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D型量子群の微分演算子表現

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Dl型量子群U=Uq(so(2l))の表現を1階微分演算子を使って構成するメモ書きである。量子群の定義は Wikipedia を参照。
Dl型の量子群の行列表現に関しては『量子群とヤン・バクスター方程式』を参考にして、今回の微分演算子による表現を頑張って構成した。MATLABで計算をゴリゴリ進めて満たすべき数十個の関係式を検証した。

q類似,記号

θx=xx, [N]=qNqNqq1, Dx=1x[θx], [N]r=[rN]/[r]
[N]r!=k=0N[k]r, (NM)r=[N]r![NM]r![M]r!
Dk=Dxk,  θk=θxk
viR2l, x=(x1,,x2l)T, θ=(θ1,,θ2l)T
α,β,γR2l,αβ=αTβ
N={1,2,,N}
[x,y]=xyyx

Cartan行列,単純ルート(Dl型)

AZlAij=2  (i=jl)Aij=1  (|ij|=1i,jl1)((i,j)=(l1,l1)±(1,1))Aij=0  (otherwise)
とする。

A=(210001210001200211000120000102)

生成元

Mij=xiDjqcijθ,  cijZ2l,ki=qhi  (i,jl)
il1ei=Mi,i+1M2li,2l+1ifi=Mi+1,iM2l+1i,2lihi=θiθi+1+θ2liθ2l+1iel=Ml1,l+1Ml,l+2fl=Ml+1,l1Ml+2,lhl=θl1+θlθl+1θl+2
il2ci,i+1=0c2li,2l+1i=vi+1vici+1,i=v2liv2l+1ic2l+1i,2li=0cl1,l=vl+1cl+1,l+2=vl1cl,l1=vl+2cl+2,l+1=vlcl1,l+1=vlcl,l+2=vl1cl+1,l1=vl+2cl+2,l=vl+1

Uの表現

αiを単純ルートとする。λ=iλiαiのときkλ=qiλihiと定める。
k0=1kλkμ=kλ+μkλeikλ1=q(λ,αi)eikλfikλ1=q(λ,αi)fi
[直交性]
[ei,fj]=eifjfjei=δij[hi]di
[q-Serre関係式]
[ei,ej]=[fi,fj]=0  (Aij=0)ei2ej[2]eiejei+ejei2=0  (Aij=1)fi2fj[2]fifjfi+fjfi2=0  (Aij=1)

q括弧の1次の恒等式(加法定理)

[a+b]=qb[a]+qa[b]=qb[a]+qa[b]

q括弧の2次の恒等式

a+c=±(b+d)のとき
[a][b][c][d]=[a+c][±ad]=[bc][a+c]

演算子代数Vの準同型

Ad(x):AxAx1はVの同型。
特に、Ad(x)θx=θx1

[z+2][2][z+1]+[z]=0より
Dzz2[2]zDzz+z2Dz=0
AB=qABならば
AB2[2]BAB+B2A=BA2[2]ABA+A2B=0

変数xix2l+1iに変換する線形写像をτとすると、
τ(ei)=fi,τ(fi)=ei,τ(hi)=hi
という反自己同型写像である。これを用いるとijに対し関係式
R(ei,ej)=0,  [ei,fj]=δij[hi]を示せば、τを作用させると
R(fi,fj)=0,  [ej,fi]=δij[hi]
も示されるので、一般性を失わずijとする。

ei=MabMcd,fi=MbaMdcとする。
[ei,fi]=[Mab,Mba]+[Mcd,Mdc][Mab,Mdc][Mba,Mcd]=([θa][θb+1][θa+1][θb])qθcθd+([θc][θd+1][θc+1][θd])qθa+θb=[θaθb]qθcθd+[θcθd]qθa+θb=[θaθb+θcθd]=[hi]

[el,fl1]=[Ml1,l+1,Ml,l1][Ml1,l+1,Ml+2,l+1][Ml,l+2,Ml,l1]+[Ml,l+2,Ml+2,l+1]=[Ml1,l+1,Ml,l1]+[Ml,l+2,Ml+2,l+1]=xlDl+1(qθlθl+2(q[θl1][θl1+1])+qθlθl1([θl+2+1]q[θl+2]))=xlDl+1(qθlθl1θl+2+qθlθl1θl+2)=0
[el,el1]=[Ml1,l+1,Ml1,l][Ml1,l+1,Ml+1,l+2][Ml,l+2,Ml1,l]+[Ml,l+2,Ml+1,l+2]=[Ml1,l+1,Ml+1,l+2][Ml,l+2,Ml1,l]=xl1Dl+2(qθlθl1(q1[θl+1][θl+1+1])+qθl+1θl1([θl+1]q1[θl]))=xlDl+1(qθlθl1+θl+1+qθlθl1+θl+1)=0

今度はjl2,i=j+1,k{0,1,2}に対して
a=Mi,i+1,  b=M2li,2l+1i
c=Mj,j+1,  d=M2lj,2l+1j
とすると
ei=ab,  ej=cd
a2kcak=a2xjqcj,j+1θ[θi+k]
b2kdbk=b2x2ljqc2lj,2l+1j[θ2l+1i+k]
c2kack=caxjqcj,j+1θ[θi+k1]
d2kbdk=dbx2ljqc2lj,2l+1j[θ2l+1i+k1]
qcb=bc,  qad=da
なので
ei2ej[2]eiejei+ejei2=0
ej2ei[2]ejeiej+eiej2=0
割合で見ればMij同士は可換である場合が多いので、その他の関係式に関してはこれらの計算よりも簡単に示すことができる。
よって、これらの微分演算子の表現はUq(so(2l))の表現になっている。こちらの
Rq上の微分演算子によるUq(soN)の実現
という論文でも直交群の実現方法を示しているが、僕の場合は変数xi同士は可換であるという仮定のもとで議論を構築しているので、Rqという空間における微分演算子の算術に関しては良く分からない(まだ論文を読めていない)。対象を、非可換変数の微分演算子と考えるか、可換変数の演算子上に落とし込んで考えるか、両者が本質的に相違なるものかはわからない。後で議論する積の構造を考えるにあたっては非可換変数と捉えたほうが好都合かもしれないがよくわからない。非可換変数の微分演算子が見たすべき関係式がわからないので。
たとえばy1y2=qy2y1という関係式がある場合、y1=x1qθx2,y2=x2とすれば同じ関係式を満たす。そしてそれを微分演算子の空間上に適切に拡張してやることも可能かもしれない。可換変数でどこまで理解できるかを試したい。

余積と整合する結合的かつ単位的な積(半直積を表す記号ではない)について考える。

余積と整合的であるとは、任意のf,gV,uUに対しΔ(u)=u1u2のときΔ(u)(fg)=(u1f)(u2g)であることをいう。行列g
xβxγ=qβgγxβ+γ
となる積構造だと仮定する。これは結合律と単位律を満たす。
xαxβxγ=qβgγxαxβ+γ=qαgβxα+βxγ=qαgβ+βgγ+αgγxα+β+γ
Mijに関する作用も整合的であると仮定すると自動的にUの余積と整合的となる。i<j,  hk=Hkθとする。Ek=MijMijのとき条件は次のようになる。
Mij(xβxγ)
Mij(xβxγ)=(Mijxβ)xγ+(Kkxβ)(Mijxγ)=qcijβ[βj]xβ+vivjxγ+qHkβ+cijγ[γj]xβxγ+vivj=(qcijβ+(β+vivj)gγ[βj]+qHkβ+cijγ+βg(γ+vivj)[γj])xβ+γ+vivj=qβgγMijxβ+γ=qβgγ+cij(β+γ)[βj+γj]xβ+γ+vivj
よって
[βj+γj]=qcijγ+(vivj)gγ[βj]+qHkβcijβ+βg(vivj)[γj]
pij{1,1}として加法定理から
cijγ+(vivj)gγ=pijγjHkβcijβ+βg(vivj)=pijβj
整合性の条件からこれが任意のβ,γに対して成立するので
cij+gT(vivj)=pijvjHkcij+g(vivj)=pijvj
となる。また、Fk=MjiMjiのときも余積の式から
Mji(xβxγ)=(Mjixβ)(Kk1xγ)+xβ(Mjixγ)
が成立すると仮定できるので同様にして
HkcjigT(vivj)=pjivicjig(vivj)=pjivi
となる。ここで4つの条件式をすべて足すとcij+cji=0という矛盾した条件を導いてしまう。A型の場合はすべてのc0なので矛盾は現れない。D型において多項式上に積を定めるwell-definedな方法はあるだろうと思っている。古典極限q=1では実際にx1Nへの作用で作られる軌道が既約表現になっている。すべてのN次斉次多項式がこの軌道上に現れるわけではないので、(正確に調べ尽くせていないが)、多項式環をイデアルで割った商が表現空間になっていて、この商の概念をq-deformした際、そのままの商(加群の基底を削減する方法)だと不整合が出てきてしまうものだと今は考えている。
例えばq=1,l=2,N=2,F=x1x4+x2x3は軌道に無い。
なお、広義下三角行列のみの空間Uに代数を制限する場合は束縛される関係式がゆるくなるので、整合する積の条件はゆるくなる。

投稿日:2023914
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赤げふ
赤げふ
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東工大情報B4 数学,理論物理,Minecraft計算機/微分演算子の記事を書きます/主に表現論,量子群,物理の数理に興味があります

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