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東大数理院試過去問解答例(2024B06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2024B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2024B06

$\mathbb{R}^2$の開円板$D:=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2|x^2+y^2<1\}$上のリーマン軽量
$$ g=\frac{dx^2+dy^2}{(1-x^2-y^2)^2} $$
を考える。

  1. $D$$dx\wedge dy$で定まる向きを入れたとき、$g$の面積形式を求めなさい。
  2. $P\in D$をとり、写像$\gamma:[0,1]\to D$$\gamma(t)=tP$で定める。積分
    $$ \int_0^1\sqrt{g\left(\frac{d\gamma}{dt},\frac{d\gamma}{dt}\right)}dt $$
    を計算しなさい。
  3. $P\in X:=D\backslash\{(0,\frac{1}{2})\}$に対して、以下の条件
  1. ある$\varepsilon>0$が存在して、$\gamma$$C^\infty$級関数$(-\varepsilon,1+\varepsilon)\to X$に拡張される。
  2. $\gamma(0)=0$
  3. $\gamma(1)=P$
    を満たす写像$\gamma:[0,1]\to X$全体の為す集合を$A(P)$とおく。また
    $$ L(\gamma):=\int_0^1\sqrt{g\left(\gamma'(t),\gamma'(t)\right)}dt $$
    とおく。このとき最小値
    $$ \min_{\gamma\in A(P)}L(\gamma) $$
    が存在するためには、$P\notin \{0\}\times [\frac{1}{2},1)$であることが必要充分であることを示しなさい。
  1. 定義通り計算することで
    $$ {\color{red}\frac{1}{(1-x^2-y^2)^2}dx\wedge dy} $$
    である。
  2. まず一般に
    $$ \begin{split} L(\gamma)&=\int_0^1\sqrt{g\left(x'(t)\frac{\partial}{\partial x}+y'(t)\frac{\partial}{\partial y},x'(t)\frac{\partial}{\partial x}+y'(t)\frac{\partial}{\partial y}\right)}dt\\ &=\int_0^1\sqrt{\frac{x'(t)^2+y'(t)^2}{(1-(x(t)^2+y(t)^2))^2}}dt\\ &=\int_0^1\frac{\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}}{(1-(x(t)^2+y(t)^2)}dt \end{split} $$
    である。ここで$P=(a,b)$に対し$(x(t),y(t))=(ta,tb)$であるとき
    $$ \begin{split} L(\gamma)&=\int_0^1\frac{\sqrt{a^2+b^2}}{1-(a^2+b^2)t^2}dt\\ &=\frac{1}{2}\int_0^1\frac{1}{\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}+t}+\frac{1}{\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}-t}dt\\ &=\frac{1}{2}\left[\log(\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}+t)-\log(\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}-t)\right]_0^1\\ &=\frac{1}{2}\log(\frac{1}{a^2+b^2}-1)\\ &=\frac{1}{2}\log(\frac{1+\sqrt{a^2+b^2}}{1-\sqrt{a^2+b^2}})\\ &=\color{red}\frac{1}{2}\log(\frac{1+|P|}{1-|P|}) \end{split} $$
    である。
  3. 原点$O$から$P$に行く曲線$\gamma$をとり、曲線$\delta$
    $$ \delta(t):=(\gamma(t)\textsf{ を通る }OP\textsf{ に垂直な直線と直線 }OP\textsf{ との交点}) $$
    とおく。このとき常に$|\delta'(t)|\leq|\gamma'(t)|$が成り立っているから、これによって$L(\gamma)$を最小にする曲線$\gamma$は(存在するとすれば)その像を直線$OP$上に持つ。いま像を直線$OP$上に持つ$\gamma$$O\gamma(t)=r(t)$を満たしたとすると
    $$ L(\gamma)=\int_0^1\frac{r'(t)}{1-r(t)^2}dt=\frac{1}{2}\log\left(\frac{1+|P|}{1-|P|}\right) $$
    である。以上から$\gamma$$A(P)$の元を動くとき、$X$上で$OP$を結ぶ直線が引ければ$L(\gamma)$の最小値が存在し、引けなければ存在しないことが従う。つまり$L(\gamma)$の最小値が存在するには、$P\notin\{0\}\times\left[\frac{1}{2},1\right)$を満たすことが必要充分である。
投稿日:68
更新日:618

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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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