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現代数学解説
文献あり

疑問:2回合成してe^xとなる関数は?

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$$\newcommand{cop}[0]{\mathrm{co \pi}} \newcommand{genprodsum}[4]{{}^{#3}\!\!\underset{#1}{\overset{#2}{\Large \triangle{}}}#4} \newcommand{gprod}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\prod{}}}#3} \newcommand{gsum}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\sum{}}}#3} \newcommand{pan}[0]{\mathrm{\pi an}} \newcommand{pin}[0]{\mathrm{\pi in}} \newcommand{prodsum}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\huge \triangle{}}}#3} \newcommand{tangle}[2]{\underset{#1}{\overset{#2}{\Large \mathrm{T}}}}} $$

はじめに

表題のとおりです。
2回合成して$e^x$となる関数はあるのでしょうか。また、どのような関数でしょうか。
今回の記事ではそのようなことを検討していきます。

$ f(f(x)) = e^x $を満たす関数$f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}$が存在するか調べよ。
また、存在する場合には解の一つを求めよ。

性質を調べる

指数的交代則

$$f(e^x) = e^{f(x)}$$

\begin{eqnarray} f(f(x)) &=& e^x \\ f(f(f(x))) &=& e^{f(x)} \\ f(e^x) &=& e^{f(x)} \end{eqnarray}

$$x>0 \text{ならば、} f(x) > 0$$

証明略。定理1より。

対数的交代則

$$f(\ln x) = \ln f(x) \quad (x > 0)$$

\begin{eqnarray} \text{定理1より、}e^x=t\text{とおくと、}&&\\ f(t) &=& e^{f(\ln t)} \\ \text{定理2より、}&&\\ \ln f(t) &=& f(\ln t) \end{eqnarray}

指数タワー

$n \in \mathbb{N}, n>0:$
$$f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n}) = {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n+1}}^{f(0)} = \exp^{n+1}(f(0))$$

数学的帰納法による

$n=1$のとき、定理1より、
$$f(e)=e^{f(1)}=e^{e^{f(0)}}$$

$n=k-1$で成り立つと仮定したとき、
\begin{eqnarray} f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k}) &=& e^{f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k-1})} \\ &=& e^{ {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k}}^{f(0)}}\\ &=& {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k+1}}^{f(0)} \end{eqnarray}

ゆえに、$$f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n}) = {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n+1}}^{f(0)}$$

指数昇降の一致
  1. $$f(x) = \ln f(\exp x)$$
  2. $$f(x) = \exp f(\ln x) \quad (x>0)$$

証明略。定理1,3より。

逆関数

逆関数が存在するならば、
$$f^{-1}(x) = \ln f(x) \quad (x>0)$$

\begin{eqnarray} \text{定理1(2)より、}&&\\ \ln f(x) &=& f(\ln x) \\ \ln f(f(x)) &=& f(\ln f(x)) \\ \text{前提より、}&&\\ \ln e^x &=& f(\ln f(x)) \\ x &=& f(\ln f(x)) \\ f^{-1}(x) &=& \ln f(x) \end{eqnarray}

多重指数昇降の一致

$$\forall n \in \mathbb{N}, f(x) = \exp^n f(\ln^n x) \quad (x>0)$$

証明略。定理5(2)より。

行き詰った

以上まで頑張って、どうしようもなくなってしまたので、
SearchOnMathで数式を検索してみました( 検索結果 )

結論として、このような$f(x)$は閉じた形では表せず、
また解析的な$f(x)$は存在しないようです。
そして、詳細な証明や結論は今の私にはわかりませんでした。

攻略のヒント

しかし、ここで終わってしまうともったいないので、
後続の方々や未来の私のために、現時点でわかることをまとめておきます。

注意: 用語の和訳についてはそれっぽくつけてあるだけなので、本来は別の表記があるかもしれません。

分野について

まず、このように合成してある関数$g$になる関数$f$を、$g$関数的平方根(functional square root)や半反復(half iterate)よ呼ぶそうです。

また、特に$$f(f(x)) = e^x$$を満たすものを半指数関数(half exponential)と呼ぶようです。


半指数関数は、ドイツの数学者ヘルムート・クネーザー(Hellmuth Kneser)によって1950年に研究されました。
論文はネット上で見られますが、→ リンク
ドイツ語で書かれています。

ちなみにクネーザーの博士課程での指導教員はダフィット・ヒルベルトらしいです。

半指数関数について

区間的な構成がWikipediaで紹介されていました。( リンク )
\begin{equation} {f(x) = } \begin{cases} g (x) & \mbox{if } x \in [0,A], \\ \exp g^{-1} (x) & \mbox{if } x \in (A,1], \\ \exp f ( \ln x) & \mbox{if } x \in (1,\infty), \\ \ln f ( \exp x) & \mbox{if } x \in (-\infty,0). \\ \end{cases} \end{equation}

また、StackExchangeの記事( リンク1 や、 リンク2 )で半指数関数についての議論がされていました。
リンク1に実解析的な方法による実際の構成など、特に詳しく議論されています。
まだ理解してはいないのですが、$\mathbb{R}$ではなく$\mathbb{C}$の範囲での議論が必要なようです。

おわりに

今回の疑問は私にはまだ早かったようです……
が、いずれまたリベンジしたいと思います。

それではまた

参考文献

[1]
Hellmuth Kneser, Reelle analytische Lösungen der Gleichung φ(φ(x)) = ex und verwandter Funktionalgleichungen, Journal fur die reine und angewandte Mathematik, 1950, 56-67
投稿日:12日前
更新日:12日前
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投稿者

🤔 数学の専門ではないです。 思いついたことを書きます。

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