。

3

基本的に数学原論の本文の内容を現代の訳語に当てはめることは(基本的には)しない。
なぜと申すなら、この原論の対象の読者は基本的には、数学的知識を全く有しない学生か、学部1,2年程度の読者を念頭に置いて記述されているからである。
そうした行為は、すでに数学的知識を有している者に依る。

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ブルバキへの囂々たる非難、及び、それらに関連した哲学的問題提起の一声を存することは認識しているが、それについては言及しない。

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記号の凡例は日本語訳のブルバキに従う。

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私の浅学ゆえに、解説ではなく、註釈のような形式の部分も有すると思われるが、ご容赦願う。

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引用例:
日本語訳のブルバキ(訳:前原 昭二)を例えば、 
(前原)p.23,§2,L3(Lは行の意。)
と引用する。

解説

第一章;形式的な数学の記述

§1.対象式と関係式

1.記号,記号列

ある一つの数学的理論$\mathscr{T}$で用いる記号とは次の三種類のものである。

  • 論理記号:$\square$$\tau$,$\lor$,$\lnot$

  • 文字:これは、ラテン文字の小文字、大文字、およびそれらにダッシュをつけたものを意味する。すなわち、${A}$,${A'}$,${A''}$,${A'''}$,...等は文字である。そして、本文中のどんな所ででも、それまでの推論の中で用いられていなかった新しい文字を導入することが可能なのである。

  • 特殊記号:これは問題としている個々の理論によって異なる。

・論理記号について

これは結論を述べれば、この四つの論理記号があれば、他の論理記号を省略記法として記述できる。

・文字について

ラテン文字に'を付すことによって、議論中に新たな文字をいつでも挿入できると述べているが、文字を導入すること自体は無限に(可算無限個である)できる。

・特殊記号について

これは、非論理記号を列挙し、表すためのものである。

これらが理論$\mathscr{T}$の記号である。

・記号列について

上記の記号をある特定の順序に従って、左から右に並べて書く、有限のものである。

・鎖について

これは、用法については後述するが、特定の文字の場所を示すものである。

・定義について

定義というのはある記号列の省略記法そのもののことである。
理論的には必ずしも必要というわけではなく、混乱の原因ともなる。
これは、ある種の数学的な習慣(例えば、「可換環をAとする。」や、「虚数単位をiとする。」など。)によって避けることを可能とする。

ある記号列中に、$\tau$と、相違なる文字が無限にあった場合、
その文字にそれぞれ対応する$\tau$を無限に導入しなければならない。 
これを防ぐために、$\square$を導入する。

(定義の例)

$\lor$$\lnot$$\Rightarrow$で表す。

実際、文字の数が少なくなっている。これは、定義の例となる。
この省略記法は後の記述でも頻繁に用いられる。
これの直観的な用法や意味については、別の記事で解説する予定である。

本文中(前原:p,10,§1,L5)に 2) とある例は、のちに記述される数学的概念の例にもなる。

・文字を含む記号列と然らざる記号列
これは、文字を含む記号列のうち、記号列にその文字が現れないのは、他の文字に置き換えうるからである。

・記号や文字の用法について
これは、逐一記号列の全てを表示するということはせずに、それらをまとめて一つの文字で表し、その文字を記号列とよぶ。 並びに、記号列${A}$という表現は${A}$という一つの記号を用いて表される。

数学的理論(あるいは単に理論)とは、ある種の記号列がその理論に属す対象式であるとか関係式であるとかいうことを認める規則。
並びに、ある種の記号列がその理論の定理であるということを認める別の規則とから成立している。

  • 鎖とは$\mathscr{T}$における記号列の上に、文字以外のある種の記号を二つずつ結びつけて書く、線である。

$\normalsize{AB}$というのは、$\normalsize{A}$という記号列を$\lnot$$\lor$$\normalsize{B}$$\tau$$\Rightarrow$という記号列としたとき、
$\normalsize{A}$という記号列をすべて並べた後に$\normalsize{B}$という記号列を並べるということである。
即ち、$\normalsize{AB}$$\lnot$$\lor$$\tau$$\Rightarrow$という記号列と一致する。

(※)ところで、ブルバキのこれらの記法によれば、記号を表現しない記号は表せないと思われる。
なぜならば、仮にそのような文字を$\normalsize{A}$とすれば、($\normalsize{A}$によって表される記号が記号を表現しないものと考える。)
$\normalsize{A}$自体が記号を表現することになってしまい、矛盾が発生する。
(※にある文は、私の考察なので詭弁の可能性があります。)

記号列の例 1

$\tau_{x}$($\normalsize{A}$)というのは、${x}$$\tau$とを鎖で逐一結びつけるという操作である。
加えて、その${x}$逐一$\square$に置き換える。
これによって、置き換えられた${x}$${A}$の中での位置が$\square$によって全てわかる。 記号列は有限であるから、この置き換える操作自体はいつか終る。
これは他の文字に置き換えうる記号列であり、従ってこの記号列には文字${x}$は含まれていない。

 本文中の例

$\tau{_x}$($\in$${xy}$)は
┌─┐
$$ \tau ( \in \square y) $$と一致する。

記号列の例 2

(${B}$$\vert$${x}$)${A}$${A}$の中の${x}$逐次置き換える。ということである。$\tau_{x}$($\normalsize{A}$)という記号列には${x}$という文字は現れないから、(${B}$$\vert$${x}$)$\tau_{x}$($\normalsize{A}$)という記号列は$\tau_{x}$($\normalsize{A}$)と一致することが容易にわかる。

・同時に置き換えられる文字とその記号列について

${A}$${⌇}$${B,C}$${⌇}$${x',y'}$${x,y}$とも異なり、${A,B,C}$にも現れない文字であれば、
$($$B$$\vert$$x'$$)$$($$C$$\vert$$y'$$)$$($$x'$$\vert$$x$$)$$(y' \vert $$y$)$A$ と一致するというのは、まず、
$A$の中の$x,y$の位置が$A$の中で、$x',y'$に逐次置き換えられることで場所が全て把握でき、その$x',y'$$B,C$に置き換えることは同時にできる。従って、
${A}$${⌇}$${B,C}$${⌇}$ と一致することがわかる。

-注意について(前原:p,12,$\S$1,L5)
これは、省略記法として導入された記号にある文字$x$を代入することは、省略された記号列にその文字$x$を代入することと同じであると述べている。
例えば、記号列中の()によって、他の記号列が代入されたことを示す。

第一回 終り。

参考文献

[1]
ニコラ・ブルバキ(訳:前原 昭二), 数学原論 集合論 1, 数学原論, 東京図書株式会社, 1968
[2]
N.Bourbaki, Theorie des ensembles, Elements de mathematique, Springer-Verlag Berlin Heidelberg, 2006
投稿日:55
更新日:725
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