ここでは東大数理の修士課程の院試の2018B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2018B06
の変換を
で定義され、の間の全単射全体のなす群のうちで生成される部分群をとおく。また
とおく。ここで
と定義する。
(1) 整係数ホモロジー群を求めなさい。
(2) 整係数ホモロジー群を求めなさい。
(3) 整係数ホモロジー群を求めなさい。
- まず
である。ここで変換はの左側の和成分を右側に移す一方は成分を保ち、またであるから、求めるホモロジー群はのホモロジー群に等しい(ここではホモトープであることを指す)。ここで連続写像
を取ったとき、ここから同相が誘導される。よって求めるホモロジー群はのホモロジー群、つまり
である。 - まずはのホモトープであり、これはの作用と整合的なので、のホモロジー群を求めればよい。ここでの胞体分割を
ととる。但しはから誘導される胞体、はから誘導される胞体、及びはそれぞれ及びの誘導する胞体である。このとき直接計算することで
がわかる。 - まず
とおく。このときについてであるからはwell-definedな連続写像を定めている。ここで写像
を考えたとき、基本領域を適切に取ることでこの写像は連続である。よってとはホモトープになっているから
がわかる。このとき(1)(2)及びここまでの議論からマイヤー・ビートリス完全列
が得られる。ここで次の射は基底を適切にとって
で表現される。これをとすると
である。以上をまとめると
がわかる。