この記事ではハーツホーンの演習問題を順番に解いていきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
$Y\subseteq \mathbb{A}^3$を集合
$$
Y=\left\{(t,t^2,t^3)\in\mathbb{A}^3\middle|t\in k\right\}
$$
とおく。$Y$が$1$次元アファイン多様体であることを示しなさい。またイデアル$I(Y)$の生成元を求めなさい。また環同型$A(Y)\simeq k[t]$が成り立つことを示しなさい。
まず
$$
Y=\{(x,y,z)\in \mathbb{A}^3|x^2-y=x^3-z=0\}
$$
であるから代数的集合である。ここでイデアル$I(Y)={\color{Red}(x^2-y,x^3-z)}$である。これはこのとき対応$(x,y,z)\mapsto(t,t^2,t^3)$により同型$A(Y)\simeq k[t]$が取れるから、$I(Y)$は$k[x,y,z]$の素イデアルであり、よって$Y=ZI(Y)$は既約である。よって$Y$はアファイン多様体である。
最後に$Y$が$1$次元であることを示す。$k[t]\simeq k[x,y,z]/I(Y)$であったから、$k[x,y,z]$に於いて$(x^2-y,x^3-z)$を含む素イデアルが極大イデアルしかない。よって$Y$は$1$次元である。
以上で示したいことが全て示せた。
$Y$を
$$
Y:=\{(x,y,z)\in\mathbb{A}^3|x^2-yz=x(z-1)=0\}
$$
とする。これは$3$つの既約成分の和集合で表せることを示しなさい。
まず
$$
Z_1=\{(0,0,z)\in\mathbb{A}^3\}
$$
$$
Z_2=\{(0,y,0)\in\mathbb{A}^3\}
$$
$$
Z_3=\{(t,t^2,1)\in\mathbb{A}^3\}
$$
とおく。各成分に対応する素イデアルは
$$
I(Z_1)=(x,y)
$$
$$
I(Z_2)=(x,z)
$$
$$
I(Z_3)=(x^2-y,z-1)
$$
である。
ザリスキ位相空間$\mathbb{A}^2$と積位相空間$\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1$は同相でないことを示しなさい。
$\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1$の開集合は積位相の定義から
$$
\mathbb{A}^1\backslash\{a_1,\cdots,a_n\}\times \mathbb{A}^1\backslash\{b_1,\cdots,b_m\}
$$
の形の集合から生成される。そしてこの補集合は
$$
\left(\{a_1,\cdots,a_n\}\times\mathbb{A}^1 \right)\cup \left(\mathbb{A}^1\times\{b_1,\cdots,b_m\}\right))
$$
である。これにより$\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1$の任意の点$p=(p_1,p_2)$に於いて、その点を通る既約閉集合は一点集合と全空間を除けば
$$
\{p_1\}\times\mathbb{A}^1
$$
$$
\mathbb{A}^1\times\{p_2\}
$$
の$2$つである。一方$\mathbb{A}^2$の任意の点$p=(p_1,p_2)$においては
$$
a(x-p_1)+b(y-p_2)
$$
の形で表される多項式の零点集合は全て$p$を通る既約閉集合である。以上から$\mathbb{A}^2$と$\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1$の間に同相は存在しない。
$k$代数$B$に対して、以下同値であることを示しなさい。
(ii)を仮定し、$B=k[x_1,\cdots,x_n]$と表せたとする。そして標準的な全射環準同型
$$
p:k[X_1,\cdots,X_n]\to B
$$
を考え、$I=\mathrm{Ker}(p)$とする。いま$B$は冪零元を持たないから、$I$は根基イデアルであり、$I$に対応する代数的集合$Z(I)$を取ることができる。$B\simeq k[X_1,\cdots,X_n]/I=k[X_1,\cdots,X_n]/I(Z(I))$であるから、(i)が従う。一方で、(i)が成り立つとすると、$k$上$n$元生成される$k$代数であり、冪零元を持たない。よって(ii)が従う。
既約位相空間の開部分集合は稠密かつ既約であることを示しなさい。また位相空間$X$の部分集合$Y$に部分位相を入れ、$Y$が既約であるとき、その閉包$\overline{Y}$も既約になることを示しなさい。
前半を示す。位相空間$A$が既約であり、その空でない開部分集合$U$が稠密でないとすると、ある$p\in A$及びその近傍$V$が存在して$U\cap V=\varnothing$になるが、このとき
$$
A=\left(A\backslash U\right)\cup \left(A\backslash V\right)
$$
が成り立つから、$U\neq\varnothing$の仮定より$A=U$が従うが、これは$U\cap V=\varnothing$に矛盾する。よって$U$は稠密である。また$U$が既約でないとすると、$A$のある部分集合$C,D$を用いて$U=(C\cap U)\cup(D\cap U)$と表せるが、このとき
$$
A=\left(A\backslash U\right)\cup(C\cup D)
$$
であるから、$U\neq\varnothing$の仮定より$A=C\cup D$が従い、$A$の既約性により$C=A$または$D=A$が従う。よって$U$は既約である。
後半を示す。$\overline{Y}$が閉集合の和$\overline{Y}=C_1\cup C_2$と表せたとする。このとき$Y$の既約性から$C_1\cap Y=\varnothing$または$C_2\cap Y=\varnothing$が成り立つ。$C_1\cap Y=\varnothing$であるとして一般性を失わない。このとき$Y\subseteq C_2$になるが、閉包の定義から$\overline{Y}=C_2$であることが従う。よって後半が示せた。