0

東大数理院試過去問解答例(2024A05)

348
1
$$$$

ここでは東大数理の修士課程の院試の2024A05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2024A05

まず集合
$$ X=\left\{(x,y)\in\mathbb{Q}^2\middle||x|< y\sqrt{2}\textsf{ または }y=0\right\} $$
を考える。そして$(x,y)\in X$及び実数$\varepsilon>0$に対して
$$ U_\varepsilon(x,y)=\{(x,y)\}\cup\left\{(s,0)\in\mathbb{Q}^2\middle|\left|s-x+y\sqrt{2}\right|<\varepsilon\textsf{ または }\left|s-xーy\sqrt{2}\right|<\varepsilon\right\} $$
とする。いま$\{U_\varepsilon(x,y)|(x,y)\in X, \varepsilon>0\}$によって生成される基本近傍系によって、$X$に位相を定める。

  1. $X$はハウスドルフであることを示しなさい
  2. $U_1(0,1)$$X$に於ける閉包を図示しなさい。
  3. $X$は連結であるかどうか判定しなさい。

以下の議論では$(a,b)$$x$座標が$a$$y$座標が$b$の点を指し、$(a;b)$$a< x< b$なる有理数$x$全体の為す開区間を指す。また$\mathbb{Q}\times\{0\}$$\mathbb{Q}$と略記する。またこの略記は$(a;b)$$[a;b]$などのような$\mathbb{Q}$の部分集合にも適用する。

  1. $X$の相異なる点$(s,t),(u,r)$をとる。このとき、$\varepsilon>0$を十分小さく取れば
    $$ (s+t\sqrt{2}-\varepsilon;s+t\sqrt{2}+\varepsilon)\cap (u+r\sqrt{2}-\varepsilon;u+r\sqrt{2}+\varepsilon)=\varnothing $$
    を満たしている。このとき$U_\varepsilon(s,t)\cap U_\varepsilon(u,r)=\varnothing$であるから、$X$のハウスドルフ性が従う。
  2. まず
    $$ C_+=\left\{(x,y)\in X\middle| -\frac{x}{\sqrt{2}}+1-\frac{1}{\sqrt{2}}\leq y\leq-\frac{x}{\sqrt{2}}+1+\frac{1}{\sqrt{2}}\right\} $$
    $$ C_-=\left\{(x,y)\in X\middle| \frac{x}{\sqrt{2}}+1-\frac{1}{\sqrt{2}}\leq y\leq\frac{x}{\sqrt{2}}+1+\frac{1}{\sqrt{2}}\right\} $$
    $$ D_+=\left\{(x,y)\in X\middle| -\frac{x}{\sqrt{2}}-1-\frac{1}{\sqrt{2}}\leq y\leq-\frac{x}{\sqrt{2}}-1+\frac{1}{\sqrt{2}}\right\} $$
    $$ D_-=\left\{(x,y)\in X\middle| \frac{x}{\sqrt{2}}-1-\frac{1}{\sqrt{2}}\leq y\leq\frac{x}{\sqrt{2}}-1+\frac{1}{\sqrt{2}}\right\} $$
    $$ I_+=\left(-\sqrt{2}-1;-\sqrt{2}+1\right) $$
    $$ I_-=\left(\sqrt{2}-1;\sqrt{2}+1\right) $$
    とする。また
    $$ C=C_+\cup C_-\cup D_+\cup D_-\cup I_+\cup I_- $$
    とおく。このとき$I_+\cup I_-$$U_1(0,1)$に含まれている。また$(x,y)\in C_+\cup C_-\cup D_+\cup D_-$を取ったとき、
    $$ \sqrt{2}-1\leq x+y\sqrt{2}\leq\sqrt{2}+1 $$
    $$ -\sqrt{2}-1\leq x-y\sqrt{2}\leq-\sqrt{2}+1 $$
    $$ \sqrt{2}-1\leq x-y\sqrt{2}\leq\sqrt{2}+1 $$
    $$ -\sqrt{2}-1\leq x+y\sqrt{2}\leq-\sqrt{2}+1 $$
    のいずれかが満たされているから、$(x,y)$の近傍は$U_1(0,1)$と共通部分を持つ。以上から$U_1(0,1)$の閉包は$C$を含んでいる。一方各$(x,y)\in X\backslash C$に対して
    $$ U_{\varepsilon{(x,y)}}(x,y)\cap C=\varnothing $$
    になるよう$\varepsilon>0$を取れば
    $$ X\backslash C=\bigcup_{(x,y)\notin C}U_{\varepsilon(x,y)}(x,y) $$
    は開集合であるから、$C$は閉集合である。以上から$C$が所望の閉包である。※図は時間のある時に挿入します。
  3. まず$X=U\sqcup V$$X$の互いに交わらない開集合への分解とする。$U$を空でないとする。$(a,b)\in U$を取ったとき、この位相の定め方から、$(a+b\sqrt{2}-\varepsilon;a+b\sqrt{2}+\varepsilon)\times\{0\}\subseteq U$を満たすように$\varepsilon>0$をとれる。このとき
    $$ W=\left\{(x,y)\in X\middle|-\frac{x}{\sqrt{2}}+\frac{a-\varepsilon+b\sqrt{2}}{\sqrt{2}}< y<-\frac{x}{\sqrt{2}}+\frac{a+\varepsilon+b\sqrt{2}}{\sqrt{2}}\right\}\subseteq U $$
    である。このとき集合
    $$ \{(x-y\sqrt{2},0)|(x,y)\in W\textsf{ または }(-x,-y)\in W\} $$
    $\mathbb{R}$に於いて稠密である。よって$U\cap\mathbb{Q}$$\mathbb{Q}$に於いて稠密である。これによって
    $$ V\cap\mathbb{Q}=\varnothing $$
    が従い、ここから$V=\varnothing$が従う。よって$X$連結である
投稿日:2024921
更新日:23日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中