型量子群の表現を1階微分演算子を使って構成するメモ書きである。量子群の定義は
Wikipedia
を参照。
型の量子群の行列表現に関しては『量子群とヤン・バクスター方程式』を参考にして、今回の微分演算子による表現を頑張って構成した。MATLABで計算をゴリゴリ進めて満たすべき数十個の関係式を検証した。
の表現
を単純ルートとする。のときと定める。
[直交性]
[-Serre関係式]
変数をに変換する線形写像をとすると、
という反自己同型写像である。これを用いるとに対し関係式
を示せば、を作用させると
も示されるので、一般性を失わずとする。
とする。
今度はに対して
とすると
なので
割合で見れば同士は可換である場合が多いので、その他の関係式に関してはこれらの計算よりも簡単に示すことができる。
よって、これらの微分演算子の表現はの表現になっている。こちらの
Rq上の微分演算子によるUq(soN)の実現
という論文でも直交群の実現方法を示しているが、僕の場合は変数同士は可換であるという仮定のもとで議論を構築しているので、という空間における微分演算子の算術に関しては良く分からない(まだ論文を読めていない)。対象を、非可換変数の微分演算子と考えるか、可換変数の演算子上に落とし込んで考えるか、両者が本質的に相違なるものかはわからない。後で議論する積の構造を考えるにあたっては非可換変数と捉えたほうが好都合かもしれないがよくわからない。非可換変数の微分演算子が見たすべき関係式がわからないので。
たとえばという関係式がある場合、とすれば同じ関係式を満たす。そしてそれを微分演算子の空間上に適切に拡張してやることも可能かもしれない。可換変数でどこまで理解できるかを試したい。
余積と整合する結合的かつ単位的な積(半直積を表す記号ではない)について考える。
余積と整合的であるとは、任意のに対しのときであることをいう。行列で
となる積構造だと仮定する。これは結合律と単位律を満たす。
に関する作用も整合的であると仮定すると自動的にの余積と整合的となる。とする。のとき条件は次のようになる。
よって
として加法定理から
整合性の条件からこれが任意のに対して成立するので
となる。また、のときも余積の式から
が成立すると仮定できるので同様にして
となる。ここで4つの条件式をすべて足すとという矛盾した条件を導いてしまう。A型の場合はすべてのがなので矛盾は現れない。D型において多項式上に積を定めるwell-definedな方法はあるだろうと思っている。古典極限では実際にへの作用で作られる軌道が既約表現になっている。すべての次斉次多項式がこの軌道上に現れるわけではないので、(正確に調べ尽くせていないが)、多項式環をイデアルで割った商が表現空間になっていて、この商の概念をq-deformした際、そのままの商(加群の基底を削減する方法)だと不整合が出てきてしまうものだと今は考えている。
例えばは軌道に無い。
なお、広義下三角行列のみの空間に代数を制限する場合は束縛される関係式がゆるくなるので、整合する積の条件はゆるくなる。