0
大学数学基礎解説
文献あり

K準同型

58
0
$$\newcommand{alg}[0]{{\rm{alg}}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{Hom}[0]{\operatorname{Hom}} \newcommand{id}[0]{\operatorname{id}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

$k$代数

$k$を可換環とする.

$k$代数
  1. $A$$s_A\colon k\to A$を環準同型の組$(A,s_A)$$k$代数($k$-algebra)という.このとき,$s_A$$(A,s_A)$構造射(structural morphism)という.

  2. $(A,s_A),(B,s_B)$$k$代数とする.環準同型$\varphi\colon A\to B$$\varphi\circ s_A=s_B$を充たすとき,$\varphi$$k$準同型($k$-homomorphism)という.$(A,s_A)$から$(B,s_B)$への$k$準同型の全体を${\rm{Hom}}^{\rm{alg}}_{k}A$で表す.

  3. $k$準同型が同型であれば$k$同型($k$-isomorphism)という.$k$代数$A$$k$自己同型の全体は合成に関して群となる.これを$A$$k$自己同型群($k$-automorphism group)といい,${\rm{Aut}}^{\rm{alg}}_{k}A$で表す.

  4. $k$準同型$\varphi\colon A\to B$が単射であれば$A$$\varphi(A)$を同一視して,$A\subset B$と考えられる.このとき$A$$B$部分$k$代数(sub-$k$-algebra)という.

!FORMULA[40][37949][0]準同型 $k$準同型

  1. 構造射$s_A$を省略して$k$代数$A$とかくことが多い.
  2. 構造射には単射性を課す場合もある.単射の時は$k\subset A$と見做せる.

$\varphi\colon \Z\to\Z/(n),m\to m+(n)$によって$\Z/(n)$$\Z$代数と見做せる.

$(A,s_A)$$k$代数とする.作用$k\times A\to A$
$$a\cdot x:=s_A(a) x\ (a\in k,x\in A)$$
で定めると,$A$$k$加群と見做せる.

簡単にcheckできる.

以降,$k$代数は命題1の作用によって$k$加群との構造が入ったものと考える.

$(A,s_A),(B,s_B)$$k$代数とする.$\varphi\colon A\to B$を環準同型とする.このとき,
$\varphi$$k$準同型$ \Leftrightarrow$ $\varphi$$k$加群の準同型

($\Rightarrow$) 準同型なので和を保つことは明らか.
$a\in k,x\in A$に対し,
$$\varphi(a\cdot x)=\varphi(s_A(a) x)=\varphi(s_A(a))\varphi(x)\stackrel{\downarrow}{=}s_B(a) \varphi(x)=a\cdot \varphi(x)$$

($\Leftarrow$) $a\in k$に対し,
$$\varphi\circ s_A(a)=\varphi(s_A(a)1)=\varphi(a\cdot 1)\stackrel{\downarrow}{=}a\cdot\varphi(1)=a\cdot 1=s_B(a)$$
それぞれ$\downarrow$の位置で条件を使用した.

命題2は次のように言い換えられる.
$$\Hom^\alg_k(A,B) =\Hom(A,B)\cap\Hom_k(A,B)$$
但し$\Hom(A,B)$$A$から$B$への環準同型全体,$\Hom_k(A,B)$$A$から$B$への$k$加群としての準同型(=$k$線形写像)全体とした.

つまり$k$準同型とは$k$線型な環準同型である.
(但しスカラー倍の定義は気にする必要がある.)

K準同型

$k$が体の場合を考えよう.$K$を体とする.

$L/K$が体拡大のとき$L$は包含写像$\iota\colon K\hookrightarrow L$を構造射として$K$代数と見做せる.よって命題2により,$L$$K$線型空間と見做せる.

$L_1,L_2$を体$K$の拡大体とし,$K$線型空間と考える.体準同型$\varphi\colon L_1\to L_2$$K$準同型であるとは
\begin{align} \varphi\circ\iota_1=\iota_2 \tag{a} \\ \end{align}
(但し$\iota_1\colon K\hookrightarrow L_1,\iota_2\colon K\hookrightarrow L_2$は包含)
を充たすことであった.$\varphi\circ\iota_1=\varphi|_{K}$に注意すると,(a)は
$$\varphi|_K=\id_{K}$$
とかける.つまり,$K$準同型とは$K$の元を動かさない体準同型であるともいえる.また命題2から(a)は$K$線型であることと同値であった.

以上をまとめると,$K$準同型とは
(1) $K$線型な体準同型
(2) $K$の元を動かさない体準同型
などと特徴づけられる.

$K$同型に関しても$K$線型同型,体同型との関係は同様である.

複素共軛

複素共軛$\rho\colon\C\to\C,z\mapsto\overline{z}$$\C$上の$\R$自己同型.実際複素共軛は体同型であり,$\R$の元は複素共軛で動かない.

$K$線型だが$K$準同型でない

$\varphi\colon\C\to\C, a+b\sqrt{-1}\mapsto a+2b\sqrt{-1}\ (a,b\in\R)$とすると,
$$\varphi\in\Hom_{\R}(\C,\C)\ \mathrm{and}\ \varphi\notin\Hom(\C,\C)$$
なので,$\varphi\notin\Hom^\alg_{\R}(\C,\C)$

参考文献

[1]
雪江明彦, 代数学2 環と体とガロア理論[第2版], 日本評論社, 2010
投稿日:112
更新日:112
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

基本的に教科書に書いてるような基礎的な内容をまとめたりすることが多いかと思います.誤りがあった場合は教えて頂けると助かります.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中