この文章は初心者が書いています。間違いや勘違いがあるかもしれません。見つけたら教えて頂けると嬉しいです。
また、面白い話や書き方のアドバイスがあれば、是非是非コメントして欲しいですぅ。小話程度に眺めててくれると……。
最初に中国剰余定理について述べます。
可換環$A$の有限個のイデアルの族$\{I_i\}$に対して、すべての$i,j$で$i≠j$なら$I_i+I_j=A$が成り立つとすると、$A/ \prod_iI_i≃\prod_iA/I_i$
これによってある環の剰余環というのがより小さな環の直積の形に単純化することができます。特に、整数で自然$n$に対する合同式は、$n$の素冪因数上の合同式を調べることが十分であるということが分かります。
さて、じゃあこの考えを群にも適応できないでしょうか?つまりこんなことが成り立って欲しいのです。
群$G$の有限個の正規部分群の族$\{N_i\}$に対して、すべての$i,j$で$i≠j$なら$N_iN_j=G$が成り立つとすると、$G/\prod_iN_i≃\prod_iG/N_i$
環のイデアルは群の正規部分群を対応させます。$I_i+I_j=A$が$N_iN_j=G$になっていますが、これは環のイデアルの和に対応するのが群においては積だからです。
さてここで$\prod_iN_i$という部分がありますが、おかしいですね。$\prod_iI_i $の場合、これは環の乗法という加法とは違う演算ですが、群の中には積以外に演算は入っていません。なので$\prod_iI_i $を言い換えてあげて、$\prod_iN_i$に対応する意味を付けてあげたいです。
これは簡単に言い換えることができます。
可換環$A$の有限個のイデアルの族$\{I_i\}$に対して、すべての$i,j$で$i≠j$なら$I_i+I_j=A$が成り立つとすると、$ \prod_iI_i=\bigcap_iI_i$
この性質の証明は、環の中国剰余定理の証明の時に出てくると思うので、新しい事実ではないと思います。この事実を元にすると、$ \prod_iI_i$は$\bigcap_iI_i$とおいてあげても良さそうです。
つまり、もしも群の中国剰余定理があるならこんな風に書けそうです。
群$G$の有限個の正規部分群の族$\{N_i\}$に対して、すべての$i,j$で$i≠j$なら$N_iN_j=G$が成り立つとすると、$G/\bigcap_iN_i≃\prod_iG/N_i$
これで群の中で中国剰余定理が言い換えられましたぁ。
後はこれを示すだけですね!!!
......まあ、成り立たないんですけど。
群$G=ℤ×ℤ$に対して正規部分群$A=ℤ×\{0\},B=\{0\}×ℤ,C=\{(n,n)|n∈ℤ\}$と定義したとき、$G/(A∩B∩C)≃G≃ℤ×ℤ$だが、$G/A×G/B×G/C≃ℤ×ℤ×ℤ$となる。
結構簡単に、しかもアーベル群ですら反例が作れてしまうのです。悲しい。
因みにこの反例から$ℤ×ℤ$上に$A,B,C$をイデアルとするような可換環は作れないことが分かります。使い所が分からない。
しかし、実は群の正規部分群の取り方を制限すれば、群の中国剰余定理が成り立つことが言えます。
群$G$の有限個の正規部分群の族$\{N_i\}_{1≦i≦n}$に対して、すべての$i$で$N_i\bigcap_{j< i}N_j=G$が成り立つとすると、$G/\bigcap_iN_i≃\prod_iG/N_i$
帰納法で示す。$n=1$のときは自明。$n=2$から始める。
($n=2$のとき)
$φ:N_1×N_2→G/N_1∩N_2:(n_1,n_2) \mapsto n_1n_2N_1∩N_2$という群準同型写像を定めると$φ$の全射性が分かり、$\mathrm{Ker}φ=N_1∩N_2×N_1∩N_2$も導ける。ここで準同型定理より
$$G/N_1∩N_2=\mathrm{Im}φ≃N_1×N_2/\mathrm{Ker}φ≃N_1×N_2/(N_1∩N_2×N_1∩N_2)≃N_1/N_1∩N_2×N_2/N_1∩N_2$$が言えて、第二同型定理より
$$N_1/N_1∩N_2×N_2/N_1∩N_2≃N_1N_2/N_1×N_1N_2/N_2≃G/N_1×G/N_2$$
が言える。よって$G/N_1∩N_2≃G/N_1×G/N_2$が言える。
($n>2$でそれ未満で成り立っているとき)
仮定より、$N_n\bigcap_{j< n}N_j=G$であるので($n=2$のとき)の結果より$G/\bigcap_{j< n}N_j≃G/\bigcap_{i< n}N_i×G/N_n$となる。
ここで帰納法の仮定より$G/\bigcap_{i< n}N_i≃\prod_{i< n}G/N_i$が言えるので、合わせると$G/\bigcap_iN_i≃\prod_iG/N_i$が言える。
こういう始めの結果を用いる系の証明、好きです。
この結果から、特に正規部分群を2つ選ぶだけなら中国剰余定理が成り立つことが分かります。だから反例を作るには3つ以上の正規部分群を取る必要があったのです。
ここでは添え字に自然を取りましたが、カッコの取り方だけ似たような条件を付けてこの定理を考えることもできます(二分木?)。が、そこまで一般化する必要はあるのかな。
読んでくれてありがとうございました。ミス等発見したら、是非教えてください!!