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むかしわからなかった積分の解法(積分の作問もあり)

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 以前ネットでみかけたものでして、当初は手も足もでず歯がたたなかった積分ですが、複素解析学の知識を利用して計算できましたので、典拠不明ながらも、今回はその方法を共有したく思います。
 被積分関数の対称性もさることながら、積分結果の値も綺麗な、そんな積分でしょう。

01sinπxxx(1x)(1x)dx=πe.

 最初に、オイラーの恒等式を使用して変形する。
01sinπxxx(1x)(1x)dx=Im01eiπxexlnxexln(1x)11xdx=Im01eiπxexln(x/(1x))11xdx=Im01exp[x{ln(x1x)iπ}]11xdx
 そして、次に、t=ln(x1x)x=etet+1, dx=(et(et+1)2)dtなる置換を考える。
01sinπxxx(1x)(1x)dx=Im+exp(etet+1(tiπ))(11et/(et+1))(et(et+1)2)dt=Im+e(tiπ)(et/(et+1))(etet+1)dt=Im+eiπ+(tiπ)/(et+1)et+1dt=Im+e(tiπ)/(et+1)et+1dt
 さらに、tt+iπなる置換をも実行すると、被積分関数はより簡単になる。
01sinπxxx(1x)(1x)dx=Imiπ+iπet/(et+iπ+1)et+iπ+1dt=Imiπ+iπet/(et+1)et+1dt=Imiπ+iπet/(et1)et1dt=:Ω.
 ここで、次に示す周回積分を考察する。ただし、位数1の極z2iπZを考慮して決定した積分径路であるが、反時計回りでありかつ正数R>πであるとする。
Cez/(ez1)ez1dz:=(+R+iπR+iπ+R+iπRiπ+Riπ+Riπ++Riπ+R+iπ)ez/(ez1)ez1dz=+R+iπR+iπez/(ez1)ez1dz+R+iπRiπez/(ez1)ez1dz+Riπ+Riπez/(ez1)ez1dz++Riπ+R+iπez/(ez1)ez1dz=R+iπ+R+iπez/(ez1)ez1dzI++Riπ+Riπez/(ez1)ez1dzI++Riπ+R+iπez/(ez1)ez1dzJ+RiπR+iπez/(ez1)ez1dzJ.(†)
 最左辺の周回積分はコーシーの留数定理が適用可能。
Cez/(ez1)ez1dz=2iπResz=0ez/(ez1)ez1=2iπ1(11)!limz0d11dz11((z0)1ez/(ez1)ez1)=2iπlimz0((zez1)/exp(zez1))=2iπ/e.
なお、任意の正数RR+について成立する等式のゆえ、同積分は極限値が存在しその値は等しい。
limRCez/(ez1)ez1dz=2iπ/e.
 最右辺について、積分I+およびIについては複素共役の関係である。
I+=I¯I++I=2iImI.
というのも、
R+iπ+R+iπez/(ez1)ez1dz=R+Re(r+iπ)/(er+iπ1)er+iπ1dr=R+Re(riπ)/(eriπ1)eriπ1dr=R+Re(riπ)/(eriπ1)eriπ1dr=R+Re(riπ)/(eriπ1)eriπ1dr=R+Re(riπ)/(eriπ1)eriπ1dr=Riπ+Riπez/(ez1)ez1dz
よりわかる。
 また、積分J±の絶対値の評価は次のとおりとなる。なお、複合同順。
|±Riπ±R+iπez/(ez1)ez1dz|±Riπ±R+iπ|ez/(ez1)ez1||dz|±Riπ±R+iπ|dz|supzBC(π,±R)|ez/(ez1)ez1|±Riπ±R+iπ|dz|supzBC(π,±R)||1|ez1|supzBC(π,±R)|ez/(ez1)|=±Riπ±R+iπ|dz|supzBC(π,±R)||1|ez1|supzBC(π,±R)|exp(|z|ez1)|±Riπ±R+iπ|dz|supzBC(π,±R)||1|ez1|supzBC(π,±R)|exp(|±z||ez1|)|±Riπ±R+iπ|dz|supzBC(π,±R)||1|ez1|supzBC(π,±R)|exp(|±z|±e±R±π1)|=(±R(±R))2+(+π(π))2(1±e±Rπ1)exp(+Rπ±e±R±π1)=2πe(R+π)/(±e±R±π1)±e±Rπ1.
ゆえに、両積分の絶対値はすなわち両積分自身が零0に収束する。
0|J±|2πe(R+π)/(±e±R±π1)±e±Rπ10asR,
より
limRJ±=0.
 最後に、等式()ならびに以上すべての事柄から、以下のとおり所望の積分がえられる。
()limRCez/(ez1)ez1dz=limR((I++I)+J+J)limRCez/(ez1)ez1dz=limR(2iImI+J+J)limRCez/(ez1)ez1dz=limR(2iImI+J+J)limRCez/(ez1)ez1dz=2i(ImlimRI)+limRJ+limRJ2i(πe)=2i(ImlimRRiπ+R+iπez/(ez1)ez1dz)+002i(πe)=2i(Imiπ++iπez/(ez1)ez1dz)+002i(πe)=2iΩ+002i(πe)=2iΩΩ=πe.

 最後となりましたが、今回の積分のささやかな類題を作問しましたので、演習・練習にご活用ください。
 ただし、{}の表記につきましては数の小数部分を意味します。

01xx(1x)(1x)x!(1x)!dx={e}.

*ヒント
 このたび解説いたしましたとおりの解法でおおむね問題ございません。
 しかし、ルベーグの優収束定理を適用する必要のある箇所が途中ありますので、注意して確認してみてください。

投稿日:2023615
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現在は20代エンジニアです、、、数学のなかでもとくに函数解析に興味がありますが、大学では可換環論を勉強していました。みかけによらず中国語が苦手です。。。

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