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マクローリン展開の繰り返し部分だけ見て遊ぶ

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$\sin{x},\cos{x},e^xの三つって、x^nで展開する時に付いてくるf^{(n)}(0)が単純ですよね。$
$例えば\sin{x}は、f^{(4k+1)}(0)=1, f^{(4k+3)}(0)=-1,それ以外は0。$
$\cos{x}ならf^{(4k)}(0)=1, f^{(4k+2)}(0)=-1,それ以外は0。$
$e^xなら常に1。$

どれも、$f^{(n)}(0)$が周期4以内に収まっています。
そして関数は、$f^{(n)}(0)$だけで決まります。
ならば、こう書いてしまいましょう。
$\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}$
$\cos{x} = \begin{bmatrix} 1&0&-1&0 \end{bmatrix}$
$e^{x} = \begin{bmatrix} 1&1&1&1 \end{bmatrix}$

関数を$\begin{bmatrix} f^{(0)}(0)&f^{(1)}(0)&f^{(2)}(0)&f^{(3)}(0) \end{bmatrix}$で表したものです。
今回はこの、シンプルな表記で遊んでみたいと思います。

性質

遊ぶ前にまず、この表記の使い方を紹介しておきます。

定数倍

関数を定数倍したら、すべての$f^{(n)}(0)$が定数倍されます。
なので、カッコ内を定数倍するだけです。
$\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}$
$-2\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&-2&0&2 \end{bmatrix}$

足し引き

関数同士で足し算引き算したら、$f^{(n)}(0)$の足し算引き算になります。
なので、カッコ内同士を足し引きするだけです。
$\cos{x} = \begin{bmatrix} 1&0&-1&0 \end{bmatrix}$
$\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}$
$\cos{x} + \sin{x} = \begin{bmatrix} 1&1&-1&-1 \end{bmatrix}$
定数倍と合わせて、この表記が線形性を保つとも言えますね。

$x$の定数倍

$xをmxにしたら、m^nがもとのf^{(n)}(0)にかかります。$
$カッコは周期4なので、係数にm^{4n}、中身にm^0,m^1,m^2,m^3をかければよいです。$
$e^{x} = \begin{bmatrix} 1&1&1&1 \end{bmatrix}$
$e^{2x} = 16^n\begin{bmatrix} 1&2&4&8 \end{bmatrix}$
$m^nが周期4で1となれば、係数は要らないですね$
$e^{-x} = \begin{bmatrix} 1&-1&1&-1 \end{bmatrix}$

微分

$微分したらf^{(n)}(0)部分にf^{(n+1)}(0)が来ます。$
$カッコ内を左にずらすだけですね。$
$\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}$
$(\sin{x})^{\prime} = \begin{bmatrix} 1&0&-1&0 \end{bmatrix}$
$xがmxになっている場合は、f^{(m+4)}(0)\neq f^{(m)}(0)なので少し注意が必要です。$
$\cos{2x} = 16^n\begin{bmatrix} 1&0&-4&0 \end{bmatrix}$
$(\cos{2x})^{\prime} = 16^n\begin{bmatrix} 0&-4&0&16 \end{bmatrix}$

積分

同様に、カッコ内を右にずらすだけです。
$\cos{x} = \begin{bmatrix} 1&0&-1&0 \end{bmatrix}$
$\int\cos{x}dx = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}$
$xがmxになってる場合に注意が必要なのも同じです。$
$\sin{2x} = 16^n\begin{bmatrix} 0&2&0&-8 \end{bmatrix}$
$\int\sin{2x}dx = 16^n\begin{bmatrix} -\dfrac{1}{2}&0&2&0 \end{bmatrix}$

使用例

それでは、実際に遊んでみましょう。

オイラーの公式の直観的証明

まず、$e^{ix}$は以下のようになります。
$e^{ix} = \begin{bmatrix} 1&i&-1&-i \end{bmatrix}$
これを、
$\cos{x} = \begin{bmatrix} 1&0&-1&0 \end{bmatrix}$
$\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}$
で表そうとしたら、そりゃ$\cos{x}+i\sin{x}$でしょう。

逆オイラーの公式?

今度は逆に、
$e^{x} = \begin{bmatrix} 1&1&1&1 \end{bmatrix}$
$\sin{x},\cos{x}$で表してみましょう。
$e^{ix}のカッコ内を参考にすると、\cos{ix},\sin{ix}は以下のようになります。$
$\cos{ix} = \begin{bmatrix} 1&0&1&0 \end{bmatrix}$
$\sin{ix} = \begin{bmatrix} 0&i&0&i \end{bmatrix}$
すなわち、$e^x=\cos{ix}+\dfrac{\sin{ix}}{i}という訳です。$
また、カッコ内から明らかに、
$\cos{ix}は実数であり、\sin{ix}は純虚数である$
ということも分かります。

双曲線関数

$\cosh{x} = \dfrac{e^x+e^{-x}}{2}= \begin{bmatrix} 1&0&1&0 \end{bmatrix}$
$\sinh{x} = \dfrac{e^x-e^{-x}}{2}= \begin{bmatrix} 0&1&0&1 \end{bmatrix}$
これを$\sin{x},\cos{x}$で...って、既に上で示されてますね。
$\cosh{x} = \cos{ix}、i\sinh{x}=\sin{ix}。実数性、純虚数性も改めて示されております。$
じゃあ、双曲線関数のオイラーの公式みたいな形で、$\cosh{x} +i\sinh{x}$はなんでしょう。
$\cosh{x} +i\sinh{x} = \begin{bmatrix} 1&i&1&i \end{bmatrix}$
周期2で$1とi$を捻出する関数。
...ダメでした。
$f(x) = \begin{bmatrix} 1&-i&1&-i \end{bmatrix}$
さえあれば、その共役
$\overline{f(x)} = \begin{bmatrix} 1&i&1&i \end{bmatrix}$
を使って書けるんですが、綺麗な形で$f$になるものを見つけられませんでした。

$\int\frac{\sin{x}+\cos{x}}{2}e^xdx$を直接積分

この手の問題って、部分積分で解くって習うと思います。
でもこの表記に慣れたら、直接解くこともできるんです。
まず積分結果を$f(x)e^x+C$とします。
これを微分した$(f(x)+f^{\prime}(x))e^xが、\dfrac{\sin{x}+\cos{x}}{2}e^x$となればよい。
即ち、$f(x)+f^{\prime}(x)=\dfrac{\sin{x }+\cos{x}}{2}$となるような$f$を求めればいいわけです。
$fとfを左にずらしたものの和が、\dfrac{\sin{x}+\cos{x}}{2} = \begin{bmatrix}1&1&-1&-1\end{bmatrix}。f=\sin{x}です。$
なので$\int\frac{\sin{x}+\cos{x}}{2}e^xdx=\sin{x}e^x$と、直接積分できるわけです。

もうちょっと複雑なものもやってみましょう。

$\int\sin{x}e^xdx$

もととずらしたものの和が$\sin{x} = \begin{bmatrix} 0&1&0&-1 \end{bmatrix}になるようなfを考えます。$
まず、0がある部分に着目して、$\begin{bmatrix} -a&a&-b&b \end{bmatrix}$という形になることが分かります。
また、$1部分の情報から、b=a-1。-1部分もこれで満たされる。$
$よって、\begin{bmatrix} -a&a&-a+1&a-1 \end{bmatrix}$であれば何でもいいわけです。
$a=\dfrac{1}{2}の時が楽で、\dfrac{1}{2}\begin{bmatrix} -1&1&1&-1 \end{bmatrix}=\dfrac{\sin{x}-\cos{x}}{2}$と、割と簡単に求まります。
...部分積分よりは大変ですね。
まあ、部分積分だけでは出にくいものも出せそうなので、試しに$a=0$でもやってみましょうか。
$\begin{bmatrix} 0&0&1&-1 \end{bmatrix}ですね。$
$後ろ二個に何か来ると言えば、e^{ix}-e^{-x}=\begin{bmatrix} 0&0&i-1&-i+1 \end{bmatrix}$
よって$\dfrac{e^{ix}-e^{-x}}{i-1}$...なんだか、$\sin{x},\cos{x}をe^xでうまく変形しただけに思えたので、止めておきます。$

色んな積分

今度は、積分の中身を初等関数で表さず、最初からカッコ表記で示してみます。

$\int\begin{bmatrix} 2&0&0&2 \end{bmatrix}e^xdx$

$\begin{bmatrix} 2-a&a&-a&a \end{bmatrix}$
$a=1で\begin{bmatrix} 1&1&-1&1 \end{bmatrix}=\cos{x}+\sinh{x}$
$\therefore(\cos{x}+\sinh{x})e^x+C$

$\int\begin{bmatrix} 0&2&1&-1 \end{bmatrix}e^xdx$

$\begin{bmatrix} -a&a&2-a&a-1 \end{bmatrix}$
$a=1で、\begin{bmatrix} -1&1&1&0 \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} -1&0&1&0 \end{bmatrix}+\begin{bmatrix} 0&1&0&0 \end{bmatrix}=-\cos{x}+\dfrac{\sin{x}+\sinh{x}}{2}$
$\therefore (-\cos{x}+\dfrac{\sin{x}+\sinh{x}}{2})e^x + C$

$\int\begin{bmatrix} 2&0&0&-2 \end{bmatrix}e^xdx$

さっきとほぼ同じじゃないか!だって?
でも$同じようにしてみると...\begin{bmatrix} 2-a&a&-a&a \end{bmatrix}かつ2=-2$。求められない!なんだこれは積分できない関数か?
いいえ、$xの係数が周期4に収まってない$タイプです。なので、
$a^{4n}\begin{bmatrix} 2-b&b&-b&b \end{bmatrix}、かつb+a^4(2-b)=-2\Leftrightarrow b=-2\dfrac{1+a^4}{1-a^4}$
$a=\sqrt{i}でb=0、{\sqrt{i}}^4\begin{bmatrix} 2&0&0&0 \end{bmatrix}=\cos{\sqrt{i}x}+\cosh{\sqrt{i}x}$
$\therefore (\cos{\sqrt{i}x}+\cosh{\sqrt{i}x})e^x + C$

$\int\begin{bmatrix} 0&1&1&0 \end{bmatrix}e^{2x}dx$

$今度はe^xじゃなくて、e^{mx}パターン。$
$まあこの場合も、もとの関数とそれをずらしたもののm倍がe^xにかかってる関数になればいいだけです。$
$\begin{bmatrix} -2a&a&1-8a&4a \end{bmatrix}かつa=-\frac{1}{15}$
この場合だと、積分先の自由度がないんですね。
$\dfrac{1}{15}\begin{bmatrix} 2&-1&23&-4 \end{bmatrix}=...めんどいな。公式を考えよう。$

$e\begin{bmatrix} a&b&c&d \end{bmatrix}$

= $e(\begin{bmatrix} a&b&-a&-b \end{bmatrix}+\begin{bmatrix} 0&0&a+c&b+d \end{bmatrix})$

= $\dfrac{e}{2}(\begin{bmatrix} 2a&+2b&-2a&-2b \end{bmatrix}+\begin{bmatrix} 0&0&2a+2c&2b+2d \end{bmatrix})$

= $\dfrac{e}{2}(\begin{bmatrix} a-c&b-d&-(a-c)&-(b-d) \end{bmatrix}+\begin{bmatrix} a+c&b+d&a+c&b+d \end{bmatrix})$

= $\dfrac{e}{2}((a+c)\cosh{x}+(a-c)\cos{x}+(b+d)\sinh{x}+(b-d)\sin{x})$
という訳で、$\dfrac{1}{15}\begin{bmatrix} 2&-1&23&-4 \end{bmatrix}=\dfrac{1}{30}(25\cosh{x}-21\cos{x}-5\sinh{x}+3\sin{x})$
$\therefore\int\begin{bmatrix} 0&1&1&0 \end{bmatrix}e^{2x}dx=\dfrac{1}{30}(25\cosh{x}-21\cos{x}-5\sinh{x}+3\sin{x})e^2x$

$\int\begin{bmatrix} 1&2&3&4 \end{bmatrix}e^{-x}dx$

最後に、$e^{mx}かつxの係数が周期4に収まってないパターン。$
試しに$\begin{bmatrix} -1-a&2+a&a&5+a \end{bmatrix}とすると、3=-5で破綻することから、係数を考える必要がある。$
$a^{4n}\begin{bmatrix} 2-b&-1+b&3-b&b \end{bmatrix}、かつb+a^4(2-b)=4\Leftrightarrow b=2\dfrac{2-a^4}{1-a^4}$
$a=2^{\frac{1}{4}}でb=0、2^n\begin{bmatrix} 2&-1&3&0 \end{bmatrix}=2^n\begin{bmatrix} 2&-\dfrac{1}{2^{\frac{1}{4}}}2^{\frac{1}{4}}&\dfrac{3}{2^{\frac{2}{4}}}2^{\frac{2}{4}}&0 \end{bmatrix}=\dfrac{1}{2}((2+\dfrac{3}{2^{\frac{2}{4}}})\cosh{2^{\frac{1}{4}}x}+(2-\dfrac{3}{2^{\frac{2}{4}}})\cos{2^{\frac{1}{4}}x}-\dfrac{1}{2^{\frac{1}{4}}}(\sinh{2^{\frac{1}{4}}x}+\sin{2^{\frac{1}{4}}x}))$

$\therefore \int\begin{bmatrix} 1&2&3&4 \end{bmatrix}e^{-x}dx= \dfrac{1}{2}((2+\dfrac{3}{2^{\frac{2}{4}}})\cosh{2^{\frac{1}{4}}x}+(2-\dfrac{3}{2^{\frac{2}{4}}})\cos{2^{\frac{1}{4}}x}-\dfrac{1}{2^{\frac{1}{4}}}(\sinh{2^{\frac{1}{4}}x}+\sin{2^{\frac{1}{4}}x}))e^{-x}$
文字の量が多すぎる!

投稿日:2023519

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