可換な行列同士が可換になることが多い気がしたんだけどこれどういうこと?
「ふむふむ、なんか一般的な事実があるんかな。教えて🐖🐖〜」
$A$の固有値の状況に応じて場合分けする.
(i)$A$が相異なる固有値$\alpha_1$,$\alpha_2$をもつとき.$\alpha_1,\alpha_2$に対応する固有ベクトルをそれぞれ$x_1,x_2$とする.
$AXx_i=XAx_i=\alpha_i Xx_i$, ($i=1,2 $)なので$Xx_i$はそれぞれ固有値$\alpha_i$に対応する$A$の固有ベクトルである.よって,ある$c_i\in \mathbb{C}$が存在して$Xx_i=c_i x_i$, ($i=1,2$).$Y$についても同様なので$Yx_i=c_i^{\prime}x_i$とおくと
$XYx_i=c_i c_i^{\prime}x_i=YXx_i$,($i=1,2$) であり,$\{x_1,x_2\}$は$\mathbb{C}^2$の底をなすから$XY=YX$.
(ii)$A$がただ一つの固有値$\alpha$をもち,$\alpha$に対応する固有空間の次元が$2$のとき,対角化により$A$は単位行列のスカラー倍なので仮定に反する.
(iii)$A$がただ一つの固有値$\alpha$をもち,対応する固有空間の次元が$1$のとき.共役によって可換性の条件は変わらないから$A$はジョルダン標準形であるとしてよい.そこで
$A= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
\alpha & 1 \\
0 & \alpha
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $とする.$X= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
x & y \\
z & t
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $とおくと,$AX=XA$の両辺の各成分を比較して$X= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
x & y \\
0 & x
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $をえる.$Y\in S$とすると同様に$Y= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
x^\prime & y^\prime \\
0 & x^\prime
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $とおける.$XY=YX$であることが計算によりわかる.
コメント:固有ベクトルの議論をするところが同時対角化のときと似ていました.ある集合と可換な元全体を交換団(commutant)と言いますが,これはたまに院試でみるテーマの一つです.参考までに
$A$の固有多項式と最小多項式が一致することと,$A$と可換な行列がすべて$A$の多項式への代入であることとは同値だそうです(
その説明
).たしかに今回単位行列だけが除外されましたが,他の行列は$A$の多項式で表されていますね.