表題のとおりです。
2回合成して$e^x$となる関数はあるのでしょうか。また、どのような関数でしょうか。
今回の記事ではそのようなことを検討していきます。
$ f(f(x)) = e^x $を満たす関数$f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}$が存在するか調べよ。
また、存在する場合には解の一つを求めよ。
$$f(e^x) = e^{f(x)}$$
\begin{eqnarray} f(f(x)) &=& e^x \\ f(f(f(x))) &=& e^{f(x)} \\ f(e^x) &=& e^{f(x)} \end{eqnarray}
$$x>0 \text{ならば、} f(x) > 0$$
証明略。定理1より。
$$f(\ln x) = \ln f(x) \quad (x > 0)$$
\begin{eqnarray} \text{定理1より、}e^x=t\text{とおくと、}&&\\ f(t) &=& e^{f(\ln t)} \\ \text{定理2より、}&&\\ \ln f(t) &=& f(\ln t) \end{eqnarray}
$n \in \mathbb{N}, n>0:$
$$f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n}) = {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n+1}}^{f(0)} = \exp^{n+1}(f(0))$$
$n=1$のとき、定理1より、
$$f(e)=e^{f(1)}=e^{e^{f(0)}}$$
$n=k-1$で成り立つと仮定したとき、
\begin{eqnarray}
f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k}) &=& e^{f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k-1})} \\
&=& e^{ {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k}}^{f(0)}}\\
&=& {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{k+1}}^{f(0)}
\end{eqnarray}
ゆえに、$$f(\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n}) = {\underbrace{e^{{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}^e}}_{n+1}}^{f(0)}$$
証明略。定理1,3より。
逆関数が存在するならば、
$$f^{-1}(x) = \ln f(x) \quad (x>0)$$
\begin{eqnarray} \text{定理1(2)より、}&&\\ \ln f(x) &=& f(\ln x) \\ \ln f(f(x)) &=& f(\ln f(x)) \\ \text{前提より、}&&\\ \ln e^x &=& f(\ln f(x)) \\ x &=& f(\ln f(x)) \\ f^{-1}(x) &=& \ln f(x) \end{eqnarray}
$$\forall n \in \mathbb{N}, f(x) = \exp^n f(\ln^n x) \quad (x>0)$$
証明略。定理5(2)より。
以上まで頑張って、どうしようもなくなってしまたので、
SearchOnMathで数式を検索してみました(
検索結果
)
結論として、このような$f(x)$は閉じた形では表せず、
また解析的な$f(x)$は存在しないようです。
そして、詳細な証明や結論は今の私にはわかりませんでした。
しかし、ここで終わってしまうともったいないので、
後続の方々や未来の私のために、現時点でわかることをまとめておきます。
注意: 用語の和訳についてはそれっぽくつけてあるだけなので、本来は別の表記があるかもしれません。
まず、このように合成してある関数$g$になる関数$f$を、$g$の関数的平方根(functional square root)や半反復(half iterate)よ呼ぶそうです。
また、特に$$f(f(x)) = e^x$$を満たすものを半指数関数(half exponential)と呼ぶようです。
半指数関数は、ドイツの数学者ヘルムート・クネーザー(Hellmuth Kneser)によって1950年に研究されました。
論文はネット上で見られますが、→
リンク
ドイツ語で書かれています。
ちなみにクネーザーの博士課程での指導教員はダフィット・ヒルベルトらしいです。
区間的な構成がWikipediaで紹介されていました。(
リンク
)
\begin{equation}
{f(x) = }
\begin{cases}
g (x) & \mbox{if } x \in [0,A], \\
\exp g^{-1} (x) & \mbox{if } x \in (A,1], \\
\exp f ( \ln x) & \mbox{if } x \in (1,\infty), \\
\ln f ( \exp x) & \mbox{if } x \in (-\infty,0). \\
\end{cases}
\end{equation}
また、StackExchangeの記事(
リンク1
や、
リンク2
)で半指数関数についての議論がされていました。
リンク1に実解析的な方法による実際の構成など、特に詳しく議論されています。
まだ理解してはいないのですが、$\mathbb{R}$ではなく$\mathbb{C}$の範囲での議論が必要なようです。
今回の疑問は私にはまだ早かったようです……
が、いずれまたリベンジしたいと思います。
それではまた